簿記2級 工業簿記② 材料費 前編

今回は「材料費」について学習していきます。前回の原価計算の基礎で「形態別分類」が材料費、労務費、経費の三つに分かれるということを説明いたしました。

「材料費」とは材料を購入した際に発生する費用です。材料には、パンを製造するなら小麦、自動車を製造するなら鉄、などのように製品のもとになる「原料」や、それ以外に燃料や接着剤などの「補助材料」、そしてドライバーやハンマーなどの工具も含まれます。

前回、「製品との関連による分類」で、「製造直接費」と「製造間接費」に分けることができると説明しましたが、材料費も「直接材料費」と「間接材料費」に分けることができます。材料費のほとんどが直接材料費と考えてよいのですが、先ほど挙げた補助材料や工具のように間接材料も存在します。

材料費の計算は、簿記3級で学習した「仕入原価」の計算方法と同じように、「購入代価(こうにゅうだいか)」(材料を購入するのにかかった金額)と「材料副費(ざいりょうふくひ)」(材料を購入するのに付随してかかった費用)を合計することによって求めます。ですから、一個当たり50円の材料を10個購入し、その際に引き取り運賃を20円支払ったとすると、材料費の金額は、

50 × 10 + 20 = 520

となります。一個当たりの材料費は、

520 ÷ 10 =52

@52円ということになります。

この材料副費についてですが、「予定配賦(よていはいふ)」する場合があります。予定配賦とは、単位当たりの原価の金額を会計年度期首に決めておいて、それを使って毎月の原価を計算することを言います。そうして計算された原価を「予定原価(よていげんか)」といいます。予定原価に対し、実際にかかった費用をもとに計算された原価を「実際原価(じっさいげんか)」といいます。

なぜ、このような手続きをとるのでしょうか? 例えば、材料を購入する際、毎回引き取り運賃がかかると仮定しましょう。運賃の金額は購入する量や時期などによって毎回変動します。よって、一か月間でどれだけの材料を購入したことにより、どれだけ運賃を支払ったかを計算することは手間であり、時間がかかってしまいます。しかし、材料一個購入するのにかかる運賃をあらかじめ予定しておくとしたらどうでしょう。そうすると、一個当たりの運賃に購入した数量をかけることで、一か月間の材料副費を簡単に求めることができます。

原価計算はコスト管理の目的から、計算の迅速性が求められます。一か月間の材料費を計算するのに数か月かかってしまっては、毎月のコスト管理に役立てることができません。よって、「予定原価」を使うことによってより早い段階でその月のコストを計算しようとしているのです。

しかし、実際に支払った金額が予定していた金額と同じであることはあり得ません。ですので、「実際原価」と「予定原価」の間にズレが生じます。このズレを「差異」と呼びます。材料副費を予定配賦することによって生じた差異を「材料副費差異(ざいりょうふくひさい)」といいます。そして、実際原価のほうが予定原価よりも大きかった場合の差異を「不利差異(借方差異)」といい、その逆で予定原価のほうが実際原価よりも大きかった場合の差異を「有利差異(貸方差異)」といいます。予定していたよりも多く支払ったなら「有利」、予定していたよりも少なく済んだなら「不利」ということですね。

この借方差異と貸方差異について、私は、借方は費用だから余分に費用がかかった→不利差異、貸方は収益だから費用が少なく済んだ→有利差異、というように覚えていました。

そして、各月に発生した差異については会計年度末に売上原価に「賦課(ふか)」します。なぜなら、予定原価を使っていると毎月差異が発生しますが、これについてはそのままにしておくことはできないので、一年分のズレをまとめて売上原価に含めてしまう、ということです。

なお、「予定原価」については材料費のみではなく、「労務費」「経費」の計算においても登場するので、ぜひここでしっかり押さえておくようにしてください。

それでは、材料費の計算の一連の流れを見ていきましょう。

「材料を掛けで購入し、材料の購入代価3,000円の5%を材料副費として予定配賦した」

材料費の金額は、購入代価3,000と材料副費150(=3,000×5%)の合計3,150となります。

(借方)材料 3,150 (貸方)買掛金 3,000

             (貸方)材料副費  150

「当月の材料副費の実際発生額200円を現金で支払った」

(借方)材料副費 200 (貸方)現金 200

「材料副費の予定配賦額と実際発生額の差額を材料副費差異勘定へ振り替えた」

実際発生額200の方が予定配賦額150よりも大きいので「不利差異(借方差異)」となります。借方差異ということで、材料副費差異勘定が借方側にきます。

(借方)材料副費差異 50 (貸方)材料副費 50

「会計年度末に、材料副費差異を売上原価勘定に振替えた」

(借方)売上原価   50 (貸方)材料副費差異 50

最後に、先ほどの材料の購入の仕訳を、「予定配賦」していなかった場合で見ておきましょう。

「 材料3,000円を掛けで購入し、材料副費として引き取り運賃150を現金で支払った」

(借方)材料 3,150 (貸方)買掛金 3,000

             (貸方)現金    150

今回は、材料の購入と材料副費の予定配賦の仕訳について見てきました。少し長くなりましたので、続きは次回にしたいと思います!!

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