今回は、簿記2級における商品売買について学習します。商品売買については3級で学習していますので、その延長ということになります。
まずは復習になりますが、「返品」「値引き」「割戻し」についてです。
「返品」とは、注文したものと違っていたなどの理由から商品を返却することを言います。それに対し、「値引き」は商品に傷があったり、注文した量に足りなかったなどの理由により代金を少なく支払うこと、そして「割戻し」はたくさん買ったことにより、値段を安くしてもらうことを言います。これらは、三つとも同じ仕訳(逆仕訳)をします。
仕訳例を見てみましょう。
「掛けで仕入れた商品のうち、50につき品違いのため返品した」
(借方)買掛金 50 (貸方)仕入 50
「得意先に対し一定量の販売を行ったため、割引50を行い、掛代金と相殺した」
(借方)売上 50 (貸方)売掛金 50
続いて、「割引き」について見ていきましょう。割引とは、掛け取引を行っている相手に対し、掛代金を支払期日よりも早く支払ってもらった場合に代金を安くすることを言います。
例えば、得意先と掛代金を一か月以内に支払う取引をいつも行っているとしましょう。この場合、商品の代金には一か月支払いを猶予するための「利息相当額」が含まれていることが通常です。支払いを待ってあげる分、少し高くしておくよ、ということですね。ですので、もし一か月よりも早く支払ってもらったなら「利息相当額」の分だけ安くする場合があります。それを仕入れる側は「仕入割引(しいれわりびき)」という収益勘定で、販売する側は「売上割引(うりあげわりびき)」という費用勘定で処理することになります。仕入れる側は安く仕入れることができたから「仕入割引」は収益(得をした)、販売する側は安く売らなくてはいけないので「売上割引」は費用(損をした)と覚えると良いでしょう。
ここで、非常に混同しやすいのが前述の「割戻し」と「割引き」の二つです。もう一度確認しますが、割戻しとは多く買ったから安くしてもらったことを意味します。スーパーのお徳用パックをイメージしていただくと良いと思います。それに対し、割引きは商品自体はいつもの取引と全く同じで、ただ代金が早く支払われたので金額を安くしたよ、ということです。
逆仕訳を行う「返品」「値引き」「割戻し」は、それぞれ返品なら商品が違っていた、値引きなら商品にキズがあった、割戻しなら商品をたくさん買ったなど、商品自体に理由あります。しかし「割引き」の場合は支払いが早かったことが理由で行われますので、逆仕訳で仕入や売上を取り消すということをせず、「仕入割引(収益)」もしくは「売上割引(費用)」を計上するということになります。
ちなみに、損益計算書の区分では「仕入割引」は営業外収益、「売上割引」は営業外費用となります。営業(商品売買)以外の理由で発生した収益、費用ということですね。
それでは、「割引き」の仕訳を見ていきましょう。
「先日掛けにより仕入れた商品代金500の支払いにつき、支払日が支払期日の一週間前であったため4%の割引きを受け、現金で支払った」
割引きを受けた金額は500の4%ですので20になります。現金で支払った金額は、500-20で480ですね。
(借方)買掛金 500 (貸方)現金 480
(貸方)仕入割引 20
今度は、販売する側の仕訳です。
「先日掛けで販売した商品代金500につき、支払日が支払期日の一週間前であったため4%の割引きを行い、現金で受け取った」
(借方)現金 480 (貸方)売掛金 500
(借方)売上割引 20
続いて、「商品の期末評価」について見ていきましょう。3級の決算を学習した際に、「売上原価の計算」をするために期末棚卸をする、ということを学ばれたと思います。
2級の商品売買では、期末棚卸をする際、帳簿上の商品の有高と実際の有高がズレていないかを確認する必要があります。つまり、ちゃんと数がそろっているか、全て売れる状態のものであるか、などをチェックしないといけないということです。そして、帳簿と実際の差は「棚卸減耗損(たなおろしげんもうそん)」と「商品評価損」という二つの費用勘定を使って処理していきます。
「棚卸減耗損」とは、帳簿と実際の商品の数が違うことにより発生します。盗難や紛失などにより数が減ってしまった場合などです。帳簿の数量と実際の数量の差に商品の原価を掛けることによって求めることができます。例えば、一つ50で仕入れた商品の数量が帳簿上120個で実際は110個だったとすると、棚卸減耗損の金額は、
@50 × ( 120 - 110 ) = 500
となります。50の商品が10個なくなってしまったということですね。
「商品評価損」とは、商品を原価未満で販売しなければいけない時に発生します。スーパーで賞味期限が間近のお総菜が半額で売られていたり、携帯電話やゲーム機など、古い型のものが売り出し当初よりもかなり安くで売られているようなケースをイメージしていただければと思います。計算方法は、原価と時価(実際に販売できる金額)の差にその商品の実際の数量をかけることによって求めます。ですから、一つ50で仕入れた商品を45でしか販売できない場合で、実際の数量が110個だったとすると、商品評価損の金額は、
( @50 - @ 45 ) × 110 = 550
となります。ちなみに、それぞれの計算方法の覚え方ですが、棚卸減耗損は商品の原価に数量の差をかけるのに対し、商品評価損は商品の原価と時価の差に実際の数量をかけています。つまり、棚卸減耗損を求めるには商品評価損は必要ありませんが、商品評価損を計算するには実際の数量が必要であり、先に棚卸減耗損を求めなくてはならないということです。
「棚卸減耗損」と「商品評価損」は2級商業簿記の決算問題でほぼ必ず出題されますので、正確に覚えるようにしましょう。
それでは、それぞれの仕訳を見ていきましょう。
「決算日に際し、期末棚卸をする。なお、帳簿棚卸高は、数量が120個、原価が50であり、実地棚卸高は、数量が110個、正味売却価額(時価)は45である。期首商品棚卸高は5,000であった。」
必ず、数量の差10個に原価50をかけて棚卸減耗損500を求めてから、原価と時価の差5に実地棚卸数量110をかけて商品評価損550を求めるようにしてください。
なお、期末棚卸を仕訳で表す場合、3級で学習した期首商品を繰越商品から仕入に振替え、期末商品を仕入から繰越商品に振替える仕訳を行います。その際、期末商品として仕訳に使用する金額は実地棚卸高ではなく帳簿棚卸高を用いる点に注意しましょう。
本問における期末帳簿棚卸高は、帳簿棚卸数量120個に原価50をかけて6,000となります。
(借方)仕入 5,000 (貸方)繰越商品 5,000
(借方)繰越商品 6,000 (貸方)仕入 6,000 ←帳簿棚卸高!
(借方)棚卸減耗損 500 (貸方)繰越商品 500
(借方)商品評価損 550 (貸方)繰越商品 550
こちらの仕訳では、借方の繰越商品6,000(帳簿棚卸高)から、貸方の繰越商品500(棚卸減耗損)と550(商品評価損)を差し引くことによって、実地棚卸高4,950が求められるようになっています。
今回は、2級商業簿記最初の仕訳ということで、商品売買に関わる仕訳について見てきました。3級の内容を思い出しながら、しっかりと理解していくようにしていってください。