収益、費用の見越し、繰延べについて知ろう(簿記3級、決算)

「収益、費用の見越し、繰延べ」については、簿記3級の決算においても、特に難しく、学習に苦労される方も多いと思います。

整理して理解する必要がありますので、長くなりますが、この記事を読んでいただければ、検定試験でも得点を稼げるようになるはずです。

決算について知ろう(簿記3級)

収益と費用について

これまでに学習した収益、費用

これまで見てきた「収益」「費用」にはどういったものがあったでしょうか。

商品売買編の「売上」「仕入」や、お金の貸し借りによって発生する「受取利息」「支払利息」、そして固定資産の販売によって発生する「固定資産売却益」「固定資産売却損」などについて学習されたと思います。

では、それらの収益や費用が発生するタイミングはどうだったでしょう。

例えば、仕入でしたら商品が手元に届いたときに、売上でしたら商品を発送するときに発生すると言えるでしょう。

また、 固定資産売却益と固定資産売却損 については、固定資産を売却したタイミングで発生します。

仕入や売上などの収益、費用のように、どのタイミングで発生したか明確であるものならば、それらが発生した日に仕訳をすればいいわけですが、一部の収益、費用についてはそうはいきません。

なぜなら、利息や家賃のように、時間の流れとともに発生する収益、費用があるからです。

時間の流れとともに発生する収益、費用

例えば、家賃について考えてみましょう。

通常、部屋を借りるとすると、一ケ月いくら、というように契約をすると思います。

ですから、当然一ケ月住んだなら一か月分の、二か月住んだなら二月分の家賃が発生します。

同じようにお金の貸し借りについても、半年借りたなら半年分の、一年借りたなら一年分の利息が発生します。

つまり、これらの「収益」「費用」は、何かを受け取った日、もしくは何かを渡した日に発生するのではなく、時間の流れとともに、その期間に応じて発生するということです。

収益、費用の決算整理仕訳について

これから見ていく決算整理仕訳は、利息や家賃のように時間の流れとともに発生する収益と費用についてです。

家賃を前払いした場合

例えば、事務所として部屋を新しく借りた場合について考えてみましょう。

契約では毎年一年分を先払いすることになっています。

もし、今年の9月1日に契約を開始したとしたら、12月31日の決算日時点ではその部屋は四か月しか利用していないことになります。

しかし、契約上すでに一年分を支払っていますね?

この場合、支払家賃の金額として損益計算書に計上される金額は四か月分でないといけません。

つまり、一年分を支払っているため「支払家賃」として一年分を計上していますが、実際にその部屋を利用した期間は四か月ですので、八か月分余分に計上してしまっていることになります。

ですから、余分に計上した費用については決算整理で調整しなくてはいけません。

利息が未払いの場合

次に、利息を後払いで支払う契約でお金を借りた場合を考えてみましょう。

10月1日に契約し、一年後に返済とともに利息を支払うことになっているとすると、12月31日の決算日時点で、すでに三か月お金を借りているのに利息の支払いはまだ行われていません。

しかし、お金の支払いはまだでも、すでに三か月の期間お金を借りているので、「支払利息」の金額は三か月分を損益計算書に計上しなくてはなりません。

ですから決算整理にて、計上されていない三か月分の費用を新たに計上する必要があります。

収益、費用の見越し、繰延べ

このように、「時間の流れとともに発生する収益、費用」については、支払うタイミングが「先払い」か「後払い」かによって、決算整理で調整する必要があります。

「先払い」の場合、過ぎた期間に対して多く払って(受け取って)いるため余分に計上した期間について減額しなくてはいけません。

これを「収益、費用の繰延べ」と言います。

一方で、「後払い」の場合、計上すべき期間の分もまだ払って(受け取って)いません。

よって、足りない(計上できていない)分を増額する必要があります。これを「収益、費用の見越し」と言います。

問題を解くうえでまず最初に確認すべきことは、契約してからどれだけの期間が経過したかです。

利息でしたらどれだけの期間お金を借りているか、家賃でしたらどれだけの期間部屋を借りているか、です。

それに対し、その期間分よりも多く払って(受け取って)いるならば「繰延べ」、少なく払って(受け取って)いるならば「見越し」ということになります。

四つの仕訳パターン

今回の仕訳は四つのパターンに分けられます。

  1. 収益の繰延べ
  2. 費用の繰延べ
  3. 収益の見越し
  4. 費用の見越し

それぞれのパターンごとに使用する勘定科目が異なります。

収益の繰延べ

まず、一つ目の収益の繰延べでは「前受(収益)」という勘定科目を使います。

繰延べのパターンは先に受け取っているわけですから「前受」が頭につくということですね。

費用の繰延べ

次に、二つ目の費用の繰延べでは「前払(費用)」という勘定科目を使います。

一つ目と同様に繰延べのパターンは先に払っているので「前払」がつくということになります。

収益の見越し

三つ目の収益の見越しでは「未収(収益)」という勘定科目を使います。

見越しのパターンではまだ受け取っていないので「未収」が頭につきます。

費用の見越し

四つ目の費用の見越しでは「未払(費用)」という勘定科目を使います。

三つ目と同様に見越しのパターンはまだ払っていないので「未払」がつくということですね。

仕訳パターンまとめ

ちなみに簿記の五要素では、「前払(費用)」「未収(収益)」が資産、「前受(収益)」「未払(費用)」 が負債です。

ですから仕訳の仕方をまとめると、

  借方 貸方
1.収益の繰延べ   「前受(収益)」
2.費用の繰延べ 「前払(費用)」  
3.収益の見越し 「未収(収益)」  
4.費用の見越し   「未払(費用)」

このようになります。

いきなり暗記するのは難しいと思いますので、実際の仕訳を見ながら理解していってください。

仕訳例①(収益の繰延べ)

まずは、収益の繰延べの仕訳です。

「当社は9月1日、取引先に現金10,000を貸し付けた。一年分の利息120は契約時に受け取っているため決算日12月31日に際し、必要な決算整理をする。」

まず、契約日から経過した期間は9月1日から12月31日の四か月間です。

しかし、一年分を受け取っているため、八か月分が余分ということになります。よって、

120 ÷ 12(一年分) × 8 = 80

この金額だけ繰延べる決算整理仕訳が必要になります。

借方 貸方
受取利息 80  前受利息 80

取引の八要素で確認しましょう。

簿記の取引について理解しよう!

(借方要素) (貸方要素)
資産の増加 資産の減少
負債の減少 負債の増加
純資産の減少 純資産の増加
費用の発生 収益の発生

前述のとおり、前受利息は負債ですので貸方、と覚えておいてください。

借方は余分に計上した収益が消滅します。

仕訳例②(費用の繰延べ)

次は、費用の繰延べの仕訳です。

「当社は10月1日に事務所用に部屋を借り入れた。なお、一年分の家賃1,200は契約時に前払いしているため決算日12月31日に際し、必要な決算整理をする。」

まず、契約日から経過した期間は10月1日から12月31日の三か月間です。

しかし、一年分を支払っているので、九か月分が余分ということになります。よって、

1,200 ÷ 12 × 9 = 900

この金額だけ繰延べる決算整理仕訳が必要になります。

借方 貸方
前払家賃 900 支払家賃 900

前述のとおり、前払家賃は資産ですので借方、と覚えておいてください。

貸方は余分に計上した費用が消滅します。

仕訳例③(収益の見越し)

次は、収益の見越しの仕訳です。

「当社は9月1日、取引先に現金10,000を貸し付けた。一年分の利息120は契約終了時に受け取る予定である。決算日12月31日に際し、必要な決算整理をする。」

契約日から経過した期間は9月1日から12月31日の四か月間です。

しかし、 まだ利息は受け取っていません。

したがって四か月分の受取利息を計上する必要があります。

120 ÷ 12 × 4 = 40

借方 貸方
未払利息 40 受取利息 40

前述のとおり、未収利息は資産ですので借方、と覚えてください。

貸方は未計上の受取利息が発生します。

仕訳例③(費用の見越し)

最後は、費用の見越しの仕訳です。

「当社は10月1日に事務所用に部屋を借り入れた。なお、一年分の家賃1,200は契約終了時に支払う予定である。決算日12月31日に際し、必要な決算整理をする。」

契約日から経過した期間は10月1日から12月31日の三か月間です。 しかし、まだ家賃は払っていません。したがって三か月分の支払家賃を計上する必要があります。

1,200 ÷ 12 × 3 = 300

借方 貸方
支払家賃 300  未払家賃 300

前述のとおり、未払家賃は負債ですので貸方、と覚えてください。貸方は未計上の支払家賃が発生します。 

まとめ

今回は、収益、費用の見越し、繰延べについて説明させていただきました。

計算がややこしいと思われたかもしれませんが、四つのパターンに分けて理解すれば、決して難しくありません。

しっかり復習して、理解するようにしてくださいね!

簿記3級を独学で合格するには

減価償却費について知ろう(簿記3級、決算)

減価償却費は簿記の学習において、非常に重要です。

ですが、初めて簿記を学ばれる方にとってはイメージしにくいものでもあります。

今回は、減価償却費の計算と仕訳について説明します。

読んでいただければ、減価償却費の計算と仕訳が理解できるようになるはずです!

決算について知ろう(簿記3級)

減価償却とは

減価償却は、「固定資産」について行う手続きです。

ですから、もし固定資産についての理解が不安な方は、そちらを復習してみてくださいね。

固定資産について知ろう(簿記3級)

「減価償却(げんかしょうきゃく)」とは、建物や備品などの使用とともに価値が減少する固定資産について、決算日に減少した価値分を費用として計上する手続きになります。

減価償却の計算に必要なキーワード

減価償却を考えるうえで必要なキーワードがいくつかありますので、先にそちらを確認しておきましょう。

  • 取得原価
  • 帳簿価額
  • 残存価額
  • 耐用年数
  • 既償却額(減価償却累計額)

取得原価

まず、「取得原価」は以前も確認しましたが、その固定資産をいくらで購入したかを意味する金額です。

帳簿価格

次に、帳簿価額とは帳簿上の価値、つまり取得原価からすでに減ってしまった価値を差し引くことによって求めることができます。

残存価格

残存価額とはその固定資産を使い終わったときに残る価値を言います。

残存価額がない場合(ゼロとして計算する)もありますが、問題で出される場合は10%で計算することが多いです。

耐用年数

耐用年数は、その固定資産を何年使用することができるかを意味します。

備品でしたら5年から10年、建物でしたら20年、30年以上の場合もあります。

既償却額(減価償却累計額)

最後に、既償却額(減価償却累計額)とは、すでに減ってしまった固定資産の価値を意味します。これはその固定資産をどの程度の期間使用したかによって決まります。

計算例

例えば、取得原価が5,000の備品について考えてみましょう。

残存価額10%とすると、その備品を使い終わったときに残る価値は、

5,000 × 10% = 500

ですので、使用期間で減価償却する金額の合計は、

5,000 - 500 = 4,500

となります。

この備品の耐用年数が5年とすると、一年分の減価償却費は、

4,500 ÷ 5 = 900

となります。

仮に、すでに2年間使用しているとしたら、 既償却額(減価償却累計額) は、

900 × 2 = 1,800

ですので、帳簿価額は、

5,000 - 1,800 = 3,200

となります。

直接法と間接法

減価償却については、記帳方法が「直接法(ちょくせつほう)」「間接法(かんせつほう)」の二つあります。

決算整理仕訳をした時、どちらも借方には「減価償却費」という費用勘定がくるのですが、「直接法」の場合、貸方にはその固定資産を記入することでその固定資産の残高を直接減額します。

一方で「間接法」の場合は貸方に「減価償却累計額(げんかしょうきゃくるいけいがく)」という資産のマイナス勘定を計上することで、間接的にその固定資産の価値を減らします。

ですので、「減価償却累計額」勘定は間接法の場合しか使用しません。

ちなみに、3級の試験では間接法で出題されることがほとんどです。

仕訳例①(直接法)

では、「直接法」と「間接法」それぞれの仕訳について見ていきましょう。

まずは直接法です。

「決算に際し、5,000で2年前に取得した備品について減価償却費を計上する。なお、残存価額は取得原価の10%、耐用年数は5年で計算する。当店では減価償却について直接法で記帳している。」

5,000 × 90% ÷ 5年 = 900

この90%とは、取得原価から残存価額10%を除いた金額を求めるために使用しています。

借方 貸方
減価償却費 900 備品 100

直接法ですので、貸方は備品となります。

取引の八要素では、資産の減少ですね。

簿記の取引について理解しよう!

仕訳例②(間接法)

次は間接法の仕訳です。

「決算に際し、5,000で2年前に取得した備品について減価償却費を計上する。なお、残存価額は取得原価の10%、耐用年数は5年で計算する。当店では減価償却について間接法で記帳している。」

5,000 × 90% ÷ 5年 = 900

借方 貸方
減価償却費 900 減価償却累計額 100

間接法の場合、貸方が減価償却累計額という資産のマイナス勘定になっていることを確認してください。

仕訳例③(期中取得の固定資産)

では、最後に期中に取得した固定資産の減価償却方法について見ていきましょう。

期中に取得した場合、その期における使用期間は一年未満となります。

したがって、月割計算をする必要があります。

月割計算とは、使用した月数分の減価償却費を求めるための計算方法で、12か月で割り、使用した月数をかけることによって計算します。

例えば、一年分の減価償却費が900で、使用した月数が4か月なら、その期の減価償却費は、

900 ÷ 12か月 × 4か月 = 300

となります。では、実際の仕訳を見ていきましょう。

「決算に際し、5,000で当期の9月1日に取得した備品について減価償却費を計上する。なお、残存価額は取得原価の10%、耐用年数は5年で計算する。決算日は12月31日であり、当店では減価償却について間接法で記帳している。」

当期における使用期間は、9月1日~ 12月31日の4か月ですので、減価償却費は、

5,000 × 90% ÷ 5年 = 900

900 ÷ 12か月 × 4か月 = 300

となります。間接法によっていることに注意しましょう。

借方 貸方
減価償却費 300 減価償却累計額 300

まとめ

今回は、減価償却費について説明させていただきました。

慣れるまでは戸惑うかもしれませんが、計算のイメージがつかめれば、必ず得点できるようになるはずです。

頑張って、繰り返し復習するようにしてくださいね!

簿記3級を独学で合格するには

決算について知ろう(簿記3級)

簿記3級の検定試験対策で、やはり一番苦労されるのが「決算」についての学習だと思います。

検定試験でも配点が大きいので、取りこぼしのないようにしたいところです。

ですが、聞きなれない言葉や、馴染みのない処理が多いので、なかなかスムーズに理解が進まないかもしれません。

この記事では、簿記3級における決算の全体像について解説します。

読んでいただければ、決算の学習がやりやすくなるはずです!

決算とは?

これまで学習されてきたのは、商品売買など「日常の取引」についてだったと思います。

日常の取引とは、日々、会社やお店を営業していく上で必要な記帳のことです。

「決算」の仕訳はそれらとは違い、日常的にはあまり目にしないものになります。

「決算」とは、通常一年である「会計期間(かいけいきかん)」の締めくくりとして、経営成績や財政状態を知るために、帳簿を締め切ることを言います。

その一年間で、どのくらいのもうけが得られたのか、現在どのくらいの財産を持っているのか、などを知るために様々な処理をする必要があります。

これまで見てきた「日常の取引」の仕訳と違い、決算に際して「決算整理(けっさんせいり)」を行う必要があるのですが、そのために行う仕訳を「決算整理仕訳(けっさんせいりしわけ)」と呼びます。

簿記3級の決算整理仕訳について

3級で出題される「決算整理仕訳」は以下の6つです。

現金過不足の整理

現金過不足の整理とは(簿記3級、決算)

「現金過不足」とは、その名の通り、現金が多い、少ない、ことを意味します。

決算日において、帳簿上「現金過不足」があった場合、現金の残高を訂正するための仕訳をする必要があります。

消耗品の整理

消耗品の整理とは(簿記3級、決算)

「消耗品」とは、鉛筆やコピー用紙などの事務用品やトイレットペーパーなど、言葉通りオフィスなどで日々消耗する品のことをいいます。

決算日において、期中に購入した消耗品のうち、未使用のものどれだけあるか調べ、使用済みのものは「消耗品費(しょうもうひんひ)」という費用勘定として、未使用のものは「消耗品(しょうもうひん)」という資産勘定として整理しなくてはいけません。

売上原価の計算

売上原価の計算について知ろう(簿記3級、決算)

「売上原価(うりあげげんか)」とは、売上に対する原価を意味します

つまり、販売したものについての金額を売上原価として計算する必要があります。

ですから、決算整理仕訳として、一年間に仕入れた商品のうち、販売したものは売上原価に、売れ残った在庫は繰越商品に振替えなくてはいけません

貸倒引当金の計上

貸倒引当金について知ろう(簿記3級、決算)

「貸倒れ」とは、貸していたお金や支払ってもらうはずの代金などを回収できなくなることを意味します。

そして、「貸倒引当金」とは、決算日における売上債権の残高に対し、来年一年間でどのくらい貸倒れるか見積もった金額を言います。

ですから決算整理仕訳では、見積もった貸倒引当金を計上する必要があります。

減価償却費の計上

減価償却費について知ろう(簿記3級、決算)

「減価償却(げんかしょうきゃく)」とは、建物や備品などの使用とともに価値が減少する固定資産について、決算日に減少した価値分を費用として計上する手続きになります。

決算整理仕訳として、一年間に減少した固定資産の価値を減価償却費として計上する必要があります。

収益、費用の見越し、繰延べ

収益、費用の見越し、繰延べについて知ろう(簿記3級、決算)

収益、費用の中には、「支払家賃」や「支払利息」など、○○か月でいくら、と時間の経過によって発生するものがあります。

このように、「時間の流れとともに発生する収益、費用」については、支払うタイミングが「先払い」か「後払い」かによって、決算整理で調整する必要があります。

これを「収益、費用の見越し」と言います。

まとめ

今回は、簿記3級で学習する「決算」の内容について説明しました。

あまり、見慣れないものばかりかもしれません。

これらの仕訳は、商品の仕入れや売上げのように、日常的に行うには適さないものばかりですので、一年間の締めくくりとして、一年分の処理を行うことになります。

「決算整理仕訳」に関しては、3級の試験でほぼすべてが出題されますので、検定試験までには必ずすべての仕訳について理解する必要があります。

ただ、覚えることは6つしかありませんので、時間をかけて学んでいただければ、必ず点数を稼げるはずです!

簿記3級を独学で合格するには