これまで、資産や負債などについては理解できたけども、資本金ってよくわからない、そもそも純資産ってなに?と思われる方は多いと思います。
資本金はこれまで学習されてきた勘定科目とは少し違うのですが、正しく理解すれば決して難しくはありません。
今回は、「資本金」とそのマイナス勘定である「引出金」について説明します!
目次
純資産とは
今回は、純資産について学習します。
簿記3級で学習する純資産とは「資本金(しほんきん)」勘定のみになりますが、それ以外に、「資本のマイナス勘定」として、「引出金(ひきだしきん)」という勘定科目がありますので、そちらもあわせて見ていきます。
簿記の五要素における純資産
さて、純資産について説明する前に、簿記の五要素について復習しておきましょう。
勘定科目を知るうえで大切な簿記の五要素とは?
簿記の五要素は、「資産」「負債」「純資産」「収益」「費用」の五つです。
それぞれの勘定科目の例としては、以下のようなものがあります。
資産: 現金 商品 土地 備品
負債: 借入金
純資産:資本金
収益: 売上 受取利息
費用: 仕入 支払家賃
このうち、資産、負債、純資産の三つを一つのグループ、収益、費用をもう一つのグループと考えます。
なぜかというと、一年が終わり決算日には、資産、負債、純資産の三つについては「貸借対照表」と呼ばれる報告書に、そして収益、費用については「損益計算書」と呼ばれる報告書にまとめられるからです。
この、「貸借対照表」や「損益計算書」等の報告書を合わせて「財務諸表」と呼びます。
負債と純資産の違い
さて、「貸借対照表」に計上される資産、負債、純資産のうち、資産(現金、売掛金、受取手形など)と負債(借入金、買掛金、支払手形など)については学習されたと思います。
純資産とは、イメージしにくいかもしれませんが、ざっくり言うと「負債と似てるんだけど返さなくていいお金」となります。
お店や会社が営業をしていくには、資金が必要になります。
そのお金を調達する方法として、様々あるのですが、大きく分けて「いずれ返さなくてはいけない」お金か、「返さなくていい」お金かのいずれかになります。
「いずれ返さなくてはいけない」お金は負債、「返さなくていい」お金は純資産ということです。
簿記3級では「個人商店」を前提とした記帳を学習しますので、この場合の「純資産」とは、店主がもともと持っていたお金のことを言います。
つまり、ある人が商売を始めようとしたとき、もともと財産として持っていたお金と、銀行などで借りてきたお金を合わせてお店をしたとします。
すると、もともと持っていたお金は「資本金」、銀行などで借りてきたお金は「借入金」となります。
そして、簿記の問題で出される場合、店主がもともと持っていたお金をお店の資金にあてることを「元入れ(もといれ)」と言いますので、覚えておきましょう。
仕訳例①(元入れ)
では、実際の仕訳で見ていきましょう。
「店主は現金100を元入れし、商売を開始した」
借方 | 貸方 |
現金 100 | 資本金 100 |
お店の資金として使える現金が増えたとともに、資本金が増えたことを意味しています。
取引の八要素では、
簿記の取引について理解しよう!
(借方要素) | (貸方要素) |
資産の増加 | 資産の減少 |
負債の減少 | 負債の増加 |
純資産の減少 | 純資産の増加 |
費用の発生 | 収益の発生 |
借方が資産の増加、貸方は純資産の増加です。
仕訳例②(現金の引出し)
続いて、「資本のマイナス勘定」である、「引出金」について見ていきます。
個人商店を経営している場合、お店のお金で個人的な買い物をしたり、お店の商品を自分用に持って帰って使う、といったことがあります。
この場合、お店の資本を引出した、として「引出金」勘定を使うことになります。
いくつか具体例を見ていきましょう。
「店主はお店から現金100を引出し、昼食を食べた」
この場合、お店の現金が減るとともに、引出金を計上します。
借方 | 貸方 |
引出金 100 | 現金 100 |
取引の八要素では、借方が資本のマイナス、貸方が資産の減少です。
ここで、別解として引出金勘定を使わず、直接、資本金を減額する仕訳をすることもあります。
借方 | 貸方 |
資本金 100 | 現金 100 |
この場合、借方は純資産の減少、貸方は資産の減少となります。
仕訳例③(商品の家事消費)
「店主は100で仕入れたお店のダイコンを持って帰り、家族で食べた」
本問のように、お店の商品を個人的に消費することを「家事消費(かじしょうひ)」といいます。
この場合も引出金を計上するのですが、仕入れた商品を家族で食べてしまったので、「仕入」を減少させることになります。
借方 | 貸方 |
引出金 100 | 仕入 100 |
取引の八要素では、借方が資本のマイナス、貸方がは費用の消滅です。
この仕訳についても、別解があります。
借方 | 貸方 |
資本金 100 | 仕入 100 |
こちらについても、必ず問題文に指示がありますので注意しましょう。
仕訳例④(引出金の振替え)
さて、この「引出金」勘定についてですが、決算日においてもし残高が残っていた場合、その残高分だけ資本金を減少させなくてはいけません。
「決算日につき、引出金残高200について、資本金と相殺した」
借方 | 貸方 |
資本金 200 | 引出金 200 |
少しややこしいですが、一応取引の八要素で確認しておくと、借方が純資産のマイナス、貸方は「資本のマイナス」の減少ということになります。
もし、引出金勘定を使わず、別解の直接、資本金を減少させる仕訳をしていたら、この決算日の仕訳はしなくていいということですね。
まとめ
今回は、資本金と引出金の仕訳について説明しました。
問題文の指示をしっかり読まないとミスをしやすいので、何度も繰り返し復習するようにしてくださいね!
簿記の学習を始めるにあたって、まず知っておくべきこと