簿記の学習を始めて、仕訳や勘定科目が何かはわかるけど、実際に問題を解いてみても、どこに何を記入したらいいのかわからない、これは誰もがぶつかる壁なのではないでしょうか。
この記事では、そういった方のために、簿記の「取引」について説明していきます。
読んでいただければ、仕訳の問題を解くときに迷わなくなるはずです。
簿記の取引とは?
簿記は、会社が行った「取引」について記録しておくためのルールです。
ですから、そもそも会社が行う「取引」とは何なのか知っておく必要があります。
具体例を見てみましょう。
・取引先と今後の取引について、打ち合わせをした
・得意先から商品の代金が振り込まれた
・銀行口座にお金を預け入れた
この三つのうち、「取引」に該当するものはどれでしょう。
簿記上の「取引」に該当するのは、会社の財産が増減した場合に限られます。
一つ目の、「取引先と今後の取引について、打ち合わせをした」場合は、特に何かを渡したり、受け取っているわけではないので、「取引」には該当しません。
二つ目の、「得意先から商品の代金が振り込まれた」が一番わかりやすいでしょう。
代金を受け取っていますので、会社の財産が増加するため、「取引」に該当します。
三つ目の、「銀行口座にお金を預け入れた」は、一見「取引」には該当しないように思われるかもしれませんが、手元の現金減り、それが銀行に移るので、「取引」に該当します。
さて、「会社の財産が増減した場合」とは、より詳しく言うと、簿記の五要素のうち「資産」「負債」「純資産」のどれかが増えるか減るかした場合、となります。
簿記の五要素についてよくわからないという方は、こちらをご覧ください。
取引の八要素について知ろう
先ほど、「取引」とは会社の財産が増減した場合、より詳しく言うと、簿記の五要素のうち「資産」「負債」「純資産」が増えるか減るかした場合、と説明しました。
これについてより掘り下げていきたいと思います。
仕訳例①
まずは、「銀行からお金を借り入れ、現金100を受け取った」という取引について、仕訳で確認してみましょう。
借方 | 貸方 |
現金 100 | 借入金 100 |
この仕訳の意味するところとしては、「お金を借りた」という取引によって、会社に「現金100」と「借入金100」が増加した、ということになります。
お金を借りてきたら、現金が増えますが、それと同時に借金も増える、ということですね。
そして、現金は簿記の五要素で分類すると「資産」借入金は「負債」となります。
ここでしっかり押さえていただきたいのは、資産が増加した場合は「借方に記入」し、負債が増加した場合は「貸方に記入」する、ということです。
もう一度、さきほどの仕訳を確認してみてください。
借方の現金100は、資産である現金が100増加したことを意味しています。
一方で、貸方の借入金100は負債である借入金が100増加したことを意味しています。
仕訳例②
続いて、「銀行から借り入れた借入金100を現金で返済した」という取引について仕訳で確認してみましょう。
借方 | 貸方 |
借入金 100 | 現金 100 |
この仕訳が意味するのは、「お金を返済した」という取引によって、会社に「現金100」と「借入金100」が減少した、ということです。
お金を返したなら、手元の現金は減りますが、借金もなくなりますね。
ここで押さえていただきたいのは、先ほどとは逆に、資産が減少した場合は「貸方に記入」し、負債が減少した場合は「借方に記入」するということです。
もう一度、さきほどの仕訳を確認してみましょう。
貸方の現金100は、資産である現金が100減少したことを意味しています。
一方で、借方の借入金100は負債である借入金が100減少したことを意味しています。
取引の八つの要素とは?
ここまで、お金を借りる、お金を返す、という二つのパターンについて仕訳例を見ながら確認してきました。
この二つの仕訳で登場したのは、現金(資産)と借入金(負債)の二つの勘定科目です。
他にもたくさんの勘定科目が登場しますが、簿記の五要素に分けて、増えた場合と、減った場合に借方、貸方のどちらに記入するか覚えておくと便利です。
資産、負債、純資産の増減、それと費用、収益の発生、これらをまとめて「取引の八要素」と呼びます。
それぞれの勘定科目によって、増えた場合と減った場合で、借方要素なのか貸方要素なのか覚えておくと仕訳問題を解くうえでとても役立ちます。
まとめると以下のようになります。
(借方要素) | (貸方要素) |
資産の増加 | 資産の減少 |
負債の減少 | 負債の増加 |
純資産の減少 | 純資産の増加 |
費用の発生 | 収益の発生 |
借方、貸方それぞれ四つずつで八要素ということですね。
ちなみに、費用は借方のみ、収益は貸方のみに記入します。(例外あり)
一方で、資産、負債、純資産は、借方、貸方の両方に記入するので、混乱しやすいです。
ですから、まずは上の表に赤字で示した、増加した場合を覚えておくと間違いにくいです。
まとめ
今回は、簿記の学習上の「取引」について説明しました。
取引の八要素については暗記する必要はないので、今後仕訳を学習していく際に理解する手助けとして活用していただければ嬉しいです。