簿記2級 工業簿記② 材料費 後編

前回は、材料の購入と材料副費の予定配賦の仕訳について見てきました。

今回も引き続き、材料費の計算について学習していきます。

まずは、「実際消費価格(じっさいしょうひかかく)」の計算方法についてです。実際消費価格とは、一か月間にどれだけの材料を消費したか、を意味しますが、前回もお伝えした通り、材料の購入金額と数量は毎回違いますし、また当月に購入した材料をすべて消費するわけではないことから、計算方法によって結果が異なってきます。

実際消費価格を計算するうえで考えていただきたいのは、月初(一か月間の初め)にどれだけ材料があり、月末(一か月間の終わり)にどれだけ材料が残ったか、です。月初の材料有高と当月購入高(一か月間に購入した材料)を合計し、一か月間に消費した材料を差し引くと月末の材料有高を求めることができます。

月初有高 + 当月購入高 - 当月消費高 = 月末有高

なお、この式については以下のように表すこともできます。

月初有高 + 当月購入高 - 月末有高 = 当月消費高

これについては、「平均法(へいきんほう)」と「先入先出法(さきいれさきだしほう)」の二つの計算方法によって行います。3級の商品有高帳で、「先入先出法」と「移動平均法」について学習したのを覚えていらっしゃるでしょうか。ここで学習する計算方法も、基本的な考え方はそれと同じです。

まず、平均法ですが、これは材料の「月初有高」と「当月購入高」によって平均単価を求める方法になります。ですから、材料の月初有高が20個で単価が@100円、当月購入高が100個で単価が130円とします。もし、一か月間に90個の材料を消費したとすると、

月初有高は、

@100 × 20 = 2,000

当月購入高は、

@130 × 100 = 13,000

となり、合計金額が15,000円ですので、平均単価は

15,000 ÷ (100 + 20) = @125

となります。よって、当月消費価格は、

@125 × 90 = 11,250

となり、月末有高は、

15,000 - 11,250 = 3,750

もしくは、月末材料の数量が、月初20個と当月購入100個の合計120個から消費数量90個を差し引いて30個となりますので、

@125 × 30 = 3,750

となります。まとめると、月の初めに2,000円分の材料があり、13,000円分買ってきて11,250円分使ったので3,750円分残ったということです。

次に、先入先出法とは、「月初有高」がすべて「当月消費高」に含まれる、という前提で考える計算方法になります。先ほどの平均法ですと、月初有高と当月消費高の単価が平均することで混ざっていますね? しかし、先入先出法の場合、月初有高の金額がそのまま当月消費高となりますので、当月購入高の単価が月末有高の単価となります。

イメージとしては、液体のようなものを材料として使っている工場だとすると、製造過程で先月購入したものと当月購入したものが混ざっていると思います。ですので、それぞれ購入した時期によって単価を分ける必要性に欠けるため、「平均法」によって計算するケースが多いでしょう。一方で、木材を材料として使っている工場であれば、月末有高として残っている材料は、おそらく月の終盤で購入したものであり、単価いくらで購入したかはおそらく簡単に分かるはずです。ですので、その場合は「先入先出法」を用いて計算するのではないでしょうか。

先入先出法の計算について、先ほどと同じ数値例で見ていきましょう。 材料の月初有高が20個で単価が@100円、当月購入高が100個で単価が130円とします。もし、一か月間に90個の材料を消費したとすると、

月初有高は、

@100 × 20 = 2,000

当月購入高は、

@130 × 100 = 13,000

であり、当月購入高の単価は月末有高の単価と等しいので、月末有高は、 数量が、月初20個と当月購入100個の合計120個から消費数量90個を差し引いて30個となりますので、

@130 × 30 = 3,900

となります。よって、当月消費高は、

2,000 + 13,000 - 3,900 = 11,100

となります。また、当月購入分100個のうち、月末に残ったのは30個ですので、当月購入し当月消費した材料は70個となります。この70個の単価は@130円ですので、その金額は、

@130 × 70 = 9,100

となります。そして、月初材料はすべて消費した(当月消費高に含まれる)と考えますので、当月消費高は、

2,000(月初有高) + 9,100 = 11,100

このように求めることもできます。まとめると、月の初めに2,000円分の材料があり、13,000円分買ってきて11,100円分使ったので3,900円分残ったということになります。

次は、「予定消費単価」を使った仕訳について見ていきたいと思います。

前回、材料副費の予定配賦の仕訳について学習しましたが、今回は材料の消費単価そのものを予定単価で行う計算方法です。これについても、前回と同じように「予定」と「実際」にはズレが生じますので、この差異を会計年度末に売上原価に振り替えます。

材料費の消費の仕訳についてですが、これは材料費に限らず「直接費」と「間接費」で分けて考えます。直接費は「仕掛品(しかかりひん)」勘定に振り替え、間接費は「製造間接費(せいぞうかんせつひ)」勘定に振り替えます。この二つの勘定科目は2級工業簿記を学習するうえで非常に重要ですので、ぜひここで覚えておいてください。

原価計算の基礎で学習した、「直接費」と「間接費」の違いについて思い出してみてください。

直接費とは、どの製品にどれだけかかったか明らかな費用のことで、間接費とは、それが明らかでない、複数の製品にまとめてかかる費用のことでしたね。例えば、家具を製造している工場なら、木材などの原料が机にどれだけ使われて、いすにどれだけ使われるか、などははっきりと把握することができます。ですので、この原料の消費は直接費となります。しかし、それらの原料を加工する機械は一台でいくつもの製品の製造に使用しているとすると、その機械を動かすのにかかった電力は目に見えるものではないので、どの製品にどの程度利用したか明らかではありません。ですので、この電力の消費は間接費となります。

したがって、工業簿記の仕訳では、直接費は仕掛品勘定に振り替えることで直接製品に関連付け、間接費は製造間接費勘定に振り替え、そこから配賦計算(はいふけいさん)を行うことで間接的に製品に関連付けるということを行います。

もう少し単純に言うと、わかるものは先に製品に振り分けておいて、わからないものは一度まとめておいて、後で製品に配分するということです。この計算方法については後に「個別原価計算」を学習する際に詳しく説明していきたいと思います。

少し話がそれましたが、材料費の消費の仕訳について確認していきたいと思います。直接費は「仕掛品」勘定へ、間接費は「製造間接費」勘定へ振り替える、というところに注意して見ていってください。

「当工場の原料の予定消費単価は一個当たり@100円である。当月において、50個を直接材料として消費し、20個を間接材料として消費した。」

当月の直接材料費は、

@100 × 50 = 5,000

で、間接材料費は、

@100 × 20 = 2,000

となります。

(借方)仕掛品   5,000 (貸方)材料 7,000

(借方)製造間接費 2,000

「原料の実際消費額は7,200円であったので、予定消費額と実際消費額との差額を材料消費価格差異勘定へ振り替えた」

前回の材料副費差異と同じように、実際の方が予定よりも大きい金額ならば「不利差異(借方差異)」、実際の方が予定よりも小さい金額ならば「有利差異(貸方差異)」となります。今回は、実際消費額の方が200円多くかかっていますので、不利差異です。

(借方)材料消費価格差異 200 (貸方)材料 200

「会計年度末に、材料消費価格差異について、売上原価に振り替えた」

(借方)売上原価 200 (貸方)材料消費価格差異 200

今回は、少し長くなりましたが、材料消費価格の計算と、予定消費単価を使った仕訳について見てきました。まだ、工業簿記の仕訳や原価計算になれていない方はなかなか理解がスムーズにいかないかもしれませんが、今回お伝えした内容は、2級工業簿記の全体の考え方に通ずる部分でもありますので、ぜひ何度も復習していただいて、今後の学習につなげていただければと思います。

次回は、労務費について説明していきたいと思います。頑張りましょう!

簿記2級 商業簿記② 損益計算書と貸借対照表 後編

今回も前回に引き続き、簿記2級商業簿記の導入ということで、貸借対照表について説明していきたいと思います。前回は、損益計算書について説明しました。

前回、簿記3級で個人商店の簿記を学習したのに対し、2級では株式会社を前提とした記帳を学習します、ということをお伝えしました。よって、損益計算書は売上高、売上原価や販売費及び一般管理費といった区分に分けて表示する、といったことについて説明いたしましたが、貸借対照表も3級で学習したものよりもより詳しく表示するため、「区分表示」がなされます。復習になりますが、貸借対照表の借方は資産、そして貸方は負債と純資産に分かれます。ですので、「区分表示」がなされる場合はそれぞれ、資産、負債、純資産の中で区分されるといった形になります。

それでは、見ていきましょう。

資産の部                負債の部

Ⅰ 流動資産              Ⅰ 流動負債

Ⅱ 固定資産              Ⅱ 固定負債

 ・有形固定資産            純資産の部

 ・無形固定資産            Ⅰ 株主資本  

 ・投資その他の資産          Ⅱ 評価・換算差額等

まずは、資産の部です。資産の部は、「流動資産」と「固定資産」に大きく分かれます。「流動」と「固定」の違いは後ほど詳しく説明します。そして、固定資産の中には、「有形固定資産」「無形固定資産」そして「投資その他の資産」の三つがあります。

「有形固定資産」は3級でも学習した「土地」「建物」「備品」等が該当します。「無形固定資産」は、形のない権利等が該当します。2級で学習する無形固定資産には、企業が合併などにより取得する「のれん」があります。「投資その他の資産」は会社が本業目的以外の投資のために保有する資産等が該当します。例えば、定期預金など、長い期間をかけて運用する「長期性預金」や他の会社に対し影響力を行使する目的で保有する「関係会社株式」などがあります。具体的な勘定科目はここで覚える必要はないので、それぞれの区分について何となくイメージを持っておいてください。

続いて、負債の部ですが、こちらも資産の部と同様に「流動負債」と「固定負債」に大きく分かれます。流動負債は、商品売買に伴って発生する「買掛金」や「支払手形」、固定負債は数年間お金を借りることを目的とした「長期借入金」が該当します。

最後に純資産の部は、「株主資本」と「評価・換算差額等」に分かれます。「株主資本」とは、会社の出資者である株主に帰属する資本のことを言い、株主が出資した「元手」に該当する「資本金」や「資本剰余金」と、元手を使って企業が生み出した利益である「果実」に該当する「利益剰余金」に分かれます。

この「元手」と「果実」という考え方については深追いする必要はありませんが、会社を果物がなる「木」に例えて、木を植えたのが株主だとすると、会社の経営者が水をやるなどして育てることによって得られたもうけが「果実」というイメージになります。「評価・換算差額等」は純資産の部のうち株主資本以外の項目を言います。そのうち2級で学習するのは、有価証券の時価が変動することにより発生する「その他有価証券評価差額金」のみです。

さて、さきほど「流動資産」「固定資産」などといった言葉が出てきましたが、資産の部、負債の部の「流動」「固定」を分類する基準は二つあります。それは「正常営業循環基準」と「一年基準(ワン・イヤー・ルール)」というものです。「正常営業循環基準」とは、言葉はややこしそうですが、その意味は「営業(会社が商品を売ったり買ったりすること)」に伴って発生する資産や負債は「流動資産」に該当する、ということです。

例えば、会社が「商品」を掛けで仕入れると「買掛金」が発生します。そして仕入れた商品を掛けで販売すると「売掛金」が発生し、その売掛金を回収すると「現金」を取得します。また、現金で回収しない場合「約束手形」を使用する場合もあるでしょうし、手形の代金は「当座預金」に振り込まれます。これらのサイクルの中に登場する資産、負債は全て流動資産、流動負債ということになります。ですから、仮に土地や自動車などを売買することを本業とする会社があったとしたら、それらの資産は「商品」として保有しているわけなので固定資産ではなく流動資産に分類されます。しかし、もし家電を販売することを本業としている会社が営業用に自動車を持っていたとしたら、それは「車両運搬具」として固定資産に分類されるということです。この違いは仕訳問題でも出題されることがあるので注意しましょう。

続いて、「一年基準(ワン・イヤー・ルール)」についてですが、これは3級でも少し触れていると思いますが、一年間を超えて保有することを目的とした資産、負債は「固定資産」「固定負債」に該当するという基準です。ですから、耐用年数が数年から数十年の「備品」や「建物」は固定資産に分類されますし、数年間借りることを目的とした「長期借入金」は固定負債に分類されます。ただし、注意しなければならないのは、「一年基準」は「正常営業循環基準」に該当しない資産、負債に適用されるということです。ですから、仮に一年を超えて保有する資産であっても、それが「商品」として販売することを目的としているなら固定資産には分類されません。

前回に続き、二回にわたって簿記2級商業簿記の導入として損益計算書と貸借対照表について見てきました。概念的な話が多く、イメージしづらいところもあったかもしれません。次回から実際の仕訳について学習していきますので、ぜひ一つ一つ理解を深めていっていただけたらと思います。頑張りましょう!

簿記2級 商業簿記① 損益計算書と貸借対照表 前編

今回から、簿記2級の独学サポートとして、商業簿記と工業簿記の内容について投稿していきます。まずは、商業簿記の第一回ということで、簿記2級における財務諸表について説明させていただきます。なお、こちらの投稿では、簿記3級を合格された、もしくは勉強がほぼ完了している方に向けての内容となりますので、ご了承ください。

簿記2級では、株式会社を前提とした記帳を学習します。これまでの簿記3級では、個人商店を前提としていたため、それよりも少し複雑になります。株式会社とは、規模の大きいものから小さいものまで様々ですが、株主が会社に出資をすることで成立する会社のことを言います。つまり、会社が儲かることによって、それに出資している株主も利益を得ることができる仕組みになっています。ですから、個人商店の場合と比べて、より多くの人が会社の経営状況に興味を持っていますし、また少しでも詳しく知りたいと思っています。

簿記2級の財務諸表は3級のものと違って、損益計算書と貸借対照表それぞれ、「区分表示」がなされます。それは、財務諸表を見た人に対してより詳しくその会社の状況を知ってもらうためのものです。例えば、損益計算書では純利益を計算しますが、その利益が何から得られたのか、もしくは、利益を得るために会社はどういったことに力を入れているのか、などを投資をしている株主に伝える必要があります。他にも、たまにニュースになる「粉飾(意図的にウソの会計情報を公表すること)」を防ぐうえでもこういったことが有効になります。

それではまず、損益計算書の区分表示から見ていきましょう。

Ⅰ 売上高

Ⅱ 売上原価

Ⅲ 販売費および一般管理費

Ⅳ 営業外収益

Ⅴ 営業外費用

Ⅵ 特別利益

Ⅶ 特別損失

まずは、「売上高」ですが、これは3級でも学習した通り、商品を販売することによって得られた金額です。そして、「売上原価」も3級で学習済みです。販売した商品を仕入れるのにかかった金額ですね。

次に、「販売費及び一般管理費」ですが、これはその会社の本業をしていくのに必要な費用、と考えてください。商品売買をするために販売員に給料を支払ったり、店舗の家賃を支払ったり、などが該当します。ちなみに販売費及び一般管理費は略して「販管費(はんかんひ)」と呼ぶことが多いです。

そして、「営業外収益」は営業外の活動をすることで得られたもうけで、「営業外費用」は営業外の活動によって発生した損失を言います。ここで言う「営業」とは会社の本業のことを言います。本屋さんであれば本を売ること、パン屋さんであればパンを売ることですね。2級で学習する営業外収益、費用は利息の支払い、受け取りや、有価証券の売却などによって発生するものがあります。

最後に、「特別利益」「特別損失」とは普段の会社営業では起こらない収入や損失を言います。例えば、「固定資産売却益」「固定資産売却損」が特別利益、損失に該当しますが、固定資産は何年もの期間にわたって使用する資産ですから、日常的に売ったり買ったりということは通常ありません。他にも、「火災損失」のように、事故や天災によって発生する損失も「特別損失」に該当します。

損益計算書の実際の表示方法ですが、上から下に向かって計算していく形式となっています。一番大きい金額が売上高であり、そこから売上原価を引くことによって「売上総利益(うりあげそうりえき)」を求め、売上総利益から販売費及び一般管理費を引くことで「営業利益」を求めます。そして、営業利益に営業外収益を足し、営業外費用を引くことで「経常利益」を求めます。経常利益に特別利益を足し、特別損失を引くことで「税引前当期純利益」を求めることができます。最後に、税引前当期純利益から税金の金額(法人税、住民税及び事業税)を引くことで当期純利益を求めることになります。まとめると、以下のようになります。

Ⅰ 売上高                   100,000

Ⅱ 売上原価                   60,000

          売上総利益          40,000 

              (100,000 - 60,000)

Ⅲ 販売費および一般管理費            15,000

          営業利益           25,000

               (40,000 - 15,000)

Ⅳ 営業外収益                   5,000

Ⅴ 営業外費用                   4,000

          経常利益           26,000

        (25,000 + 5,000 - 4,000)

Ⅵ 特別利益                    1,000

Ⅶ 特別損失                    1,500

          税引前当期純利益       25,500

        (26,000 + 1,000 - 1,500)

         法人税、住民税及び事業税    10,000

          当期純利益          15,500

               (25,500 - 10,000)

いかがだったでしょうか。これまで3級で学習した損益計算書とだいぶ雰囲気が違うと思われたかもしれません。今すべて覚えようとせず、学習が進むと共にに少しずつ理解していっていただけたらと思います。少し長くなりましたので、貸借対照表については次回説明していきたいと思います!!