簿記2級 商業簿記③ 商品売買

今回は、簿記2級における商品売買について学習します。商品売買については3級で学習していますので、その延長ということになります。

まずは復習になりますが、「返品」「値引き」「割戻し」についてです。

「返品」とは、注文したものと違っていたなどの理由から商品を返却することを言います。それに対し、「値引き」は商品に傷があったり、注文した量に足りなかったなどの理由により代金を少なく支払うこと、そして「割戻し」はたくさん買ったことにより、値段を安くしてもらうことを言います。これらは、三つとも同じ仕訳(逆仕訳)をします。

仕訳例を見てみましょう。

「掛けで仕入れた商品のうち、50につき品違いのため返品した」

(借方)買掛金 50 (貸方)仕入 50

「得意先に対し一定量の販売を行ったため、割引50を行い、掛代金と相殺した」

(借方)売上 50 (貸方)売掛金 50

続いて、「割引き」について見ていきましょう。割引とは、掛け取引を行っている相手に対し、掛代金を支払期日よりも早く支払ってもらった場合に代金を安くすることを言います。

例えば、得意先と掛代金を一か月以内に支払う取引をいつも行っているとしましょう。この場合、商品の代金には一か月支払いを猶予するための「利息相当額」が含まれていることが通常です。支払いを待ってあげる分、少し高くしておくよ、ということですね。ですので、もし一か月よりも早く支払ってもらったなら「利息相当額」の分だけ安くする場合があります。それを仕入れる側は「仕入割引(しいれわりびき)」という収益勘定で、販売する側は「売上割引(うりあげわりびき)」という費用勘定で処理することになります。仕入れる側は安く仕入れることができたから「仕入割引」は収益(得をした)、販売する側は安く売らなくてはいけないので「売上割引」は費用(損をした)と覚えると良いでしょう。

ここで、非常に混同しやすいのが前述の「割戻し」と「割引き」の二つです。もう一度確認しますが、割戻しとは多く買ったから安くしてもらったことを意味します。スーパーのお徳用パックをイメージしていただくと良いと思います。それに対し、割引きは商品自体はいつもの取引と全く同じで、ただ代金が早く支払われたので金額を安くしたよ、ということです。

逆仕訳を行う「返品」「値引き」「割戻し」は、それぞれ返品なら商品が違っていた、値引きなら商品にキズがあった、割戻しなら商品をたくさん買ったなど、商品自体に理由あります。しかし「割引き」の場合は支払いが早かったことが理由で行われますので、逆仕訳で仕入や売上を取り消すということをせず、「仕入割引(収益)」もしくは「売上割引(費用)」を計上するということになります。

ちなみに、損益計算書の区分では「仕入割引」は営業外収益、「売上割引」は営業外費用となります。営業(商品売買)以外の理由で発生した収益、費用ということですね。

それでは、「割引き」の仕訳を見ていきましょう。

「先日掛けにより仕入れた商品代金500の支払いにつき、支払日が支払期日の一週間前であったため4%の割引きを受け、現金で支払った」

割引きを受けた金額は500の4%ですので20になります。現金で支払った金額は、500-20で480ですね。

(借方)買掛金 500 (貸方)現金  480

            (貸方)仕入割引 20

今度は、販売する側の仕訳です。

「先日掛けで販売した商品代金500につき、支払日が支払期日の一週間前であったため4%の割引きを行い、現金で受け取った」

(借方)現金  480 (貸方)売掛金 500

(借方)売上割引 20

続いて、「商品の期末評価」について見ていきましょう。3級の決算を学習した際に、「売上原価の計算」をするために期末棚卸をする、ということを学ばれたと思います。

2級の商品売買では、期末棚卸をする際、帳簿上の商品の有高と実際の有高がズレていないかを確認する必要があります。つまり、ちゃんと数がそろっているか、全て売れる状態のものであるか、などをチェックしないといけないということです。そして、帳簿と実際の差は「棚卸減耗損(たなおろしげんもうそん)」と「商品評価損」という二つの費用勘定を使って処理していきます。

「棚卸減耗損」とは、帳簿と実際の商品の数が違うことにより発生します。盗難や紛失などにより数が減ってしまった場合などです。帳簿の数量と実際の数量の差に商品の原価を掛けることによって求めることができます。例えば、一つ50で仕入れた商品の数量が帳簿上120個で実際は110個だったとすると、棚卸減耗損の金額は、

@50 × ( 120 - 110 ) = 500

となります。50の商品が10個なくなってしまったということですね。

「商品評価損」とは、商品を原価未満で販売しなければいけない時に発生します。スーパーで賞味期限が間近のお総菜が半額で売られていたり、携帯電話やゲーム機など、古い型のものが売り出し当初よりもかなり安くで売られているようなケースをイメージしていただければと思います。計算方法は、原価と時価(実際に販売できる金額)の差にその商品の実際の数量をかけることによって求めます。ですから、一つ50で仕入れた商品を45でしか販売できない場合で、実際の数量が110個だったとすると、商品評価損の金額は、

( @50 - @ 45 ) × 110 = 550

となります。ちなみに、それぞれの計算方法の覚え方ですが、棚卸減耗損は商品の原価に数量の差をかけるのに対し、商品評価損は商品の原価と時価の差に実際の数量をかけています。つまり、棚卸減耗損を求めるには商品評価損は必要ありませんが、商品評価損を計算するには実際の数量が必要であり、先に棚卸減耗損を求めなくてはならないということです。

「棚卸減耗損」と「商品評価損」は2級商業簿記の決算問題でほぼ必ず出題されますので、正確に覚えるようにしましょう。

それでは、それぞれの仕訳を見ていきましょう。

「決算日に際し、期末棚卸をする。なお、帳簿棚卸高は、数量が120個、原価が50であり、実地棚卸高は、数量が110個、正味売却価額(時価)は45である。期首商品棚卸高は5,000であった。」

必ず、数量の差10個に原価50をかけて棚卸減耗損500を求めてから、原価と時価の差5に実地棚卸数量110をかけて商品評価損550を求めるようにしてください。

なお、期末棚卸を仕訳で表す場合、3級で学習した期首商品を繰越商品から仕入に振替え、期末商品を仕入から繰越商品に振替える仕訳を行います。その際、期末商品として仕訳に使用する金額は実地棚卸高ではなく帳簿棚卸高を用いる点に注意しましょう。

本問における期末帳簿棚卸高は、帳簿棚卸数量120個に原価50をかけて6,000となります。

(借方)仕入 5,000   (貸方)繰越商品 5,000

(借方)繰越商品 6,000 (貸方)仕入 6,000 ←帳簿棚卸高!

(借方)棚卸減耗損 500  (貸方)繰越商品 500

(借方)商品評価損 550  (貸方)繰越商品 550

こちらの仕訳では、借方の繰越商品6,000(帳簿棚卸高)から、貸方の繰越商品500(棚卸減耗損)と550(商品評価損)を差し引くことによって、実地棚卸高4,950が求められるようになっています。

今回は、2級商業簿記最初の仕訳ということで、商品売買に関わる仕訳について見てきました。3級の内容を思い出しながら、しっかりと理解していくようにしていってください。

簿記2級 工業簿記① 原価計算の基礎

今回から、簿記2級の工業簿記について学習していきます。工業簿記は、2級から新たに追加される内容ですので、慣れるまでは商業簿記との違いに少し戸惑うことがあるかもしれません。

工業簿記は2級の試験の100点満点のうち40点を占めます。割合的には商業簿記の60点のほうが多いのですが、最近の試験では商業簿記の内容がとても難しい問題が出題されることが多く、いかに工業簿記で高得点をとれるかが合否を分けることも少なくありません。ですので、ぜひ工業簿記を得意になっていただき、2級合格に大きなアドバンテージを持てるようになっていただけたら嬉しく思います。

さて、これまで3級で学習してきた「商業簿記」とは、商品を仕入れてから販売することを前提としていました。それに対し、これから学習する「工業簿記」とは、仕入れたものをそのまま販売するのではなく、材料を加工し製造した製品を販売することを目的とした記帳になります。ですので、工業簿記では製品を製造するのにかかった原価を計算する必要があります。これを「原価計算」といいます。

原価計算とは、製品を製造するうえで必要な材料やそれを加工するのにかかった費用を計算し、工業簿記の記帳に必要な製品一つずつの原価を求めることを目的としていますが、通常一か月単位で行われます。これを「原価計算期間」といいます。なぜ、一か月単位で行うかというと、製品を製造するのにかかる原価は毎月変わりますので、そのほうがより安く製品を製造するためのコスト管理に役立てることができるからです。

それでは、次は「製造原価の分類」について見ていきましょう。製造原価とは製品を製造するのにかかった原価のことですが、いくつかの方法で分類することができます。

まずは、何にかかった原価なのか、によっての分類です。これを「形態別分類」と呼び、三つに分けることができます。

・材料費

・労務費

・経費

「材料費」とは、製品を製造するうえで必要な材料を購入することによって発生する原価です。一般に「原価」というと、これを思い浮かべる人が多いかもしれません。次に、「労務費」とは、製品を製造する工員等に支払った人件費のことを言います。工員さん以外にも、工場の監督や工場で勤務する事務員さんに支払う給料も含まれます。最後に、「経費」とは、材料費、労務費以外の全てを指します。例えば水道代、光熱費、など工場でかかる費用が含まれます。

次に、「製品との関連による分類」です。材料費のように、ある製品を製造するのに直接的にかかった原価か、それとも光熱費のように工場全体でかかった原価なのか、によって分けることができます。

・製造直接費

・製造間接費

この二つは単に「直接費」「間接費」と呼ぶ場合もあります。「製造直接費」とは、前述の通りある製品を製造するのに直接的にかかった原価であり、その製品を製造するのにどれだけの減価がかかったか個別に計算することができます。一方で、「製造間接費」は光熱費のように工場全体でかかった原価のように、一つ一つの製品にどの程度の原価がかかったのか明確ではありません。ですので、これら二つの分類によって原価計算の方法が異なってくることになります。

最後は、「操業度との関連における分類」です。「操業度」とは、生産設備の利用度を意味します。ややこしければ「生産量」と置き換えていただいてもここでは結構です。つまり、生産すればするほどかかる原価か、それとも生産量にかかわらず一定量発生する原価か、による分類になります。

・変動費

・固定費

「変動費」は材料費のように生産量に比例して発生する原価を言います。一方で、「固定費」は工場機械の減価償却費のように生産量にかかわらず発生する原価のことです。もしあなたが店舗を借りて飲食店を経営しているとしたら、食材などの材料費は変動費、店舗の家賃や光熱費は固定費となります。

これらの分類は別々に覚えるとあまり効率的ではないかもしれません。例えば、「材料費」はほとんどの場合、「製造直接費」であり「変動費」ですが、「労務費」の場合、パートタイムで特定の作業を任されている方のように「製造直接費」であり「変動費」となる場合もあれば、工場全体を監督する方の給料であれば、「製造間接費」であり「固定費」となる場合もあります。ですので、ここではおおまかな言葉の意味だけ知っておいていただいて、学習が進むとともに理解を深めていただければと思います。

最後に、2級で学習する原価計算方法について説明したいと思います。これは、大きく「個別原価計算」と「総合原価計算」の二つに分けることができます。個別原価計算はオーダーメイドで製造される製品のように、製品一つ一つが別々の仕様で製造する場合の計算方法です。それに対し、総合原価計算は同じ規格の製品を大量に生産する場合の計算方法になります。コンビニのおにぎりやパンなどをイメージしていただければ結構です。こちらについても後日より詳しく説明していきたいと思います。

今回は、「原価計算の基礎」ということで、原価計算に必要な知識について説明させていただきました。次回からは一つ一つの原価についてより詳しく見ていきたいと思いますので、頑張りましょう!

簿記2級 商業簿記② 損益計算書と貸借対照表 後編

今回も前回に引き続き、簿記2級商業簿記の導入ということで、貸借対照表について説明していきたいと思います。前回は、損益計算書について説明しました。

前回、簿記3級で個人商店の簿記を学習したのに対し、2級では株式会社を前提とした記帳を学習します、ということをお伝えしました。よって、損益計算書は売上高、売上原価や販売費及び一般管理費といった区分に分けて表示する、といったことについて説明いたしましたが、貸借対照表も3級で学習したものよりもより詳しく表示するため、「区分表示」がなされます。復習になりますが、貸借対照表の借方は資産、そして貸方は負債と純資産に分かれます。ですので、「区分表示」がなされる場合はそれぞれ、資産、負債、純資産の中で区分されるといった形になります。

それでは、見ていきましょう。

資産の部                負債の部

Ⅰ 流動資産              Ⅰ 流動負債

Ⅱ 固定資産              Ⅱ 固定負債

 ・有形固定資産            純資産の部

 ・無形固定資産            Ⅰ 株主資本  

 ・投資その他の資産          Ⅱ 評価・換算差額等

まずは、資産の部です。資産の部は、「流動資産」と「固定資産」に大きく分かれます。「流動」と「固定」の違いは後ほど詳しく説明します。そして、固定資産の中には、「有形固定資産」「無形固定資産」そして「投資その他の資産」の三つがあります。

「有形固定資産」は3級でも学習した「土地」「建物」「備品」等が該当します。「無形固定資産」は、形のない権利等が該当します。2級で学習する無形固定資産には、企業が合併などにより取得する「のれん」があります。「投資その他の資産」は会社が本業目的以外の投資のために保有する資産等が該当します。例えば、定期預金など、長い期間をかけて運用する「長期性預金」や他の会社に対し影響力を行使する目的で保有する「関係会社株式」などがあります。具体的な勘定科目はここで覚える必要はないので、それぞれの区分について何となくイメージを持っておいてください。

続いて、負債の部ですが、こちらも資産の部と同様に「流動負債」と「固定負債」に大きく分かれます。流動負債は、商品売買に伴って発生する「買掛金」や「支払手形」、固定負債は数年間お金を借りることを目的とした「長期借入金」が該当します。

最後に純資産の部は、「株主資本」と「評価・換算差額等」に分かれます。「株主資本」とは、会社の出資者である株主に帰属する資本のことを言い、株主が出資した「元手」に該当する「資本金」や「資本剰余金」と、元手を使って企業が生み出した利益である「果実」に該当する「利益剰余金」に分かれます。

この「元手」と「果実」という考え方については深追いする必要はありませんが、会社を果物がなる「木」に例えて、木を植えたのが株主だとすると、会社の経営者が水をやるなどして育てることによって得られたもうけが「果実」というイメージになります。「評価・換算差額等」は純資産の部のうち株主資本以外の項目を言います。そのうち2級で学習するのは、有価証券の時価が変動することにより発生する「その他有価証券評価差額金」のみです。

さて、さきほど「流動資産」「固定資産」などといった言葉が出てきましたが、資産の部、負債の部の「流動」「固定」を分類する基準は二つあります。それは「正常営業循環基準」と「一年基準(ワン・イヤー・ルール)」というものです。「正常営業循環基準」とは、言葉はややこしそうですが、その意味は「営業(会社が商品を売ったり買ったりすること)」に伴って発生する資産や負債は「流動資産」に該当する、ということです。

例えば、会社が「商品」を掛けで仕入れると「買掛金」が発生します。そして仕入れた商品を掛けで販売すると「売掛金」が発生し、その売掛金を回収すると「現金」を取得します。また、現金で回収しない場合「約束手形」を使用する場合もあるでしょうし、手形の代金は「当座預金」に振り込まれます。これらのサイクルの中に登場する資産、負債は全て流動資産、流動負債ということになります。ですから、仮に土地や自動車などを売買することを本業とする会社があったとしたら、それらの資産は「商品」として保有しているわけなので固定資産ではなく流動資産に分類されます。しかし、もし家電を販売することを本業としている会社が営業用に自動車を持っていたとしたら、それは「車両運搬具」として固定資産に分類されるということです。この違いは仕訳問題でも出題されることがあるので注意しましょう。

続いて、「一年基準(ワン・イヤー・ルール)」についてですが、これは3級でも少し触れていると思いますが、一年間を超えて保有することを目的とした資産、負債は「固定資産」「固定負債」に該当するという基準です。ですから、耐用年数が数年から数十年の「備品」や「建物」は固定資産に分類されますし、数年間借りることを目的とした「長期借入金」は固定負債に分類されます。ただし、注意しなければならないのは、「一年基準」は「正常営業循環基準」に該当しない資産、負債に適用されるということです。ですから、仮に一年を超えて保有する資産であっても、それが「商品」として販売することを目的としているなら固定資産には分類されません。

前回に続き、二回にわたって簿記2級商業簿記の導入として損益計算書と貸借対照表について見てきました。概念的な話が多く、イメージしづらいところもあったかもしれません。次回から実際の仕訳について学習していきますので、ぜひ一つ一つ理解を深めていっていただけたらと思います。頑張りましょう!

簿記2級 商業簿記① 損益計算書と貸借対照表 前編

今回から、簿記2級の独学サポートとして、商業簿記と工業簿記の内容について投稿していきます。まずは、商業簿記の第一回ということで、簿記2級における財務諸表について説明させていただきます。なお、こちらの投稿では、簿記3級を合格された、もしくは勉強がほぼ完了している方に向けての内容となりますので、ご了承ください。

簿記2級では、株式会社を前提とした記帳を学習します。これまでの簿記3級では、個人商店を前提としていたため、それよりも少し複雑になります。株式会社とは、規模の大きいものから小さいものまで様々ですが、株主が会社に出資をすることで成立する会社のことを言います。つまり、会社が儲かることによって、それに出資している株主も利益を得ることができる仕組みになっています。ですから、個人商店の場合と比べて、より多くの人が会社の経営状況に興味を持っていますし、また少しでも詳しく知りたいと思っています。

簿記2級の財務諸表は3級のものと違って、損益計算書と貸借対照表それぞれ、「区分表示」がなされます。それは、財務諸表を見た人に対してより詳しくその会社の状況を知ってもらうためのものです。例えば、損益計算書では純利益を計算しますが、その利益が何から得られたのか、もしくは、利益を得るために会社はどういったことに力を入れているのか、などを投資をしている株主に伝える必要があります。他にも、たまにニュースになる「粉飾(意図的にウソの会計情報を公表すること)」を防ぐうえでもこういったことが有効になります。

それではまず、損益計算書の区分表示から見ていきましょう。

Ⅰ 売上高

Ⅱ 売上原価

Ⅲ 販売費および一般管理費

Ⅳ 営業外収益

Ⅴ 営業外費用

Ⅵ 特別利益

Ⅶ 特別損失

まずは、「売上高」ですが、これは3級でも学習した通り、商品を販売することによって得られた金額です。そして、「売上原価」も3級で学習済みです。販売した商品を仕入れるのにかかった金額ですね。

次に、「販売費及び一般管理費」ですが、これはその会社の本業をしていくのに必要な費用、と考えてください。商品売買をするために販売員に給料を支払ったり、店舗の家賃を支払ったり、などが該当します。ちなみに販売費及び一般管理費は略して「販管費(はんかんひ)」と呼ぶことが多いです。

そして、「営業外収益」は営業外の活動をすることで得られたもうけで、「営業外費用」は営業外の活動によって発生した損失を言います。ここで言う「営業」とは会社の本業のことを言います。本屋さんであれば本を売ること、パン屋さんであればパンを売ることですね。2級で学習する営業外収益、費用は利息の支払い、受け取りや、有価証券の売却などによって発生するものがあります。

最後に、「特別利益」「特別損失」とは普段の会社営業では起こらない収入や損失を言います。例えば、「固定資産売却益」「固定資産売却損」が特別利益、損失に該当しますが、固定資産は何年もの期間にわたって使用する資産ですから、日常的に売ったり買ったりということは通常ありません。他にも、「火災損失」のように、事故や天災によって発生する損失も「特別損失」に該当します。

損益計算書の実際の表示方法ですが、上から下に向かって計算していく形式となっています。一番大きい金額が売上高であり、そこから売上原価を引くことによって「売上総利益(うりあげそうりえき)」を求め、売上総利益から販売費及び一般管理費を引くことで「営業利益」を求めます。そして、営業利益に営業外収益を足し、営業外費用を引くことで「経常利益」を求めます。経常利益に特別利益を足し、特別損失を引くことで「税引前当期純利益」を求めることができます。最後に、税引前当期純利益から税金の金額(法人税、住民税及び事業税)を引くことで当期純利益を求めることになります。まとめると、以下のようになります。

Ⅰ 売上高                   100,000

Ⅱ 売上原価                   60,000

          売上総利益          40,000 

              (100,000 - 60,000)

Ⅲ 販売費および一般管理費            15,000

          営業利益           25,000

               (40,000 - 15,000)

Ⅳ 営業外収益                   5,000

Ⅴ 営業外費用                   4,000

          経常利益           26,000

        (25,000 + 5,000 - 4,000)

Ⅵ 特別利益                    1,000

Ⅶ 特別損失                    1,500

          税引前当期純利益       25,500

        (26,000 + 1,000 - 1,500)

         法人税、住民税及び事業税    10,000

          当期純利益          15,500

               (25,500 - 10,000)

いかがだったでしょうか。これまで3級で学習した損益計算書とだいぶ雰囲気が違うと思われたかもしれません。今すべて覚えようとせず、学習が進むと共にに少しずつ理解していっていただけたらと思います。少し長くなりましたので、貸借対照表については次回説明していきたいと思います!!

財務諸表論⑳(事業分離等に関する会計基準)

(このブログは公認会計士試験の受験を目指されている方たちへ向けて、僕が学習した内容をノート形式で公開することを目的としています。)

「企業結合に関する会計基準」との関係:

「企業結合に関する会計基準」において示されている「投資の継続・非継続」という考え方によって統一的に行われる

分離先企業の会計処理と分離元企業の会計処理の関係:

分離先企業の会計処理が移転する事業に係る資産及び負債の移転直前の適正な帳簿価額を引き継ぐ場合・・・分離元企業の会計処理においては原則として、移転損益は生じない

分離先企業において、パーチェス法により会計処理する場合・・・移転損益を認識するとは限らない

事業分離における分離元企業の会計処理と、100%子会社を被結合企業とする企業結合における当該被結合企業の株主(親会社)の会計処理は整合する。

分離元企業の会計処理

移転(分離)した事業に関する投資が清算されたとみる場合:

あらためて当該受取対価の時価にて投資を行ったものとする

→現金など、移転した事業と明らかに異なる場合には、投資が清算されたとみなされる

移転(分離)した事業に関する投資がそのまま継続しているとみる場合

受け取る資産の取得原価は、移転した事業に係る株主資本相当額に基づいて算定する

→子会社株式や関連会社株式となる分離先企業の株式のみを対価として受け取る場合には、当該株式を通じて、移転した事業に関する事業投資を引き続き行っていると考えられることから、当該事業に関する投資が継続しているとみなされる

事業分離に要した支出額: 発生時の事業年度の費用として処理

受取対価となる財の時価の測定日: 事業分離日の株価を基礎にして算定

受取対価が現金等の財産のみである場合: 

→個別財務諸表上、いずれの場合も移転損益を認識する

分離先企業が子会社・・・共通支配下の取引に該当し、受け取った現金等の財産は移転前に付された適正な帳簿価額により計上する。

分離先企業が関連会社・・・共通支配下の取引に該当せず、投資が清算されたとみなされる。受け取った現金等の財産は、原則として、時価により計上する。

分離先企業が子会社・関連会社以外・・・投資が清算されたとみなされる。受け取った現金等の財産は、原則として、時価により計上する。

→分離元企業の連結財務諸表上、子会社や関連会社を分離先企業として行った事業分離により認識された移転損益は、内部取引から生じた消去すべき損益である。

受取対価が分離先企業の株式のみである場合:

個別財務諸表上の会計処理

分離先企業が子会社となる場合

投資が継続しているとみなされ移転損益を認識しない

事業分離前に分離先企業の株式保有なし・・・受け取った分離先企業の株式(子会社株式)の取得原価は、移転した事業に係る株主資本相当額に基づいて算定

事業分離前に分離先企業の株式保有あり(売買目的、その他、関連会社)・・・追加的に受け取った分離先企業の株式の取得原価は、移転した事業に係る株主資本相当額に基づいて算定

事業分離前に分離先企業の株式保有あり(子会社株式)・・・追加取得した分離先企業の株式(子会社株式)の取得原価は、移転した事業に係る株主資本相当額に基づいて算定

分離先企業が関連会社となる場合(共同支配企業の形成の場合を除く)も上記に同じ

→支配の喪失を投資の清算とは考えない

連結財務諸表上の会計処理

分離先企業が子会社となる場合

事業分離前に分離先企業の株式保有なし・・・ パーチェス法を適用し、分離元企業(親会社)の事業が移転されたとみなされる額と、移転した事業に係る分離元企業(親会社)の持分の減少額との間に生じる差額については、資本剰余金とする。

事業分離前に分離先企業の株式保有あり(売買目的、その他、関連会社)・・・パーチェス法を適用する際、分離先企業に対して投資したとみなされる額は、追加的に受け取った株式の取得原価と事業分離前に有していた株式の支配獲得時(事業分離日)の時価の合計額とし、 当該時価と、その適正な帳簿価額又はその持分法評価額との差額は、当期の段階取得に係る損益として処理する。

当該投資したとみなされる額と、これに対応する分離先企業の事業分離直前の資本との差額をのれん(又は負ののれん)とする

連結財務諸表上、分離元企業(親会社)の事業が移転されたとみなされる額と、移転した事業に係る分離元企業(親会社)の持分の減少額との間に生じる差額については、資本剰余金とする

事業分離前に分離先企業の株式保有あり(子会社株式)・・・ 追加取得により、子会社に係る分離元企業(親会社)の持分の増加額(追加取得持分)と、移転した事業に係る分離元企業(親会社)の持分の減少額との間に生じる差額については、資本剰余金とする

財務諸表論⑲(企業結合に関する会計基準)

(このブログは公認会計士試験の受験を目指されている方たちへ向けて、僕が学習した内容をノート形式で公開することを目的としています。)

企業結合に該当する取引の分類:

企業結合に該当する取引・・・

共通支配下の取引

独立企業間の取引 ‐ 共同支配企業の形成、取得

企業結合に該当しない取引・・・

非支配株主との取引

共通支配下の取引に準じる取引(株式移転による持株会社の設立、新設分割による子会社の設立)

企業結合の会計処理:

・結合当時企業に対する株主の観点

持分が継続・・・投資の清算と再投資は行われておらず、これまでの投資は継続している

持分が非継続・・・投資家はいったん投資を清算し、改めて当該資産及び負債に対して投資を行い、それを取得企業に現物で出資したと考えられる

・資産及び負債の評価(投資原価)→投資原価の回収計算(損益計算の観点)

持分が継続・・・企業結合前の帳簿価額(投資原価=従前の投資額)

→当該投資原価を超えて回収できれば、その超過額が企業にとっての利益である

持分が非継続・・・企業結合時点での時価(新たな投資原価=再投資額)

→当該投資原価を超えて回収できれば、その超過額が企業にとっての利益である

パーチェス法の場合の増加資本の処理:

増加資本は払込資本として処理する→取得企業に限って利益剰余金が引き継がれる

パーチェス法の場合の企業結合前の損益の引継ぎ:

取得企業に限って引き継ぐ

取得企業の決定:

「連結財務諸表に関する会計基準」に従う(原則)

「連結財務諸表に関する会計基準」の考え方によっても取得企業が明確でない場合:

①対価の種類が資産の引き渡し又は負債の引き受けの場合

通常、現金若しくは他の資産の引き渡す又は負債を引き受ける企業(結合企業)が取得企業となる

②対価の種類が株式の場合

通常、当該株式を交付する企業(結合企業)が取得企業となる

ただし、以下の要素を総合的に勘案

・総体としての株主が占める相対的な議決権比率の大きさ

・最も大きな議決権比率を有する株主の存在

・取締役等を選解任できる株主の存在

・取締役会等の構成

・株式の交換条件(株式の時価を超えるプレミアムを支払う場合、通常、当該プレミアムを支払った結合当時企業が取得企業となる)

株式の交換による取得の場合における交付した株式の測定日: 企業結合日

・株式以外の対価は企業結合日に測定される

・承継する資産及び負債とその対価である株式の測定日は、銅市であることが整合的

・合意公表日後において条件が見直される可能性もあり、合意公表日では未だ取得原価は確定していない

→取得の対価となる財の時価は、被取得企業の株主が結合後企業に対する実際の議決権比率と同じ比率を保有するのに必要な数の取得企業株式を、取得企業が交付したものとみなして算定する。

被取得企業が取得企業の関連会社であった場合の会計処理:

連結上、支配を獲得した日における時価で取得原価を算定

→支配を獲得するに至った個々の取引ごとの減価の合計額(持分法適用関連会社と企業結合した場合には、持分法による評価額)との差額は、当期の段階取得に係る損益として処理する

取得に要した支出額の会計処理:

取得原価に含めず、発生時の費用として処理

企業結合に係る特別勘定:

企業結合の条件交渉の過程で、被取得企業に関連して発生する可能性のある将来の費用又は損失が取得の対価に反映されている場合には、企業結合に係る特別勘定として負債計上する

仕掛研究開発の取り扱い:

企業結合日における時価に基づいて資産として計上

→取得した研究開発は、たとえ当該資産が将来の収益に結びつく蓋然性が低くても、取引価格はその蓋然性を織り込んで決められていると考えられる

逆取得における個別財務諸表上の会計処理:

消滅会社が取得企業となる吸収合併・・・存続会社の個別財務諸表上、当該取得企業(消滅会社)の資産及び負債を合併直前の適正な帳簿価額により計上する

現物出資会社又は吸収分割会社が取得企業となる現物出資又は吸収分割(現物出資又は吸収分割による子会社化)・・・移転された事業に対する投資は企業結合の前後で継続している→取得企業の個別財務諸表では、移転した事業に係る株主資本相当額に基づいて、被取得企業株式(子会社株式)の取得原価を算定する

完全子会社が取得企業となる株式交換・・・完全親会社の個別財務諸表では、株式交換直前における株主資本の額に基づいて、取得企業株式(完全子会社株式)の取得原価を算定する

株式移転による共同持株会社の設立が取得となる場合・・・完全親会社の個別財務諸表においては、他の被取得企業株式と同様に被取得企業株式も完全子会社株式として扱われるが、完全親会社の連結財務諸表では、企業結合日においていずれかの完全子会社が取得企業となり、当該取得企業(完全子会社)の資産及び負債が企業結合直前の帳簿価額で受け入れられることになる→完全親会社の個別財務諸表上においても、株式移転直前における取得企業(完全子会社)の適正な帳簿価額による株主資本の額に基づいて、取得企業株式(完全子会社株式)の取得原価を算定する

共同支配企業の形成:

共同支配・・・複数の独立した企業が契約等に基づき、ある企業を共同で支配すること

共同支配企業・・・複数の独立した企業により共同で支配される企業

共同支配投資企業・・・共同支配企業を共同で支配する企業

共同支配企業の形成・・・複数の独立した企業が契約等に基づき、共同支配企業を形成する企業結合

共同支配企業の会計処理:

いずれの企業の株主も他の企業を他の企業を支配したとは認められず、持分の結合にあたる→共同支配企業は、共同支配投資企業から移転する資産及び負債を、移転直前に共同支配投資企業において付されていた適正な帳簿価額により計上する

共同支配投資企業の会計処理:

個別財務諸表上・・・共同支配投資企業が受け取った共同支配企業に対する投資の取得原価は、移転した事業に係る株主資本相当額に基づいて算定する

連結財務諸表上・・・共同支配企業に対する投資について持分法を適用する

共通支配下の取引: 結合当時企業の全てが、企業結合の前後で同一の株主により最終的に支配され、かつ、その支配が一時的ではない場合の企業結合

親会社と子会社の合併及び子会社同士の合併は、共通支配下の取引に含まれる

→企業集団内における企業結合である共通支配下の取引は、親会社の立場からは企業集団内における純資産等の移転取引として内部取引と考えられる

個別F/S上の処理:

共通支配下の取引により企業集団内を移転する資産及び負債・・・原則として、移転直前に付されていた適正な帳簿価額により計上する

→親会社と子会社が企業結合する場合において、子会社の資産及び負債の帳簿価額を連結上修正しているときは、親会社が作成する個別財務諸表においては、連結財務諸表上の金額である修正後の帳簿価額(のれんを含む)により計上する

移転された資産及び負債の差額・・・純資産として処理する

移転された資産及び負債 の対価として交付された株式の取得原価・・・移転された資産及び負債の適正な帳簿価額に基づいて算定する

連結F/S上の処理:

内部取引としてすべて消去する

非支配株主との取引:

連結財務諸表上、「連結財務諸表に関する会計基準」における子会社株式の追加取得及び一部売却等の取り扱いに準じて処理する

財務諸表論⑱(連結キャッシュ・フロー等の作成基準)

(このブログは公認会計士試験の受験を目指されている方たちへ向けて、僕が学習した内容をノート形式で公開することを目的としています。)

資金の範囲:

・現金

・現金同等物・・・容易に換金可能であり、価値の変動について僅少なリスクしか追わない短期投資 (現金同等物として具体的に何を含めるかについては、経営者の判断に委ねられているため、資金の範囲に含めた現金及び現金同等物の内容を会計方針として注記)

キャッシュ・フロー計算書に記載されない取引: 非資金取引及び、現金及び現金同等物相互間の取引

非資金取引・・・

・社債の償還と引き換えによる新株予約権付社債に付された新株予約権の行使

・ファイナンス・リース取引による資産の取得

・株式の発行等による資産の取得又は合併

・現物出資による株式の取得又は資産の交換

現金及び現金同等物相互間の取引 ・・・

・当座預金から普通預金への預け替え

・現金の当座預金への預け入れ

リース取引に係るリース料の表示区分:

借手側の支払いリース料・・・

ファイナンスリース取引、元本返済部分 ‐「財部活動によるキャッシュ・フロー」

ファイナンス・リース取引、利息相当額部分 ‐ 企業が採用した支払利息の表示区分

オペレーティング・リース取引 ‐ 「営業活動によるキャッシュ・フロー」

貸手側の受取リース料・・・

営業損益計算の対象となるリース取引 ‐ 「営業活動によるキャッシュ・フロー」

営業損益計算の対象とならないリース取引、元本返済部分 ‐ 「投資活動によるキャッシュ・フロー」

営業損益計算の対象とならないリース取引、利息相当額部分 ‐ 企業が採用した受取利息の表示区分

デリバティブ取引に係るキャッシュ・フローの表示区分:

特定のリスクを減殺する目的で利用している場合 ‐ 対象となった取引に係るキャッシュ・フローと同一表示区分の同一項目

特定のリスクを減殺する目的以外で利用している場合 ‐ 「投資活動によるキャッシュ・フロー」

資産除去債務のキャッシュ・フロー計算書上の取り扱い:

資産除去債務の履行に係る支出額は「投資活動によるキャッシュ・フロー」に含める(固定資産の取得による支出と同様)

法人税等に係るキャッシュ・フローの表示区分:

「営業活動によるキャッシュ・フロー」の区分に「法人税等の支払額」として一括して記載

利息及び配当金に係るキャッシュ・フローの表示区分:

・受取利息、受取配当金及び支払利息を「営業活動によるキャッシュ・フロー」の区分に表示し、支払配当金は「財務活動によるキャッシュ・フロー」の区分に表示する方法

・受取利息及び受取配当金は「投資活動によるキャッシュ・フロー」の区分に表示し、支払利息及び支払配当金は「財務活動によるキャッシュ・フロー」の区分に表示する方法

連結範囲の変更等に係るキャッシュ・フロー:

・子会社株式の取得または売却による連結範囲の変更

新たに連結子会社とした場合→取得に伴い支出した現金及び現金同等物の額から、連結開始時に当該子会社が保有していた現金及び現金同等物の額を控除した額をもって「投資活動によるキャッシュ・フロー」の区分に記載

連結から除外した場合→譲渡により取得した現金及び現金同等物の額から、連結除外時点の当該子会社の現金及び現金同等物の残高を控除した額をもって「投資活動によるキャッシュ・フロー」の区分に記載

・子会社株式の追加取得または一部売却

連結範囲の変動を伴わない子会社株式の取得または売却に係るキャッシュ・フローについては、非支配株主との取引として「財務活動によるキャッシュ・フロー」の区分に記載

間接法の「営業活動によるキャッシュ・フロー」における「為替差損益」:

間接法を採用した場合における税金等調整前当期純利益の調整項目として加減算される「為替差損益」は、原則として、「営業活動によるキャッシュ・フロー」の小計欄以下の各項目又は「営業活動によるキャッシュ・フロー」以外の各表示区分に記載される取引に係る為替差損益である。

「投資活動によるキャッシュ・フロー」及び「財務活動によるキャッシュ・フロー」の表示方法

原則・・・総額表示

容認・・・期間が短く、かつ回転が速い項目に係るキャッシュ・フロー ‐ 純額表示(総額表示すると、キャッシュ・フローの金額が大きくなり、かえって利用者の判断を誤らせるおそれがある)

例外・・・社債や新株の発行等による資金調達に係るキャッシュ・フロー ‐ 純額表示(発行価額から社債発行費や株式交付費を控除した実質手取額によって表示)

外貨建の現金及び現金同等物に係る為替差損益:

「現金及び現金同等物に係る換算差額」として表示

財務諸表論⑰(包括利益の表示に関する会計基準)

(このブログは公認会計士試験の受験を目指されている方たちへ向けて、僕が学習した内容をノート形式で公開することを目的としています。)

包括利益を表示する目的:

期中に認識された取引及び経済的事象(資本取引を除く。)により生じた純資産の変動を報告するとともに、その他の包括利益の内訳項目をより明瞭に開示すること

→貸借対照表との連携(純資産と包括利益とのクリーン・サープラス関係)を明示することを通じて、財務諸表の理解可能性と比較可能性を高める効果が得られる

包括利益:

ある企業の特定期間の財務諸表において認識された純資産の変動額のうち、当該企業の純資産に対する持分所有者との直接的な取引によらない部分

その他の包括利益:

包括利益のうち当期純利益に含まれない部分

包括利益の計算の表示:

当期純利益にその他の包括利益の内訳項目を加減して包括利益を表示する

その他の包括利益の内訳の開示:

その他有価証券評価差額金、繰延ヘッジ損益、為替換算調整勘定、退職給付に係る調整額等に区分して表示

持分法を適用する被投資会社のその他の包括利益に対する投資会社の持分相当額については、一括して「持分法適用会社に対する持分相当額」として区分表示する

その他の包括利益の内訳項目に係る税効果額の表示:

原則・・・各内訳項目を税効果を控除した後の金額で表示する

容認・・・各内訳項目を税効果を控除する前の金額で表示する

その他の包括利益に関する注記事項:

・税効果の金額

→その他の包括利益の各内訳項目別の税効果の金額を注記する

・組替調整額

→当期純利益を構成する項目のうち、当期又は過去の期間にその他の包括利益に含まれていた部分は、「組替調整額」として、その他の包括利益の内訳項目ごとに注記する

・その他有価証券評価差額金・・・当期に計上された売却損益及び減損損失等、当期純利益に含められた金額による

・繰延ヘッジ損益・・・ヘッジ対象に係る損益が認識されたこと等に伴って当期純利益に含められた金額による

・為替換算調整勘定・・・子会社に対する持分の減少に伴って取り崩されて当期純利益に含められた金額による

・退職給付に係る調整額・・・「退職給付会計基準」による

2計算書方式の利点: 当期純利益と包括利益とが明確に区別され、当期純利益を重視する考え方との親和性が高い

1計算書方式の利点: 一覧性・明瞭性・理解可能性等の観点から優れている

財務諸表論⑯(外貨建取引等会計基準)

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外貨建新株予約権(発行者側)の換算方法:

発行時の為替相場(将来株主資本又は利益に振り替えられる可能性のある仮勘定であり、外貨建金銭債権債務ではない)

外貨建転換社債型新株予約権付社債の換算方法:

・一括法を採用している場合

発行時・・・HR換算

決算時・・・CR換算(換算差額は当期の為替差損益として処理)

新株予約権の行使時・・・権利行使時の為替相場により換算し、資本金又は資本金及び資本準備金に振替 (換算差額は当期の為替差損益として処理)

・区分法を採用している場合

発行時・・・「外貨建社債の対価部分」、「外貨建て新株予約権の対価部分」、共にHR換算

決算時・・・「 外貨建社債の対価部分」はCR換算(換算差額は当期の為替差損益として処理) 、「外貨建て新株予約権」の対価部分はHR換算

新株予約権の行使時・・・「外貨建社債の対価部分」は権利行使時の為替相場により換算し、資本金又は資本金及び資本準備金に振替(換算差額は当期の為替差損益として処理) 、「外貨建て新株予約権の対価部分」 はHR換算

決済に伴う損益の処理: 二取引基準(外貨建取引と代金決済取引とを独立した別個の取引とみなして会計処理を行う考え方)

・発生時から決済時までの為替相場の変動の影響は「財務損益」として処理される(一取引基準の場合は「営業損益」)

・外貨建取引の「発生時」の為替相場により換算した金額で取引価格が確定する(一取引基準の場合は「決済時」)

・為替相場の変動の影響を独立に開示できる(一取引基準の場合、為替相場の変動を考慮に入れ、その最終的な決済額を見込んで取引条件を決定する場合に適する)

為替予約等の会計処理: 

独立処理(原則) 

振当処理(経過的特例)

→キャッシュフロー・ヘッジと共通する考え方に基づく(ヘッジ会計の一形態)

振り当て処理の対象となる外貨建金銭債権債務等:

為替予約等が振り当て処理されることにより、将来のキャッシュ・フローが固定されるものに限られる(外貨建満期保有目的債権)

→外貨建満期保有目的債券以外の外貨建有価証券は、売却時期が未確定であり、時価の変動により受け取る外貨額が変動することから、為替予約等の振当処理は認められない

在外支店の換算: テンポラル法の考え方による(在外支店の財務諸表は個別財務諸表の構成要素となる)

在外子会社等の換算: 決算日レート法の考え方による(在外子会社等の独立事業体としての性格に着目)

在外子会社等ののれんの換算方法: CR換算(当該在外子会社の他の識別可能資産と同様に在外子会社の現地通貨で発生したものと考えられる)

為替換算調整勘定: 株式所有比率に基づき、親会社持分割合と非支配株主持分割合とに区分して処理

→為替換算調整勘定はいまだ連結上の純損益に計上されていないため、すでに連結上の純損益に計上された取得後利益剰余金等とは異なる性格を持つ

持分変動(減少)により連結子会社の支配を喪失した場合:

→為替換算調整勘定のうち持分比率の減少割合相当額は、株式売却損益を構成し連結損益計算書に計上する

持分変動(減少)によっても連結子会社の支配が継続される場合:

→ 為替換算調整勘定のうち持分比率の減少割合相当額 は資本剰余金に振り替え、損益には含めない

財務諸表論⑮(税効果会計に係る会計基準)

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法人税等の性格: 

費用説(現行)・・・資本主体論と整合的(株主との取引によらない法人税等の支払いは費用としての性質を有する)

利益処分説・・・企業体理論と整合的(国や地方公共団体も企業体を組織する利害関係者に含まれ、企業の内部構成員として位置づけられる)

→法人税等は会社の意思決定に基づいて納税額が決定されるものではなく、税法に定められた納税義務に基づいて、強制力を伴って決定される

税効果会計の適用の必要性:

P/L面・・・法人税等調整額が計上されることにより、法人税等を控除する前の当期純利益と法人税等が合理的に対応する

B/S面・・・繰延税金資産又は繰延税金負債が計上されることにより、将来の法人税等の支払額に対する影響が表示される

税効果会計の方法:

繰延法・・・損益の期間貴族の相違に基づく差異(期間差異)について、発生した年度の当該差異に対する税金軽減額又は税金負担額を差異が解消する年度まで貸借対照表上、繰延税金資産又は繰延税金負債として計上する方法

・期間差異が発生した期間に関心を向け、その際の発生期間における損益計算書上、税引前利益と法人税等との対応を図ることを重視

・現行税率を適用

・税効果額は、法人税等の期間配分の結果として時期以降に繰り延べられる項目を意味する

税効果額の修正は行わない

資産負債法(現行)・・・差異が解消されるときに、税金を減額又は増額させる効果がある場合に、当該差異(一時差異)の発生年度にそれに対する繰延税金資産又は繰延税金負債を計上する方法

・一時差異等がその差異解消期間における実際の税金支払額に対してどれだけの影響を有しているのかを見積もった金額を貸借対照表上表示することを重視

・予測税率を適用

・税効果額は、法人税等の前払額(未払額)に相当する項目を意味する

・税効果額の修正を行う

繰延税金資産の回収可能性の判断要件:

以下の要件のいずれかを満たしているかどうかにより判断

・収益力に基づく課税所得の十分性

・タックスプランニングの存在

・将来加算一時差異の十分性

→繰延税金資産については、将来の回収の見込みについて毎期見直しを行わなければならない