前受金、前払金について知ろう(簿記3級)

前受金、前払金という勘定科目は、商品売買を行う際に、先に代金を支払う、もしくは受け取る際に使います。

売掛金や買掛金といったこれまで勉強してきた科目と、少し扱いが違うので、わかりにくいと思われる方もいらっしゃるかもしれません。

この記事では、前受金と前払金について理解し、正しく仕訳ができるようご説明いたします!

売掛金、買掛金についてまだ勉強されていない方はこちらから読んでみてくださいね。

売掛金、買掛金について知ろう(簿記3級)

前払、前受取り引きとは?

これまで学習してきた商品売買のパターンとは、現金で商品を売ったり買ったりする場合、もしくは第二回目はお金の支払いを後でまとめてする場合、つまり「掛け」での取引でした。

今回は、商品の代金を先にする場合について見ていきたいと思います。

お金の支払いが後だとか、先だとか言われてもあまりピンとこないかもしれませんが、イメージとしては飲食店で食券を買ってから食事する場合は前払い、食事してからお会計する場合は後払い、といった感じです。

さて、これまでに学習した、お金の支払いが後になる取引では、「売掛金」と「買掛金」という勘定科目が登場しました。

「売掛金」が資産で、「買掛金」が負債です。

今回は、お金の支払いを先にする、ということで、「前受金(まえうけきん)」と「前払金(まえばらいきん)」という勘定科目を使います。

商品を販売する側がお金を受け取るので「前受金」仕入れる側はお金を支払うので「前払金」を使います。

そして、少し覚えにくいかもしれないのですが、「前受金」は先にお金を受け取ったので、商品をお客さんに渡す義務があるので「負債」、「前払金」はお金を支払ったので、商品を受け取る権利があるので「資産」となります。

ちなみに、簿記の問題で、「内金(うちきん)」だとか「手付金(てつけきん)」といった言葉が出てきます。

例えば、「手付金として〇〇円を支払った」というように出題されますが、これらの言葉は両方とも商品の代金を先に支払ったことを意味します。

この言葉はここでしか使わないので、ぜひ覚えてしまってください。

仕訳パターン①

先に代金を「受け取る」場合の仕訳例

まずは、先に代金を受け取る場合(販売する側)の仕訳例を見ていきましょう。

「商品100の注文を受け、内金50を現金で受け取った」

ここで、「商品100」に騙されないようにしましょう。あくまで、受け取った金額は内金の50ですから、仕訳は、

借方 貸方
現金 50 前受金 50

となります。この仕訳を取引の八要素で確認しておくと、

(借方要素) (貸方要素)
資産の増加 資産の減少
負債の減少 負債の増加
純資産の減少 純資産の増加
費用の発生 収益の発生

借方は現金50を受け取っていますから、資産の増加、貸方は前受金50が増えていますから、負債の増加、ですね。

簿記の取引について理解しよう!

先に代金を「支払う」場合の仕訳例

続いて、先に代金を支払う場合(仕入れる側)の仕訳も見ていきましょう。

「商品100を注文し、内金50を現金で支払った」

先ほどと同様に、「商品100」に騙されないでくださいね。支払ったのは内金の50なので、

借方 貸方
前受金 50 現金 50

となります。同じく取引の八要素で確認しておくと、

(借方要素) (貸方要素)
資産の増加 資産の減少
負債の減少 負債の増加
純資産の減少 純資産の増加
費用の発生 収益の発生

貸方は現金50を支払っているので、資産の減少、借方は前払金50が増えていますから、資産の増加、となります。

その後の取引は?

さて、商品の代金を先に支払う(受け取る)場合の仕訳について見てきましたが、あれ?残りの代金はいつ払うの?と思われるかもしれません。

確かに、商品100を注文しているのに、50しか払っていません。

それでは、残りの金額はどうするのか?について説明していきたいと思います。

これまで確認した仕訳は、

「商品100の注文を受け、内金50を現金で受け取った」

借方 貸方
現金 50 前受金 50

これと、

「商品100を注文し、内金50を現金で支払った」

借方 貸方
前受金 50 現金 50

この二つです。

見ていただいたらわかる通り、いずれの仕訳も商品100を注文しているのに、まだ代金は50しか支払っていません。

残りの代金についてですが、これは商品の「引き渡し時」(もしくはそれ以降)に行うことになります。

「商品の引き渡し」というのは、「お客さんに商品が届いた時」と考えてもらえたら良いのですが、この時に初めて「仕入」や「売上」を計上することになります。

前回確認した仕訳では代金の一部を支払っただけで、まだ商品がお客さんの手元に届いたわけではありません。

ですから、まだ「仕入」、「売上」といった勘定科目は使っていません。

この、「商品の引き渡し」があってから「仕入」「売上」を計上する、という考え方は非常に大事ですので、ぜひ頭の片隅に置いておいてくださいね。

普段コンビニなどで買い物される際は、クレジットカードなどで支払わない限り、「商品の引き渡し」と「代金の支払い」は同時であることがほとんどですが、土地などの不動産や車のように「大きな買い物」を想像してみてください。

「商品の引き渡し」と「代金の支払い」が同時でないことが多いですし、「代金の支払い」が一度とは限りませんよね?

そんな場合、「いつ」仕入、売上を計上するかですが、これは基本的にお客さんにその商品が届いたとき、となります。(土地であれば、そこに自由に建物を建てたりすることができるようになった時、ですね)

難しく考える必要はないのですが、簿記を勉強していく上で、「商品の引き渡し」と「代金の支払い」が同時でないことがある、ということを知っておくと学習がスムーズになると思いますので、ぜひ理解をしておいてください。

仕訳パターン②

商品を「引き渡す」際の仕訳例

では、実際の仕訳を見ていきましょう。

「注文を受けていた商品100を得意先に引き渡し、先日受け取った内金50と相殺した残額を現金で受け取った」

「引き渡し」とありますので、ここで売上を貸方に計上することとなります。

そして、「内金50と相殺」ですので前受金が減少し、残額50は現金で受け取っていますので、

借方 貸方
前受金 50 売上 100
現金 50

借方が二行になっていますが、借方の合計金額と貸方の金額が同じになっているのを確認してください。

このように、簿記の仕訳は一行ずつ、二行ずつとは限りませんが、必ず借方と貸方の合計金額は同じになります。

では、取引の八要素で確認しておきましょう。

(借方要素) (貸方要素)
資産の増加 資産の減少
負債の減少 負債の増加
純資産の減少 純資産の増加
費用の発生 収益の発生

まず、「商品100を得意先に引き渡しですから、貸方は売上100で収益の発生です。

続いて、前受金50が減っていますので、借方が負債の減少と、現金50を受け取ったので、資産の増加、となります。

同じ借方要素でも、一つの仕訳に「資産の増加」「負債の減少」のように別々のものがあることがあります。

その場合は、簿記の五要素を確認する必要があります。

この仕訳では「前受金」が負債で、「現金」が資産でしたね。

商品を「受け取る」際の仕訳例

続いて、仕入れる側の仕訳も見ていきましょう。

「注文していた商品100を受け取り、先日支払った内金50と相殺した残額は後日支払うこととした

「商品を受け取った」ので、借方に仕入を計上し、「内金50と相殺」ですので、前払金が減少し、残額50は「後日支払うこととした」とありますので、ここでは「買掛金」が増加することとなります。

借方 貸方
仕入 100 前払金 50
買掛金 50

先ほどの仕訳と違い、代金はまだ現金で支払っていないことに注意してください。取引の八要素で確認しておくと、

(借方要素) (貸方要素)
資産の増加 資産の減少
負債の減少 負債の増加
純資産の減少 純資産の増加
費用の発生 収益の発生

借方は「商品100を受け取り」ですので、仕入100で費用の発生です。

そして、貸方は前払金50が減りますので、資産の減少と、買掛金50が増えていますから、負債の増加です。

先ほどの仕訳と同じ「内金」であっても、受け取る側であれば「前受金」、支払う側であれば「前払金」であることに注意してください。

まとめ

今回は、代金の一部を先に支払う取引で用いる「前払金」「前受金」という二つの勘定科目について説明しました。

これまで学習した内容に比べて、少しだけ仕訳が複雑になったと感じられたかもしれません。

「商品売買」は簿記3級の学習において非常に大切な内容となりますので、今回理解が思うようにできなかった方は、ぜひ「簿記の五要素」「取引の八要素」から繰り返し確認し、自分のものにしていってくださいね!

簿記の学習を始めるにあたって、まず知っておくべきこと