簿記3級における商品売買で、おそらく最後に学習されるであろう「発送費」についてですが、どの勘定科目を使えばいいのか迷ってしまうことも少なくないかもしれません。
それほどややこしくないのですが、いざ仕訳をしてみたらミスをしてしまうこともあるでしょう。
今回は、商品売買における「発送費」について解説します!
発送費とは
「発送費」とは、商品を発送するにあたってかかる運賃や人件費などのことです。
こういった出費を「不随費用(ふずいひよう)」と呼びます。(商品売買に付随して発生する費用)
この、「発送費」に関しても、商品を仕入れる側と販売する側で、扱いが異なるので注意しましょう。
また、「発送費」を自分が負担するのか、それとも取引の相手方が負担するのかでも仕訳の処理が変わってきます。
仕訳例①(仕入れる側、当店負担)
ではまず、商品を仕入れる側の仕訳から見ていきましょう。
「A商店はB商店から商品100を掛けで仕入れ、その際、運賃10を現金で支払った」
この場合、掛けで仕入れていますから、買掛金が100発生します。そして、運賃10については、仕入に含めて仕訳します。また、支払った現金10が減少するということで、
借方 | 貸方 |
仕入 110 | 買掛金 100 |
現金 10 |
商品の代金は100ですが、運賃10を仕入に含めますので、仕入の金額は110で仕訳をしています。
取引の八要素で確認しておくと、
(借方要素) | (貸方要素) |
資産の増加 | 資産の減少 |
負債の減少 | 負債の増加 |
純資産の減少 | 純資産の増加 |
費用の発生 | 収益の発生 |
借方が費用の発生、貸方は、買掛金100が負債の増加で、現金10が資産の減少ですね。
仕訳例②(販売する側、当店負担)
続いて、商品を販売する側の仕訳を見ていきましょう。
「B商店は、A商店に商品100を掛けで販売し、その際、運賃10を現金で支払った」
掛けで販売ということで、売掛金100が発生します。
ここでは、運賃10について、「発送費」という費用の勘定で仕訳をします。
販売する側のみ、「発送費」勘定を使うので、注意しましょう。
借方 | 貸方 |
売掛金 100 | 売上 100 |
発送費 10 | 現金 10 |
販売する側は、商品を販売する(お金を受け取る)取引と、運賃を支払う(お金を払う)取引で別々に考えるのに対し、
仕入れる側は、商品を仕入れる取引も、運賃を支払う取引も、両方ともお金を払う側ですので一緒に考える、とイメージすると覚えやすいかもしれません。
取引の八要素では、借方は、売掛金100が資産の増加、発送費10が費用の発生、そして貸方は、売上100が収益の発生、現金10は資産の減少ですね。
仕訳例③(仕入れる側、他者負担)
これまで見た二つの仕訳は、自分が運賃を負担する側の取引でしたが、契約の内容によっては、そうでない場合もあります。
次は、「取引の相手方」が運賃を負担する場合について見ていきましょう。
まずは、商品を仕入れる側の仕訳です。
「A商店は、B商店から商品100を掛けで仕入れ、発送費用10を立替えて現金で支払った」
この場合、相手が負担すべき費用を立替えたわけですから、「立替金」という資産勘定を使って仕訳をします。
借方 | 貸方 |
仕入 100 | 買掛金 100 |
立替金 10 | 現金 10 |
取引の八要素では、借方は、仕入100が費用の発生、立替金10は資産の増加、貸方は、買掛金100が負債の増加、現金10が資産の減少ですね。
ちなみに、この仕訳について、次のようにする場合があります。
借方 | 貸方 |
仕入 100 | 買掛金 90 |
現金 10 |
買掛金は相手に支払う義務、立替金は相手からお金を受け取る権利、ということで相殺し、買掛金90として処理しているということですね。どちらの仕訳をするかは、必ず問題文に指示がありますので注意してください。
仕訳例④(販売する側、他者負担)
次は、商品を販売する側の仕訳を見ていきましょう。
「B商店は、A商店に商品100を掛けで販売し、発送費用10を立替えて現金で支払った」
やはりこの場合も、「立替金」勘定を使って仕訳をしていきます。
借方 | 貸方 |
売掛金 100 | 売上 100 |
立替金 10 | 現金 10 |
取引の八要素では、借方は、売掛金100が資産の増加、立替金10も資産の増加、貸方は、売上100が収益の発生、現金10は資産の減少です。
ちなみに、この仕訳についても別解があります。
借方 | 貸方 |
売掛金 110 | 売上 100 |
現金 10 |
売掛金も立替金を相手からお金を受け取ることを意味しますから、合計して売掛金110で処理してしまおう、ということですね。
この場合も、どちらの仕訳をするか問題文に指示があるので注意しましょう。
まとめ
今回は、商品売買における「発送費」について説明させていただきました。
それほどややこしくないと思いますので、試験で出題されたらミスなく得点できるよう、しっかり復習してくださいね!
簿記の学習を始めるにあたって、まず知っておくべきこと