財務諸表論⑨(棚卸資産の評価に関する会計基準)

(このブログは公認会計士試験の受験を目指されている方たちへ向けて、僕が学習した内容をノート形式で公開することを目的としています。)

 

棚卸資産に関しては、あまり覚えるところは多くないかもしれませんが、従来の取り扱いと現行の違いや、その評価についてP/L,B/Sの視点から正確に説明できる必要があります。取りこぼしのないようにしておきましょう。

 

棚卸資産の評価方法:

・先入先出法

P/L面:保有損益が期間損益に混入してしまい、適切な期間損益計算の観点からは望ましいと言えない

B/S面:貸借対照表価格は最近の再調達原価の水準と近い金額となる

・後入先出法

P/L面:保有損益を期間損益から排除できる

B/S面:貸借対照表価格が最近の再調達原価と大幅に乖離してしまう可能性がある

 

従来の会計処理:

原則:原価法

例外:低価法(時価が取得原価より著しく低下した場合には、回復する見込みがある場合を除き、強制評価減→保守主義)

現行制度上の会計処理:

取得原価をもって貸借対照表価額とし、収益性が低下した場合は取得原価と正味売却価額との差額は当期の費用として処理する

→取得原価基準の下で回収可能性を反映させるように、将来に損失を繰り延べないために行われる

 

トレーディング目的で保有する棚卸資産:

市場価格に基づく価額を貸借対照表価額とし、評価差額は当期の損益として処理する(売買・換金に対して事業遂行上等の制約がなく、市場価格の変動にあたる評価差額が企業にとっての投資活動の成果と考えられる)

 

財務諸表論⑧(固定資産の減損に係る会計基準)

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減損会計は、試験において非常に重要な範囲です。減損損失の認識の判定→割引前将来キャッシュ・フローの見積り→減損損失の測定の順番で理解をしていってください。また、共用資産とのれんの扱いの違いを正確に覚えておく必要があります。

 

減損処理の意義:

遺産の収益性の低下により投資額の回収が見込めなくなった場合に、回収可能性を反映させるように帳簿価額を減額する会計処理

→時価評価ではなく、将来に損失を繰り延べないための帳簿価額の臨時的な減額

減損損失の認識の判定:

事業用資産は金融資産と異なり成果が不確定であり、測定が主観的となるため、減損の存在が相当程度に確実(割引前将来キャッシュ・フローの総額が帳簿価額を下回る)な場合に限って減損損失を認識する

割引前将来キャッシュ・フローの見積期間:

長期にわたる将来キャッシュ・フローの見積は不確実性が高くなるため、経済的残像使用年数か20年のいずれか短い方とする

減損損失の測定:

帳簿価額を回収可能価額(正味売却価額と使用価値のいずれか高い方)まで減額し、当該減少額を減損損失として計上

将来キャッシュ・フローの見積金額:

・最頻値法:生起する可能性の最も高い単一の金額(最頻値)を見積もる方法

・期待値法:生起し得る複数の将来キャッシュ・フローをそれぞれの確立で加重平均した金額(期待値)を見積もる方法

→いずれかの方法による

将来キャッシュ・フローが見積値から乖離するリスク:

減損損失を認識するかどうかの判定では、将来キャッシュ・フローが見積値から乖離するリスクを反映させない(異なる結果が導かれることになるから)

使用価値の算定においては、将来キャッシュ・フローが見積値から乖離するリスクについて、将来キャッシュ・フローの見積りと割引率のいずれかに反映させる

使用価値の算定に際して用いられる割引率:

将来キャッシュ・フローが見積値から乖離するリスクを・・・

将来キャッシュ・フローの見積に反映した場合、貨幣の時間価値だけを反映した無リスクの割引率

割引率に反映した場合、貨幣の時間価値と将来キャッシュ・フローが見積値から乖離するリスクの両方を反映したもの

 

共用資産に係る資産のグルーピング:

原則:より大きな単位でグルーピングを行う

容認:共用資産の帳簿価額を各資産又は資産グループに配分する(一般に共用資産の帳簿価額を合理的な基準で各資産又は資産グループに配分することは困難)

より大きな単位でグルーピングを行う方法を採用した場合の減損損失の測定:

共有資産を含まない各資産又は資産グループにおいて算定された減損損失控除前の帳簿価額に共用資産の帳簿価格を加えた金額を、より大きな単位の回収可能価額まで減額する

減損損失の増加額の配分:

共用資産を加えることによって算定される減損損失の増加額は、原則として共用資産に配分する

(例外)共用資産に配分された減損損失が、共用資産の帳簿価額と正味売却価額の差額を超過することが明らかな場合には、当該超過額を合理的な基準により各資産又は資産グループに配分する

 

のれんに係る資産のグルーピング:

原則:より大きな単位でグルーピングを行う

容認:のれんの帳簿価額を各資産グループに配分する(のれんはそれ自体では独立したキャッシュ・フローを生まない)

より大きな単位でグルーピングを行う方法を採用した場合の減損損失の測定:

のれんを含まない各資産又は資産グループにおいて算定された減損損失控除前の帳簿価額にのれんの帳簿価格を加えた金額を、より大きな単位の回収可能価額まで減額する

減損損失の増加額の配分:

のれんを加えることによって算定される減損損失の増加額は、原則としてのれんに配分する(超過収益力はもはや失われている)

(例外)のれんに配分された減損損失が、のれんの帳簿価額を超過する場合には、当該超過額を合理的な基準により各資産又は資産グループに配分する

 

財務諸表論⑥(退職給付に関する会計基準)

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退職給付会計については、計算、理論、共に覚えることが多いと思います。まずは、個別上の処理を理解したうえで、学習を進められると良いでしょう。また、連結上では、P/L、B/Sそれぞれの視点から理解することが必要となります。

 

退職給付債務の算定方法

発生給付評価方式:

将来の退職給付額を予測し、そのうち当期に発生すると考えられる給付額を算定した上で、それを現時点まで割り引いた額を当期の費用とする方法。

 

退職給付見込み額の見積り

予測給付債務(PBO):

受給権未取得者を含む全従業員について、将来の昇給による給付の増加を見込んで算定した将来退職給付額の割引現在価値。

→現在債務にあたらず、負債の定義を満たさない可能性がある

 

退職給付見込み額のうち期末までに発生していると認められる額の計算

期間定額基準:

全勤務期間で除した額を各期の発生額とする方法

給付算定式基準:

各勤務期間に帰属させた給付に基づき見積もった額を、退職給付見込額の各期の発生額とする方法(勤続年数の増加に伴い、労働サービスが向上するという実態をより表す)

 

年金資産の計上方法

時価評価し、退職給付引当金の計上額の計算にあたって差し引く

 

退職給付費用の算定式

「退職給付費用」=「勤務費用」+「利息費用」-「期待運用収益」±「数理計算上の差異、過去勤務債務に係る当期の費用処理額」

 

個別財務諸表における差異の取り扱い

数理計算上の差異の認識基準

重要性基準:

重要性がなければ差異を認識しない(実務上の負担が軽減)

 

過去勤務費用の意義

退職給付水準の改定等に起因して発生した退職給付債務の増加または減少部分

 

差異の費用処理の開始時期

数理計算上の差異: 原則・・・発生年度  例外・・・発生年度の翌期

過去勤務費用: 発生年度

 

確定給付制度に関する連結財務諸表上の会計処理及び開示

連結貸借対照表における取扱い:

「退職給付に係る負債」=「退職給付債務」-「年金資産」

「退職給付に係る調整累計額」=「未認識数理計算上の差異、未認識過去勤務費用」-「税効果額」

 

連結損益計算書及び連結包括利益計算書における取扱い:

「退職給付費用」=「勤務費用」+「利息費用」-「期待運用収益」±「数理計算上の差異、過去勤務費用に係る当期の費用処理額」

「退職給付に係る強制額」=「未認識数理計算上の差異、未認識過去勤務債務の当期発生額」-「未認識数理計算上の差異、未認識過去勤務費用の当期費用処理額」

 

財務諸表論⑤(ストックオプション等に関する会計基準)

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ストックオプションに関しても、簿記の計算が正確にできることが大事だと思います。新株予約権に関しては、株主資本になる前の段階ですので、どの段階で払込資本に振り替えるのかも正しく理解しておくと良いでしょう。

 

範囲

(1)「従業員等」に対し「ストック・オプション」を付与する取引

(2)「財貨又はサービスの取得」において、「自社株式オプション」を付与する取引

(3)「財貨又はサービスの取得」において、「自社の株式」を付与する取引

 

会計処理

ストック・オプションを対価として取得したサービスは、費用として計上する。

→費用認識の相手勘定は新株予約権とする。

費用計上額:ストック・オプションの公正な評価額のうち、当期に発生したと認められる額(提供されたサービスの価値は信頼性をもって測定することができない)

算定の基準日:付与日現在で算定し、条件変更の場合以外、その後は見直さない。(付与日以後のストック・オプションの公正な評価単価の変動は、サービスの価値とは直接的な関係を有しない)

ストック・オプション数:付与数-権利不確定による失効の見積数

 

権利行使の会計処理

新株を発行する場合:新株予約権として計上した額のうち、当該権利行使に対応する部分を払込資本に振り替える。

自己株式を処分する場合:自己株式の取得原価と、新株予約権の帳簿価額および権利行使に伴う払込金額との差額は自己株式処分差額として処理する

権利不行使による失効の会計処理

新株予約権として計上した額のうち、当該執行に対応する部分を利益として計上する(新株予約権戻入益)

ストック・オプションに係る条件変更の会計処理

公正な評価単価の変動:条件変更日の単価が付与日の単価を上回る場合のみ、追加的に費用計上

ストック・オプション数の変動:変動額を費用計上

費用の合理的な計上期間の変動:新たな残存期間にわたり費用計上

 

財務諸表論④(純資産の部、自己株式、準備金)

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今回は、純資産関連の表示に関する内容になっています。株式会社の会計を理解するうえで、非常に重要な部分です。損益取引か資本取引なのか、払込資本なのかそれによって得られた成果なのか、投資家の興味がどこにあり、何を期待して投資を行うのかという視点から考えると理解が進むと思います。

貸借対照表の純資産の部の表示に関する会計基準

新株予約権

従来の扱い:負債の部に仮勘定として表示(発行者側の新株予約権は権利行使されるまで、その性格が確定しない)

現行制度上の扱い:純資産の部に表示(返済義務のある負債ではない)

 

非支配株主持分

純資産の部に表示(返済義務のある負債ではない)

 

繰延ヘッジ損益

純資産の部に表示(資産性または負債性を有しない)

 

自己株式及び準備金の額の減少等に関する会計基準

自己株式の会計上の性格:資本控除説(自己株式の取得は株主との資本取引であり、会社財産の払い戻しと考える)

会計処理:取得原価で一括して株主資本全体の控除項目とする(まだ消却されたわけではなく、暫定的な状態であることから)

金銭以外の財産を対価として自己株式を取得した場合:自己株式の時価と現物資産の簿価の差額を損益に計上する

現物配当:配当財産の時価をもって繰越利益剰余金を減額し、当該時価と現物資産の簿価の差額は分配損益とする

無償取得の場合:自己株式の数のみの増加として処理(重要性がある場合は注記)

 

自己株式処分差益損の会計処理:その他資本剰余金に計上または減額する(新株の発行と同様の経済的実態を有する)

その他資本剰余金の残高を超える自己株式処分差損が発生した場合の会計処理:その他資本剰余金の負の残高を利益剰余金で補てんする(払込資本の残高が負の値となることはあり得ないから)

 

自己株式の取得、処分及び消却に関する不随費用:損益計算書の営業外費用に財務費用として計上する(不随費用は株主との間の資本取引ではない)

 

資本金及び準備金の額の減少の会計処理:混同が禁止されている(払込資本と得られた成果を区分して表示するため)

→例外:利益剰余金が負の残高のときにその他資本剰余金で補てんする場合

 

財務諸表論③ 討議資料「財務会計の概念フレームワーク」(財務諸表における認識と測定)

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今回は、前回の「財務諸表の構成要素」が財務諸表に計上される要件、そしてその際の金額がどのように決まるか、についてです。「測定」については、ほとんど簿記の計算で学習されるので、ここで暗記する必要はあまりないかもしれません。「認識」については、その制約条件が重要になってきますので、「契約」と「蓋然性」については、言葉だけでもここで覚えていくと良いでしょう。

なお、それぞれの定義については、やや省略したり、変えている部分があります。正確な定義をご覧になりたい方は、各テキストなどをご参照ください。

 

財務諸表における・・・

認識:構成要素(前回の資産や負債、純利益など)を財務諸表に計上すること

測定:貨幣額を割り当てる(金額を決める)こと

 

認識に関する制約条件

契約の一方の履行:少なくとも一方の履行があること

蓋然性:一定水準以上の確からしさで生じると見積もられること(その事象が高い可能性で発生すると考えられる)

 

資産の測定

「取得原価」「市場価格」「割引価値」「入金予定額」などによって金額が決まる

負債の測定

「支払予定額」「割引価値」「市場価格」などによって金額が決まる

 

収益の測定

「獲得した対価」「市場価値の上昇額」などによって測定される

費用の測定

「犠牲にした対価」「市場価値の下落額」などによって測定される

財務諸表論② 討議資料「財務会計の概念フレームワーク」(財務諸表の構成要素)

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今回の内容は、財務諸表(P/LやB/Sなど)に計上される要素となるための要件についてです。それぞれの定義については、まだ丸暗記する必要はないように思います。個別の会計基準を勉強していく上で、資産、負債、における「支配」の概念や、純利益における「リスクからの解放」の概念などがかかわってくるので、その際にまたこちらに立ち戻って学習を進められると良いのではないでしょうか。

なお、それぞれの定義については、やや省略したり、変えている部分があります。正確な定義をご覧になりたい方は、各テキストなどをご参照ください。

 

財務報告の目的による制約

前回の、「財務報告の目的」(投資家が自分で決められる情報の提供)にそぐわない者は財務諸表の構成要素とならない。

代表例→「自己創設のれん」(経営者が自分でその価値を評価してしまっているから)

 

資産:過去の取引または事象の結果として、報告主体が支配している経済的資源

負債:過去の取引または事象の結果として、報告主体が支配している経済的資源を放棄もしくは引き渡す義務、またはその同等物

 

純資産:資産と負債の差額(株主資本とそれ以外)

株主資本:純資産のうち株主に帰属する部分

 

包括利益:特定期間(一年)における純資産の変動額から、株主、子会社の少数株主、新株予約権者との直積的な取引による部分を除いたもの

純利益:期末までに生じた純資産の変動額のうち、その期間中にリスクから解放された投資の成果であって、株主に帰属する部分

→包括利益のうち、当期中にリスクから解放されていない部分については純利益には含まれない

 

収益:期末までに生じた資産の増加や負債の減少に見合う額のうち、投資のリスクから解放された部分

費用:期末までに生じた資産の減少や負債の増加に見合う額のうち、投資のリスクから解放された部分

財務諸表論① 討議資料「財務会計の概念フレームワーク」

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今回の内容は、財務会計の概念フレームワークを学習するうえで、非常に基本的な部分です。理解のポイントは、投資家に安心してお金を出してもらうために様々な工夫がなされているということ。そして、投資家は自分で判断し、納得して投資できなければなりません。そのための財務会計としてのアプローチが記されています。

概念フレームワークの役割は、会計基準の「概念的な基礎」を提供し、将来の会計基準を作るうえでの基本的な指針を提供すること。

財務報告の目的とは、「投資家による企業成果の予測と企業価値の評価に役立つような、企業の財務状況(企業の投資のポジション(ストック)とその成果(フロー)を開示すること)」

→P/Lとか、B/Sを見て、投資家が投資するかしないか自分で決めることができるようにする(企業価値を主体的に見積もるのはあくまで投資家!!)

ディスクロージャー制度における投資家、経営者、監査人の役割

投資家:自己責任で企業の将来をストックとフローの視点から評価すること

経営者:情報の開示(事実に限る)

監査人:経営者が作成した財務情報の監査

会計情報の・・・

主たる目的:情報を提供すること(こっちがメイン)

副次的な利用:利害調整機能(分配可能利益の計算、課税所得の計算)

会計情報の質的特性

一番大事なのが「意思決定有用性」(さっきから何度も出てきている、投資家の(意思決定の)役に立つということ)

それを支える下位の特性が「意思決定との関連性」と「信頼性」

意思決定との関連性:経営者の提供する会計情報が、投資家の意思決定に積極的な影響を与えようとするもの。(経営者はうちの企業についてこのように見てるよ、ということを投資家にも知らせる)

→「情報価値の存在」と「情報ニーズの充足」の二つによって支えられている

信頼性:信頼できる情報であること

→「中立性」「検証可能性」「表現の忠実性」によって支えられる

一番大事な「意思決定有用性」は「意思決定との関連性」と「信頼性」によって成り立つが、この二つはトレードオフの関係にある場合がある。(経営者の主観による情報が、必ずしも信頼できるものとは限らない)

一般的制約となる特性

内的整合性:個別の会計基準が会計基準を支える基本的な考え方と矛盾しないこと。

比較可能性:同一企業の会計情報を、時系列、もしくは企業間で比較することができること。