簿記2級 工業簿記① 原価計算の基礎

今回から、簿記2級の工業簿記について学習していきます。工業簿記は、2級から新たに追加される内容ですので、慣れるまでは商業簿記との違いに少し戸惑うことがあるかもしれません。

工業簿記は2級の試験の100点満点のうち40点を占めます。割合的には商業簿記の60点のほうが多いのですが、最近の試験では商業簿記の内容がとても難しい問題が出題されることが多く、いかに工業簿記で高得点をとれるかが合否を分けることも少なくありません。ですので、ぜひ工業簿記を得意になっていただき、2級合格に大きなアドバンテージを持てるようになっていただけたら嬉しく思います。

さて、これまで3級で学習してきた「商業簿記」とは、商品を仕入れてから販売することを前提としていました。それに対し、これから学習する「工業簿記」とは、仕入れたものをそのまま販売するのではなく、材料を加工し製造した製品を販売することを目的とした記帳になります。ですので、工業簿記では製品を製造するのにかかった原価を計算する必要があります。これを「原価計算」といいます。

原価計算とは、製品を製造するうえで必要な材料やそれを加工するのにかかった費用を計算し、工業簿記の記帳に必要な製品一つずつの原価を求めることを目的としていますが、通常一か月単位で行われます。これを「原価計算期間」といいます。なぜ、一か月単位で行うかというと、製品を製造するのにかかる原価は毎月変わりますので、そのほうがより安く製品を製造するためのコスト管理に役立てることができるからです。

それでは、次は「製造原価の分類」について見ていきましょう。製造原価とは製品を製造するのにかかった原価のことですが、いくつかの方法で分類することができます。

まずは、何にかかった原価なのか、によっての分類です。これを「形態別分類」と呼び、三つに分けることができます。

・材料費

・労務費

・経費

「材料費」とは、製品を製造するうえで必要な材料を購入することによって発生する原価です。一般に「原価」というと、これを思い浮かべる人が多いかもしれません。次に、「労務費」とは、製品を製造する工員等に支払った人件費のことを言います。工員さん以外にも、工場の監督や工場で勤務する事務員さんに支払う給料も含まれます。最後に、「経費」とは、材料費、労務費以外の全てを指します。例えば水道代、光熱費、など工場でかかる費用が含まれます。

次に、「製品との関連による分類」です。材料費のように、ある製品を製造するのに直接的にかかった原価か、それとも光熱費のように工場全体でかかった原価なのか、によって分けることができます。

・製造直接費

・製造間接費

この二つは単に「直接費」「間接費」と呼ぶ場合もあります。「製造直接費」とは、前述の通りある製品を製造するのに直接的にかかった原価であり、その製品を製造するのにどれだけの減価がかかったか個別に計算することができます。一方で、「製造間接費」は光熱費のように工場全体でかかった原価のように、一つ一つの製品にどの程度の原価がかかったのか明確ではありません。ですので、これら二つの分類によって原価計算の方法が異なってくることになります。

最後は、「操業度との関連における分類」です。「操業度」とは、生産設備の利用度を意味します。ややこしければ「生産量」と置き換えていただいてもここでは結構です。つまり、生産すればするほどかかる原価か、それとも生産量にかかわらず一定量発生する原価か、による分類になります。

・変動費

・固定費

「変動費」は材料費のように生産量に比例して発生する原価を言います。一方で、「固定費」は工場機械の減価償却費のように生産量にかかわらず発生する原価のことです。もしあなたが店舗を借りて飲食店を経営しているとしたら、食材などの材料費は変動費、店舗の家賃や光熱費は固定費となります。

これらの分類は別々に覚えるとあまり効率的ではないかもしれません。例えば、「材料費」はほとんどの場合、「製造直接費」であり「変動費」ですが、「労務費」の場合、パートタイムで特定の作業を任されている方のように「製造直接費」であり「変動費」となる場合もあれば、工場全体を監督する方の給料であれば、「製造間接費」であり「固定費」となる場合もあります。ですので、ここではおおまかな言葉の意味だけ知っておいていただいて、学習が進むとともに理解を深めていただければと思います。

最後に、2級で学習する原価計算方法について説明したいと思います。これは、大きく「個別原価計算」と「総合原価計算」の二つに分けることができます。個別原価計算はオーダーメイドで製造される製品のように、製品一つ一つが別々の仕様で製造する場合の計算方法です。それに対し、総合原価計算は同じ規格の製品を大量に生産する場合の計算方法になります。コンビニのおにぎりやパンなどをイメージしていただければ結構です。こちらについても後日より詳しく説明していきたいと思います。

今回は、「原価計算の基礎」ということで、原価計算に必要な知識について説明させていただきました。次回からは一つ一つの原価についてより詳しく見ていきたいと思いますので、頑張りましょう!

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