約束手形の振り出しや受け取りについては理解できたけれど、「割引き」や「裏書き」はややこしくてわからない!という方は多いと思います。
今回は、手形取引の中でも少しややこしい、約束手形の割引きと裏書きについて説明いたします。
この記事を読んでいただければ、正確な仕訳ができるようになるはずです。
約束手形に関する基本的な理解がまだの方は、こちらから読んでみてくださいね。
約束手形について知ろう(簿記3級)
約束手形の割引きと裏書きとは?
通常、受け取った手形は支払期日に決済され、代金が銀行口座に振り込まれます。
しかし、今回は受け取った手形を決済するのではなく、「割引(わりびき)」「裏書(うらがき)」する場合について説明していきます。
約束手形の割引き
前述のとおり、手形を受け取った場合、決済の期日まで待てば、額面金額(その手形に書かれた金額)が銀行の預金口座に振り込まれます。
例えば、4月1日に支払期日が一ケ月後の5月1日で、額面金額100円の約束手形を受け取ったならば、一ケ月待てば、100円が預金口座に振り込まれるということです。
しかし、資金繰りなどの関係から、一ケ月待たず、すぐにお金が必要ということもあります。そんな場合は、受け取った手形を銀行で「割引く」ことで、現金に換えることができます。
しかし、注意しなくてはならないのは、銀行で手形を割引く場合、銀行に手数料を支払わなくてはなりません。
ですから、先ほどの4月1日に受け取った手形を4月8日に銀行で割引いたとして、手数料が20円だったとすると、額面金額100円から20円を差し引いた80円が預金口座に振り込まれるということになります。
この、銀行に支払われる手数料は、「手形売却損(てがたばいきゃくそん)」という費用の勘定を使って処理します。
約束手形の裏書き
次は、約束手形の「裏書き」について説明します。
手形の裏書とは、割引と同じように、手形を受け取った側が手形の決済の期日まで待たず、受け取った手形を他の取引の支払いに充てる、という取引です。
例えば、AさんがBさんに手形を振り出します、次に、BさんがCさんに対する支払いに際して、「Aさんから受け取った手形を裏書き」することができます。
ババ抜きのジョーカーのように、Aさんの手元から、Bさん→Cさんと手形が渡っていくわけですね。
ですから、決済の期日には、Aさんが最後に手形を持っていたCさんに対して、手形の額面金額を支払うということになります。
手形の割引きの仕訳
では、実際の仕訳を見ていきましょう。
仕訳例①
「当店は、4月1日に受け取った額面金額100の約束手形を取引銀行で割引き、手数料20を差し引かれた残額が当座預金口座に振り込まれた」
割引いた分の受取手形が減少し、手形売却損(費用)20が発生し、当座預金残高が80増加します。
借方 | 貸方 |
当座預金 80 | 受取手形 100 |
手形売却損 20 |
取引の八要素で確認しておくと、
簿記の取引について理解しよう!
(借方要素) | (貸方要素) |
資産の増加 | 資産の減少 |
負債の減少 | 負債の増加 |
純資産の減少 | 純資産の増加 |
費用の発生 | 収益の発生 |
借方は、当座預金80が資産の増加、手形売却損20が費用の発生ですね。貸方は、資産の減少です。
約束手形の裏書きの仕訳
続いて、裏書きの仕訳を見ていきます。
Aさんが振出した約束手形が、Bさんに渡り、さらにその約束手形をBさんがCさんに裏書きした場合についてです。
仕訳例②(復習)
まずは、復習になりますが、Aさん→Bさんの間の取引です。
「A商店はB商店に対する買掛金100の支払いのため、約束手形を振り出した」
借方 | 貸方 |
買掛金 100 | 支払手形 100 |
「B商店は売掛金100の支払いとして、A商店から約束手形を受け取った」
借方 | 貸方 |
受取手形 100 | 売掛金 100 |
主語に注意するようにしてください。
A商店側から見ると、支払手形100が増加し、B商店側から見ると、受取手形100が増加しています。
仕訳例③(裏書きした側)
続いて、Bさん→Cさんの間の取引です。
受け取った約束手形を、他人に裏書きした場合の仕訳となります。
「B商店はC商店に対する買掛金100につき、A商店から受け取った約束手形を裏書して支払った」
支払った分の買掛金が減少し、「約束手形を裏書きして」ということは、手元にあった手形がなくなるわけですから、受取手形が減少します。
借方 | 貸方 |
買掛金 100 | 受取手形 100 |
取引の八要素で確認しておくと、
(借方要素) | (貸方要素) |
資産の増加 | 資産の減少 |
負債の減少 | 負債の増加 |
純資産の減少 | 純資産の増加 |
費用の発生 | 収益の発生 |
借方が負債の減少で、貸方は資産の減少となります。
仕訳例④(裏書きされた側)
最後に、約束手形の裏書きを受けた場合の仕訳を見ていきましょう。
「C商店はB商店から売掛金100の支払いのため、A商店が振出した約束手形の裏書きを受けた」
今度はCさん側の仕訳になります。
支払いを受けた売掛金が減少し、新たにAさん振出の手形を受け取ったわけですから、
借方 | 貸方 |
受取手形 100 | 売掛金 100 |
となります。
仕訳例②のB商店の仕訳と同じです。
つまり、「手形の振出しを受けた側」と、「手形の裏書を受けた側」の仕訳は同じになります。
注意すべきは、「手形を振出した側」と「手形を裏書した側」の貸方です。
「振出した側」の貸方が「支払手形」になるのに対し、「裏書した側」の貸方は「受取手形」となります。
これについては、仕訳例②のA商店の仕訳と、仕訳例③のB商店の仕訳を比較し、確認してみて下さい。
まとめ
今回は、手形の「割引」と「裏書」について見てきました。
両方とも、前回の内容がしっかり理解できていることが前提となるので、もし分かりづらかった方は、ぜひ前回の手形取引から復習してみてくださいね!
簿記の学習を始めるにあたって、まず知っておくべきこと