当座預金について知ろう(簿記3級)

簿記3級の学習において重要なものに、「預金」があります。

しかし、慣れないうちは仕訳でミスしてしまうことも多いのではないでしょうか。

今回は、簿記3級で登場する預金、特に「当座預金」について説明していきます。

簿記3級で学習する「預金」とは?

簿記3級で学習する預金は「普通預金(ふつうよきん)」と「当座預金(とうざよきん)」の二つです。

主に出てくるのは「当座預金」の方ですが、あまり耳にしたことがない方も多いと思います。

「当座預金」とは、商売をされる人が使う預金で、無利息であることが特徴です。

皆さんが日常的に利用される預金と同じで、「預入れ」や「引き出し」をすることができますが、それ以外に「小切手」を使うことによって、便利に取引を行うことができます。

「小切手」を使って取引を行う時は、商品を購入する側が小切手に金額を記入して相手に「振出し」ます。

「小切手」を受け取った側は、それを取引銀行に持っていくことで現金に換えることができるという仕組みですね。

仕訳例①(代金を支払う側)

では、実際の仕訳を見ていきましょう。

まずは、小切手を「振出し」た側の仕訳です。

「A商店は、商品100の仕入れに際し、B商店に全額を小切手を振出して支払った

A商店が小切手を振出した側で、B商店が受け取った側です。

ここで、この問題の主語が「A商店」となっていますからA商店の視点で仕訳を行うこととなります。

まず、商品を仕入れていますから、借方が仕入ですね。

そして、小切手を振出して支払った、ということは、その代金分だけA商店の当座預金残高から引き出されることとなりますので、A商店の当座預金が減額されます。

借方 貸方
仕入 100 当座預金 100

取引の八要素で確認していきましょう。

簿記の取引について理解しよう!

(借方要素) (貸方要素)
資産の増加 資産の減少
負債の減少 負債の増加
純資産の減少 純資産の増加
費用の発生 収益の発生

借方は、商品売買の仕訳では毎回使う仕入ですから費用の発生ですね。

貸方は、と言いますと「当座預金」勘定は現金や売掛金と同じ「資産」です。

ですから貸方にあることで、資産の減少となります。

仕訳例②(代金を受け取る側)

続いて、小切手を受け取った側の仕訳を見ていきましょう。

「B商店は、商品100を販売し、A商店から小切手の振出しを受けた

今度は、「B商店」が主語となっていますので、小切手を受け取った側の視点から仕訳をしていくことになります。

商品を販売しているので、貸方は売上となります。

ここで注意していただきたいのは、他人(B商店から見たA商店)が振出した小切手は、簿記上では「現金」として取り扱われるということです。

これを「通貨代用証券(つうかだいしょうしょうけん)」と呼びます。

考え方としては、受け取った小切手は銀行に持っていきさえすれば、いつでも現金に換えることができるので、わざわざ別の勘定科目を使う必要はありません、ということです。

もう一度確認しておきますが、小切手を振出した側(仕入側)は当座預金を減額して、小切手を受け取った側(売上側)は現金を増加させることになりますので、間違えないようにしましょう。

ですから仕訳は、

借方 貸方
現金 100 売上 100

皆さんが最初に学習する、現金売上の仕訳と同じですね。

商品売買について知ろう(簿記3級)

取引の八要素で確認しておきます。

(借方要素) (貸方要素)
資産の増加 資産の減少
負債の減少 負債の増加
純資産の減少 純資産の増加
費用の発生 収益の発生

貸方は売上ですから、収益の発生、借方がは現金なので、資産の増加となります。

仕訳例③(代金を受け取る側の例外)

最後に、もう一つだけ仕訳を見ておきます。

それは、小切手を受け取った側の仕訳なのですが、簿記では次のような問題が出ることがあります。

「B商店は、商品100を販売し、A商店から小切手の振出しを受け、それを直ちに当座預金に預け入れた

一見、先ほどと同じ取引ですが、最後の部分だけが違います。

「直ちに当座預金に預け入れた」とありますので、この場合、当座預金を増加させる仕訳をします。

借方 貸方
当座預金 100 売上 100

借方が現金ではなく、当座預金となっています。取引の八要素で確認しておくと、

(借方要素) (貸方要素)
資産の増加 資産の減少
負債の減少 負債の増加
純資産の減少 純資産の増加
費用の発生 収益の発生

貸方が売上ですので、収益の発生、借方は当座預金ですから、資産の増加になります。

ここで、借方がなぜ現金ではなく当座預金となるか、不思議に思われるかもしれません。

本来であれば、一度、現金を増額する仕訳を行い、そして、次に現金を当座預金に預け入れる仕訳をするべきなのです。

しかし、「直ちに」とありますので、一つにまとめられる仕訳を二つに分けるのは手間ですから、この場合現金ではなく、直接当座預金を増加させる仕訳をします。

このように、簿記では一見同じような問題でも、一言加わることによって答えが異なる場合があります。

そこでミスをしないためには、しっかり理解することと、問題をじっくり読むことです。焦らず、一つ一つ、問題と向き合っていきましょう。

まとめ

今回は、簿記3級で学習する「預金」について説明させていただきました。

決して難しくはありませんが、商品売買の仕訳の基本となりますので、しっかり復習するようにしてくださいね!

簿記の学習を始めるにあたって、まず知っておくべきこと

簿記2級 工業簿記② 材料費 後編

前回は、材料の購入と材料副費の予定配賦の仕訳について見てきました。

今回も引き続き、材料費の計算について学習していきます。

まずは、「実際消費価格(じっさいしょうひかかく)」の計算方法についてです。実際消費価格とは、一か月間にどれだけの材料を消費したか、を意味しますが、前回もお伝えした通り、材料の購入金額と数量は毎回違いますし、また当月に購入した材料をすべて消費するわけではないことから、計算方法によって結果が異なってきます。

実際消費価格を計算するうえで考えていただきたいのは、月初(一か月間の初め)にどれだけ材料があり、月末(一か月間の終わり)にどれだけ材料が残ったか、です。月初の材料有高と当月購入高(一か月間に購入した材料)を合計し、一か月間に消費した材料を差し引くと月末の材料有高を求めることができます。

月初有高 + 当月購入高 - 当月消費高 = 月末有高

なお、この式については以下のように表すこともできます。

月初有高 + 当月購入高 - 月末有高 = 当月消費高

これについては、「平均法(へいきんほう)」と「先入先出法(さきいれさきだしほう)」の二つの計算方法によって行います。3級の商品有高帳で、「先入先出法」と「移動平均法」について学習したのを覚えていらっしゃるでしょうか。ここで学習する計算方法も、基本的な考え方はそれと同じです。

まず、平均法ですが、これは材料の「月初有高」と「当月購入高」によって平均単価を求める方法になります。ですから、材料の月初有高が20個で単価が@100円、当月購入高が100個で単価が130円とします。もし、一か月間に90個の材料を消費したとすると、

月初有高は、

@100 × 20 = 2,000

当月購入高は、

@130 × 100 = 13,000

となり、合計金額が15,000円ですので、平均単価は

15,000 ÷ (100 + 20) = @125

となります。よって、当月消費価格は、

@125 × 90 = 11,250

となり、月末有高は、

15,000 - 11,250 = 3,750

もしくは、月末材料の数量が、月初20個と当月購入100個の合計120個から消費数量90個を差し引いて30個となりますので、

@125 × 30 = 3,750

となります。まとめると、月の初めに2,000円分の材料があり、13,000円分買ってきて11,250円分使ったので3,750円分残ったということです。

次に、先入先出法とは、「月初有高」がすべて「当月消費高」に含まれる、という前提で考える計算方法になります。先ほどの平均法ですと、月初有高と当月消費高の単価が平均することで混ざっていますね? しかし、先入先出法の場合、月初有高の金額がそのまま当月消費高となりますので、当月購入高の単価が月末有高の単価となります。

イメージとしては、液体のようなものを材料として使っている工場だとすると、製造過程で先月購入したものと当月購入したものが混ざっていると思います。ですので、それぞれ購入した時期によって単価を分ける必要性に欠けるため、「平均法」によって計算するケースが多いでしょう。一方で、木材を材料として使っている工場であれば、月末有高として残っている材料は、おそらく月の終盤で購入したものであり、単価いくらで購入したかはおそらく簡単に分かるはずです。ですので、その場合は「先入先出法」を用いて計算するのではないでしょうか。

先入先出法の計算について、先ほどと同じ数値例で見ていきましょう。 材料の月初有高が20個で単価が@100円、当月購入高が100個で単価が130円とします。もし、一か月間に90個の材料を消費したとすると、

月初有高は、

@100 × 20 = 2,000

当月購入高は、

@130 × 100 = 13,000

であり、当月購入高の単価は月末有高の単価と等しいので、月末有高は、 数量が、月初20個と当月購入100個の合計120個から消費数量90個を差し引いて30個となりますので、

@130 × 30 = 3,900

となります。よって、当月消費高は、

2,000 + 13,000 - 3,900 = 11,100

となります。また、当月購入分100個のうち、月末に残ったのは30個ですので、当月購入し当月消費した材料は70個となります。この70個の単価は@130円ですので、その金額は、

@130 × 70 = 9,100

となります。そして、月初材料はすべて消費した(当月消費高に含まれる)と考えますので、当月消費高は、

2,000(月初有高) + 9,100 = 11,100

このように求めることもできます。まとめると、月の初めに2,000円分の材料があり、13,000円分買ってきて11,100円分使ったので3,900円分残ったということになります。

次は、「予定消費単価」を使った仕訳について見ていきたいと思います。

前回、材料副費の予定配賦の仕訳について学習しましたが、今回は材料の消費単価そのものを予定単価で行う計算方法です。これについても、前回と同じように「予定」と「実際」にはズレが生じますので、この差異を会計年度末に売上原価に振り替えます。

材料費の消費の仕訳についてですが、これは材料費に限らず「直接費」と「間接費」で分けて考えます。直接費は「仕掛品(しかかりひん)」勘定に振り替え、間接費は「製造間接費(せいぞうかんせつひ)」勘定に振り替えます。この二つの勘定科目は2級工業簿記を学習するうえで非常に重要ですので、ぜひここで覚えておいてください。

原価計算の基礎で学習した、「直接費」と「間接費」の違いについて思い出してみてください。

直接費とは、どの製品にどれだけかかったか明らかな費用のことで、間接費とは、それが明らかでない、複数の製品にまとめてかかる費用のことでしたね。例えば、家具を製造している工場なら、木材などの原料が机にどれだけ使われて、いすにどれだけ使われるか、などははっきりと把握することができます。ですので、この原料の消費は直接費となります。しかし、それらの原料を加工する機械は一台でいくつもの製品の製造に使用しているとすると、その機械を動かすのにかかった電力は目に見えるものではないので、どの製品にどの程度利用したか明らかではありません。ですので、この電力の消費は間接費となります。

したがって、工業簿記の仕訳では、直接費は仕掛品勘定に振り替えることで直接製品に関連付け、間接費は製造間接費勘定に振り替え、そこから配賦計算(はいふけいさん)を行うことで間接的に製品に関連付けるということを行います。

もう少し単純に言うと、わかるものは先に製品に振り分けておいて、わからないものは一度まとめておいて、後で製品に配分するということです。この計算方法については後に「個別原価計算」を学習する際に詳しく説明していきたいと思います。

少し話がそれましたが、材料費の消費の仕訳について確認していきたいと思います。直接費は「仕掛品」勘定へ、間接費は「製造間接費」勘定へ振り替える、というところに注意して見ていってください。

「当工場の原料の予定消費単価は一個当たり@100円である。当月において、50個を直接材料として消費し、20個を間接材料として消費した。」

当月の直接材料費は、

@100 × 50 = 5,000

で、間接材料費は、

@100 × 20 = 2,000

となります。

(借方)仕掛品   5,000 (貸方)材料 7,000

(借方)製造間接費 2,000

「原料の実際消費額は7,200円であったので、予定消費額と実際消費額との差額を材料消費価格差異勘定へ振り替えた」

前回の材料副費差異と同じように、実際の方が予定よりも大きい金額ならば「不利差異(借方差異)」、実際の方が予定よりも小さい金額ならば「有利差異(貸方差異)」となります。今回は、実際消費額の方が200円多くかかっていますので、不利差異です。

(借方)材料消費価格差異 200 (貸方)材料 200

「会計年度末に、材料消費価格差異について、売上原価に振り替えた」

(借方)売上原価 200 (貸方)材料消費価格差異 200

今回は、少し長くなりましたが、材料消費価格の計算と、予定消費単価を使った仕訳について見てきました。まだ、工業簿記の仕訳や原価計算になれていない方はなかなか理解がスムーズにいかないかもしれませんが、今回お伝えした内容は、2級工業簿記の全体の考え方に通ずる部分でもありますので、ぜひ何度も復習していただいて、今後の学習につなげていただければと思います。

次回は、労務費について説明していきたいと思います。頑張りましょう!

簿記2級 工業簿記② 材料費 前編

今回は「材料費」について学習していきます。前回の原価計算の基礎で「形態別分類」が材料費、労務費、経費の三つに分かれるということを説明いたしました。

「材料費」とは材料を購入した際に発生する費用です。材料には、パンを製造するなら小麦、自動車を製造するなら鉄、などのように製品のもとになる「原料」や、それ以外に燃料や接着剤などの「補助材料」、そしてドライバーやハンマーなどの工具も含まれます。

前回、「製品との関連による分類」で、「製造直接費」と「製造間接費」に分けることができると説明しましたが、材料費も「直接材料費」と「間接材料費」に分けることができます。材料費のほとんどが直接材料費と考えてよいのですが、先ほど挙げた補助材料や工具のように間接材料も存在します。

材料費の計算は、簿記3級で学習した「仕入原価」の計算方法と同じように、「購入代価(こうにゅうだいか)」(材料を購入するのにかかった金額)と「材料副費(ざいりょうふくひ)」(材料を購入するのに付随してかかった費用)を合計することによって求めます。ですから、一個当たり50円の材料を10個購入し、その際に引き取り運賃を20円支払ったとすると、材料費の金額は、

50 × 10 + 20 = 520

となります。一個当たりの材料費は、

520 ÷ 10 =52

@52円ということになります。

この材料副費についてですが、「予定配賦(よていはいふ)」する場合があります。予定配賦とは、単位当たりの原価の金額を会計年度期首に決めておいて、それを使って毎月の原価を計算することを言います。そうして計算された原価を「予定原価(よていげんか)」といいます。予定原価に対し、実際にかかった費用をもとに計算された原価を「実際原価(じっさいげんか)」といいます。

なぜ、このような手続きをとるのでしょうか? 例えば、材料を購入する際、毎回引き取り運賃がかかると仮定しましょう。運賃の金額は購入する量や時期などによって毎回変動します。よって、一か月間でどれだけの材料を購入したことにより、どれだけ運賃を支払ったかを計算することは手間であり、時間がかかってしまいます。しかし、材料一個購入するのにかかる運賃をあらかじめ予定しておくとしたらどうでしょう。そうすると、一個当たりの運賃に購入した数量をかけることで、一か月間の材料副費を簡単に求めることができます。

原価計算はコスト管理の目的から、計算の迅速性が求められます。一か月間の材料費を計算するのに数か月かかってしまっては、毎月のコスト管理に役立てることができません。よって、「予定原価」を使うことによってより早い段階でその月のコストを計算しようとしているのです。

しかし、実際に支払った金額が予定していた金額と同じであることはあり得ません。ですので、「実際原価」と「予定原価」の間にズレが生じます。このズレを「差異」と呼びます。材料副費を予定配賦することによって生じた差異を「材料副費差異(ざいりょうふくひさい)」といいます。そして、実際原価のほうが予定原価よりも大きかった場合の差異を「不利差異(借方差異)」といい、その逆で予定原価のほうが実際原価よりも大きかった場合の差異を「有利差異(貸方差異)」といいます。予定していたよりも多く支払ったなら「有利」、予定していたよりも少なく済んだなら「不利」ということですね。

この借方差異と貸方差異について、私は、借方は費用だから余分に費用がかかった→不利差異、貸方は収益だから費用が少なく済んだ→有利差異、というように覚えていました。

そして、各月に発生した差異については会計年度末に売上原価に「賦課(ふか)」します。なぜなら、予定原価を使っていると毎月差異が発生しますが、これについてはそのままにしておくことはできないので、一年分のズレをまとめて売上原価に含めてしまう、ということです。

なお、「予定原価」については材料費のみではなく、「労務費」「経費」の計算においても登場するので、ぜひここでしっかり押さえておくようにしてください。

それでは、材料費の計算の一連の流れを見ていきましょう。

「材料を掛けで購入し、材料の購入代価3,000円の5%を材料副費として予定配賦した」

材料費の金額は、購入代価3,000と材料副費150(=3,000×5%)の合計3,150となります。

(借方)材料 3,150 (貸方)買掛金 3,000

             (貸方)材料副費  150

「当月の材料副費の実際発生額200円を現金で支払った」

(借方)材料副費 200 (貸方)現金 200

「材料副費の予定配賦額と実際発生額の差額を材料副費差異勘定へ振り替えた」

実際発生額200の方が予定配賦額150よりも大きいので「不利差異(借方差異)」となります。借方差異ということで、材料副費差異勘定が借方側にきます。

(借方)材料副費差異 50 (貸方)材料副費 50

「会計年度末に、材料副費差異を売上原価勘定に振替えた」

(借方)売上原価   50 (貸方)材料副費差異 50

最後に、先ほどの材料の購入の仕訳を、「予定配賦」していなかった場合で見ておきましょう。

「 材料3,000円を掛けで購入し、材料副費として引き取り運賃150を現金で支払った」

(借方)材料 3,150 (貸方)買掛金 3,000

             (貸方)現金    150

今回は、材料の購入と材料副費の予定配賦の仕訳について見てきました。少し長くなりましたので、続きは次回にしたいと思います!!

簿記2級 商業簿記③ 商品売買

今回は、簿記2級における商品売買について学習します。商品売買については3級で学習していますので、その延長ということになります。

まずは復習になりますが、「返品」「値引き」「割戻し」についてです。

「返品」とは、注文したものと違っていたなどの理由から商品を返却することを言います。それに対し、「値引き」は商品に傷があったり、注文した量に足りなかったなどの理由により代金を少なく支払うこと、そして「割戻し」はたくさん買ったことにより、値段を安くしてもらうことを言います。これらは、三つとも同じ仕訳(逆仕訳)をします。

仕訳例を見てみましょう。

「掛けで仕入れた商品のうち、50につき品違いのため返品した」

(借方)買掛金 50 (貸方)仕入 50

「得意先に対し一定量の販売を行ったため、割引50を行い、掛代金と相殺した」

(借方)売上 50 (貸方)売掛金 50

続いて、「割引き」について見ていきましょう。割引とは、掛け取引を行っている相手に対し、掛代金を支払期日よりも早く支払ってもらった場合に代金を安くすることを言います。

例えば、得意先と掛代金を一か月以内に支払う取引をいつも行っているとしましょう。この場合、商品の代金には一か月支払いを猶予するための「利息相当額」が含まれていることが通常です。支払いを待ってあげる分、少し高くしておくよ、ということですね。ですので、もし一か月よりも早く支払ってもらったなら「利息相当額」の分だけ安くする場合があります。それを仕入れる側は「仕入割引(しいれわりびき)」という収益勘定で、販売する側は「売上割引(うりあげわりびき)」という費用勘定で処理することになります。仕入れる側は安く仕入れることができたから「仕入割引」は収益(得をした)、販売する側は安く売らなくてはいけないので「売上割引」は費用(損をした)と覚えると良いでしょう。

ここで、非常に混同しやすいのが前述の「割戻し」と「割引き」の二つです。もう一度確認しますが、割戻しとは多く買ったから安くしてもらったことを意味します。スーパーのお徳用パックをイメージしていただくと良いと思います。それに対し、割引きは商品自体はいつもの取引と全く同じで、ただ代金が早く支払われたので金額を安くしたよ、ということです。

逆仕訳を行う「返品」「値引き」「割戻し」は、それぞれ返品なら商品が違っていた、値引きなら商品にキズがあった、割戻しなら商品をたくさん買ったなど、商品自体に理由あります。しかし「割引き」の場合は支払いが早かったことが理由で行われますので、逆仕訳で仕入や売上を取り消すということをせず、「仕入割引(収益)」もしくは「売上割引(費用)」を計上するということになります。

ちなみに、損益計算書の区分では「仕入割引」は営業外収益、「売上割引」は営業外費用となります。営業(商品売買)以外の理由で発生した収益、費用ということですね。

それでは、「割引き」の仕訳を見ていきましょう。

「先日掛けにより仕入れた商品代金500の支払いにつき、支払日が支払期日の一週間前であったため4%の割引きを受け、現金で支払った」

割引きを受けた金額は500の4%ですので20になります。現金で支払った金額は、500-20で480ですね。

(借方)買掛金 500 (貸方)現金  480

            (貸方)仕入割引 20

今度は、販売する側の仕訳です。

「先日掛けで販売した商品代金500につき、支払日が支払期日の一週間前であったため4%の割引きを行い、現金で受け取った」

(借方)現金  480 (貸方)売掛金 500

(借方)売上割引 20

続いて、「商品の期末評価」について見ていきましょう。3級の決算を学習した際に、「売上原価の計算」をするために期末棚卸をする、ということを学ばれたと思います。

2級の商品売買では、期末棚卸をする際、帳簿上の商品の有高と実際の有高がズレていないかを確認する必要があります。つまり、ちゃんと数がそろっているか、全て売れる状態のものであるか、などをチェックしないといけないということです。そして、帳簿と実際の差は「棚卸減耗損(たなおろしげんもうそん)」と「商品評価損」という二つの費用勘定を使って処理していきます。

「棚卸減耗損」とは、帳簿と実際の商品の数が違うことにより発生します。盗難や紛失などにより数が減ってしまった場合などです。帳簿の数量と実際の数量の差に商品の原価を掛けることによって求めることができます。例えば、一つ50で仕入れた商品の数量が帳簿上120個で実際は110個だったとすると、棚卸減耗損の金額は、

@50 × ( 120 - 110 ) = 500

となります。50の商品が10個なくなってしまったということですね。

「商品評価損」とは、商品を原価未満で販売しなければいけない時に発生します。スーパーで賞味期限が間近のお総菜が半額で売られていたり、携帯電話やゲーム機など、古い型のものが売り出し当初よりもかなり安くで売られているようなケースをイメージしていただければと思います。計算方法は、原価と時価(実際に販売できる金額)の差にその商品の実際の数量をかけることによって求めます。ですから、一つ50で仕入れた商品を45でしか販売できない場合で、実際の数量が110個だったとすると、商品評価損の金額は、

( @50 - @ 45 ) × 110 = 550

となります。ちなみに、それぞれの計算方法の覚え方ですが、棚卸減耗損は商品の原価に数量の差をかけるのに対し、商品評価損は商品の原価と時価の差に実際の数量をかけています。つまり、棚卸減耗損を求めるには商品評価損は必要ありませんが、商品評価損を計算するには実際の数量が必要であり、先に棚卸減耗損を求めなくてはならないということです。

「棚卸減耗損」と「商品評価損」は2級商業簿記の決算問題でほぼ必ず出題されますので、正確に覚えるようにしましょう。

それでは、それぞれの仕訳を見ていきましょう。

「決算日に際し、期末棚卸をする。なお、帳簿棚卸高は、数量が120個、原価が50であり、実地棚卸高は、数量が110個、正味売却価額(時価)は45である。期首商品棚卸高は5,000であった。」

必ず、数量の差10個に原価50をかけて棚卸減耗損500を求めてから、原価と時価の差5に実地棚卸数量110をかけて商品評価損550を求めるようにしてください。

なお、期末棚卸を仕訳で表す場合、3級で学習した期首商品を繰越商品から仕入に振替え、期末商品を仕入から繰越商品に振替える仕訳を行います。その際、期末商品として仕訳に使用する金額は実地棚卸高ではなく帳簿棚卸高を用いる点に注意しましょう。

本問における期末帳簿棚卸高は、帳簿棚卸数量120個に原価50をかけて6,000となります。

(借方)仕入 5,000   (貸方)繰越商品 5,000

(借方)繰越商品 6,000 (貸方)仕入 6,000 ←帳簿棚卸高!

(借方)棚卸減耗損 500  (貸方)繰越商品 500

(借方)商品評価損 550  (貸方)繰越商品 550

こちらの仕訳では、借方の繰越商品6,000(帳簿棚卸高)から、貸方の繰越商品500(棚卸減耗損)と550(商品評価損)を差し引くことによって、実地棚卸高4,950が求められるようになっています。

今回は、2級商業簿記最初の仕訳ということで、商品売買に関わる仕訳について見てきました。3級の内容を思い出しながら、しっかりと理解していくようにしていってください。

簿記2級 工業簿記① 原価計算の基礎

今回から、簿記2級の工業簿記について学習していきます。工業簿記は、2級から新たに追加される内容ですので、慣れるまでは商業簿記との違いに少し戸惑うことがあるかもしれません。

工業簿記は2級の試験の100点満点のうち40点を占めます。割合的には商業簿記の60点のほうが多いのですが、最近の試験では商業簿記の内容がとても難しい問題が出題されることが多く、いかに工業簿記で高得点をとれるかが合否を分けることも少なくありません。ですので、ぜひ工業簿記を得意になっていただき、2級合格に大きなアドバンテージを持てるようになっていただけたら嬉しく思います。

さて、これまで3級で学習してきた「商業簿記」とは、商品を仕入れてから販売することを前提としていました。それに対し、これから学習する「工業簿記」とは、仕入れたものをそのまま販売するのではなく、材料を加工し製造した製品を販売することを目的とした記帳になります。ですので、工業簿記では製品を製造するのにかかった原価を計算する必要があります。これを「原価計算」といいます。

原価計算とは、製品を製造するうえで必要な材料やそれを加工するのにかかった費用を計算し、工業簿記の記帳に必要な製品一つずつの原価を求めることを目的としていますが、通常一か月単位で行われます。これを「原価計算期間」といいます。なぜ、一か月単位で行うかというと、製品を製造するのにかかる原価は毎月変わりますので、そのほうがより安く製品を製造するためのコスト管理に役立てることができるからです。

それでは、次は「製造原価の分類」について見ていきましょう。製造原価とは製品を製造するのにかかった原価のことですが、いくつかの方法で分類することができます。

まずは、何にかかった原価なのか、によっての分類です。これを「形態別分類」と呼び、三つに分けることができます。

・材料費

・労務費

・経費

「材料費」とは、製品を製造するうえで必要な材料を購入することによって発生する原価です。一般に「原価」というと、これを思い浮かべる人が多いかもしれません。次に、「労務費」とは、製品を製造する工員等に支払った人件費のことを言います。工員さん以外にも、工場の監督や工場で勤務する事務員さんに支払う給料も含まれます。最後に、「経費」とは、材料費、労務費以外の全てを指します。例えば水道代、光熱費、など工場でかかる費用が含まれます。

次に、「製品との関連による分類」です。材料費のように、ある製品を製造するのに直接的にかかった原価か、それとも光熱費のように工場全体でかかった原価なのか、によって分けることができます。

・製造直接費

・製造間接費

この二つは単に「直接費」「間接費」と呼ぶ場合もあります。「製造直接費」とは、前述の通りある製品を製造するのに直接的にかかった原価であり、その製品を製造するのにどれだけの減価がかかったか個別に計算することができます。一方で、「製造間接費」は光熱費のように工場全体でかかった原価のように、一つ一つの製品にどの程度の原価がかかったのか明確ではありません。ですので、これら二つの分類によって原価計算の方法が異なってくることになります。

最後は、「操業度との関連における分類」です。「操業度」とは、生産設備の利用度を意味します。ややこしければ「生産量」と置き換えていただいてもここでは結構です。つまり、生産すればするほどかかる原価か、それとも生産量にかかわらず一定量発生する原価か、による分類になります。

・変動費

・固定費

「変動費」は材料費のように生産量に比例して発生する原価を言います。一方で、「固定費」は工場機械の減価償却費のように生産量にかかわらず発生する原価のことです。もしあなたが店舗を借りて飲食店を経営しているとしたら、食材などの材料費は変動費、店舗の家賃や光熱費は固定費となります。

これらの分類は別々に覚えるとあまり効率的ではないかもしれません。例えば、「材料費」はほとんどの場合、「製造直接費」であり「変動費」ですが、「労務費」の場合、パートタイムで特定の作業を任されている方のように「製造直接費」であり「変動費」となる場合もあれば、工場全体を監督する方の給料であれば、「製造間接費」であり「固定費」となる場合もあります。ですので、ここではおおまかな言葉の意味だけ知っておいていただいて、学習が進むとともに理解を深めていただければと思います。

最後に、2級で学習する原価計算方法について説明したいと思います。これは、大きく「個別原価計算」と「総合原価計算」の二つに分けることができます。個別原価計算はオーダーメイドで製造される製品のように、製品一つ一つが別々の仕様で製造する場合の計算方法です。それに対し、総合原価計算は同じ規格の製品を大量に生産する場合の計算方法になります。コンビニのおにぎりやパンなどをイメージしていただければ結構です。こちらについても後日より詳しく説明していきたいと思います。

今回は、「原価計算の基礎」ということで、原価計算に必要な知識について説明させていただきました。次回からは一つ一つの原価についてより詳しく見ていきたいと思いますので、頑張りましょう!

簿記2級 商業簿記② 損益計算書と貸借対照表 後編

今回も前回に引き続き、簿記2級商業簿記の導入ということで、貸借対照表について説明していきたいと思います。前回は、損益計算書について説明しました。

前回、簿記3級で個人商店の簿記を学習したのに対し、2級では株式会社を前提とした記帳を学習します、ということをお伝えしました。よって、損益計算書は売上高、売上原価や販売費及び一般管理費といった区分に分けて表示する、といったことについて説明いたしましたが、貸借対照表も3級で学習したものよりもより詳しく表示するため、「区分表示」がなされます。復習になりますが、貸借対照表の借方は資産、そして貸方は負債と純資産に分かれます。ですので、「区分表示」がなされる場合はそれぞれ、資産、負債、純資産の中で区分されるといった形になります。

それでは、見ていきましょう。

資産の部                負債の部

Ⅰ 流動資産              Ⅰ 流動負債

Ⅱ 固定資産              Ⅱ 固定負債

 ・有形固定資産            純資産の部

 ・無形固定資産            Ⅰ 株主資本  

 ・投資その他の資産          Ⅱ 評価・換算差額等

まずは、資産の部です。資産の部は、「流動資産」と「固定資産」に大きく分かれます。「流動」と「固定」の違いは後ほど詳しく説明します。そして、固定資産の中には、「有形固定資産」「無形固定資産」そして「投資その他の資産」の三つがあります。

「有形固定資産」は3級でも学習した「土地」「建物」「備品」等が該当します。「無形固定資産」は、形のない権利等が該当します。2級で学習する無形固定資産には、企業が合併などにより取得する「のれん」があります。「投資その他の資産」は会社が本業目的以外の投資のために保有する資産等が該当します。例えば、定期預金など、長い期間をかけて運用する「長期性預金」や他の会社に対し影響力を行使する目的で保有する「関係会社株式」などがあります。具体的な勘定科目はここで覚える必要はないので、それぞれの区分について何となくイメージを持っておいてください。

続いて、負債の部ですが、こちらも資産の部と同様に「流動負債」と「固定負債」に大きく分かれます。流動負債は、商品売買に伴って発生する「買掛金」や「支払手形」、固定負債は数年間お金を借りることを目的とした「長期借入金」が該当します。

最後に純資産の部は、「株主資本」と「評価・換算差額等」に分かれます。「株主資本」とは、会社の出資者である株主に帰属する資本のことを言い、株主が出資した「元手」に該当する「資本金」や「資本剰余金」と、元手を使って企業が生み出した利益である「果実」に該当する「利益剰余金」に分かれます。

この「元手」と「果実」という考え方については深追いする必要はありませんが、会社を果物がなる「木」に例えて、木を植えたのが株主だとすると、会社の経営者が水をやるなどして育てることによって得られたもうけが「果実」というイメージになります。「評価・換算差額等」は純資産の部のうち株主資本以外の項目を言います。そのうち2級で学習するのは、有価証券の時価が変動することにより発生する「その他有価証券評価差額金」のみです。

さて、さきほど「流動資産」「固定資産」などといった言葉が出てきましたが、資産の部、負債の部の「流動」「固定」を分類する基準は二つあります。それは「正常営業循環基準」と「一年基準(ワン・イヤー・ルール)」というものです。「正常営業循環基準」とは、言葉はややこしそうですが、その意味は「営業(会社が商品を売ったり買ったりすること)」に伴って発生する資産や負債は「流動資産」に該当する、ということです。

例えば、会社が「商品」を掛けで仕入れると「買掛金」が発生します。そして仕入れた商品を掛けで販売すると「売掛金」が発生し、その売掛金を回収すると「現金」を取得します。また、現金で回収しない場合「約束手形」を使用する場合もあるでしょうし、手形の代金は「当座預金」に振り込まれます。これらのサイクルの中に登場する資産、負債は全て流動資産、流動負債ということになります。ですから、仮に土地や自動車などを売買することを本業とする会社があったとしたら、それらの資産は「商品」として保有しているわけなので固定資産ではなく流動資産に分類されます。しかし、もし家電を販売することを本業としている会社が営業用に自動車を持っていたとしたら、それは「車両運搬具」として固定資産に分類されるということです。この違いは仕訳問題でも出題されることがあるので注意しましょう。

続いて、「一年基準(ワン・イヤー・ルール)」についてですが、これは3級でも少し触れていると思いますが、一年間を超えて保有することを目的とした資産、負債は「固定資産」「固定負債」に該当するという基準です。ですから、耐用年数が数年から数十年の「備品」や「建物」は固定資産に分類されますし、数年間借りることを目的とした「長期借入金」は固定負債に分類されます。ただし、注意しなければならないのは、「一年基準」は「正常営業循環基準」に該当しない資産、負債に適用されるということです。ですから、仮に一年を超えて保有する資産であっても、それが「商品」として販売することを目的としているなら固定資産には分類されません。

前回に続き、二回にわたって簿記2級商業簿記の導入として損益計算書と貸借対照表について見てきました。概念的な話が多く、イメージしづらいところもあったかもしれません。次回から実際の仕訳について学習していきますので、ぜひ一つ一つ理解を深めていっていただけたらと思います。頑張りましょう!

簿記2級 商業簿記① 損益計算書と貸借対照表 前編

今回から、簿記2級の独学サポートとして、商業簿記と工業簿記の内容について投稿していきます。まずは、商業簿記の第一回ということで、簿記2級における財務諸表について説明させていただきます。なお、こちらの投稿では、簿記3級を合格された、もしくは勉強がほぼ完了している方に向けての内容となりますので、ご了承ください。

簿記2級では、株式会社を前提とした記帳を学習します。これまでの簿記3級では、個人商店を前提としていたため、それよりも少し複雑になります。株式会社とは、規模の大きいものから小さいものまで様々ですが、株主が会社に出資をすることで成立する会社のことを言います。つまり、会社が儲かることによって、それに出資している株主も利益を得ることができる仕組みになっています。ですから、個人商店の場合と比べて、より多くの人が会社の経営状況に興味を持っていますし、また少しでも詳しく知りたいと思っています。

簿記2級の財務諸表は3級のものと違って、損益計算書と貸借対照表それぞれ、「区分表示」がなされます。それは、財務諸表を見た人に対してより詳しくその会社の状況を知ってもらうためのものです。例えば、損益計算書では純利益を計算しますが、その利益が何から得られたのか、もしくは、利益を得るために会社はどういったことに力を入れているのか、などを投資をしている株主に伝える必要があります。他にも、たまにニュースになる「粉飾(意図的にウソの会計情報を公表すること)」を防ぐうえでもこういったことが有効になります。

それではまず、損益計算書の区分表示から見ていきましょう。

Ⅰ 売上高

Ⅱ 売上原価

Ⅲ 販売費および一般管理費

Ⅳ 営業外収益

Ⅴ 営業外費用

Ⅵ 特別利益

Ⅶ 特別損失

まずは、「売上高」ですが、これは3級でも学習した通り、商品を販売することによって得られた金額です。そして、「売上原価」も3級で学習済みです。販売した商品を仕入れるのにかかった金額ですね。

次に、「販売費及び一般管理費」ですが、これはその会社の本業をしていくのに必要な費用、と考えてください。商品売買をするために販売員に給料を支払ったり、店舗の家賃を支払ったり、などが該当します。ちなみに販売費及び一般管理費は略して「販管費(はんかんひ)」と呼ぶことが多いです。

そして、「営業外収益」は営業外の活動をすることで得られたもうけで、「営業外費用」は営業外の活動によって発生した損失を言います。ここで言う「営業」とは会社の本業のことを言います。本屋さんであれば本を売ること、パン屋さんであればパンを売ることですね。2級で学習する営業外収益、費用は利息の支払い、受け取りや、有価証券の売却などによって発生するものがあります。

最後に、「特別利益」「特別損失」とは普段の会社営業では起こらない収入や損失を言います。例えば、「固定資産売却益」「固定資産売却損」が特別利益、損失に該当しますが、固定資産は何年もの期間にわたって使用する資産ですから、日常的に売ったり買ったりということは通常ありません。他にも、「火災損失」のように、事故や天災によって発生する損失も「特別損失」に該当します。

損益計算書の実際の表示方法ですが、上から下に向かって計算していく形式となっています。一番大きい金額が売上高であり、そこから売上原価を引くことによって「売上総利益(うりあげそうりえき)」を求め、売上総利益から販売費及び一般管理費を引くことで「営業利益」を求めます。そして、営業利益に営業外収益を足し、営業外費用を引くことで「経常利益」を求めます。経常利益に特別利益を足し、特別損失を引くことで「税引前当期純利益」を求めることができます。最後に、税引前当期純利益から税金の金額(法人税、住民税及び事業税)を引くことで当期純利益を求めることになります。まとめると、以下のようになります。

Ⅰ 売上高                   100,000

Ⅱ 売上原価                   60,000

          売上総利益          40,000 

              (100,000 - 60,000)

Ⅲ 販売費および一般管理費            15,000

          営業利益           25,000

               (40,000 - 15,000)

Ⅳ 営業外収益                   5,000

Ⅴ 営業外費用                   4,000

          経常利益           26,000

        (25,000 + 5,000 - 4,000)

Ⅵ 特別利益                    1,000

Ⅶ 特別損失                    1,500

          税引前当期純利益       25,500

        (26,000 + 1,000 - 1,500)

         法人税、住民税及び事業税    10,000

          当期純利益          15,500

               (25,500 - 10,000)

いかがだったでしょうか。これまで3級で学習した損益計算書とだいぶ雰囲気が違うと思われたかもしれません。今すべて覚えようとせず、学習が進むと共にに少しずつ理解していっていただけたらと思います。少し長くなりましたので、貸借対照表については次回説明していきたいと思います!!

財務諸表論⑳(事業分離等に関する会計基準)

(このブログは公認会計士試験の受験を目指されている方たちへ向けて、僕が学習した内容をノート形式で公開することを目的としています。)

「企業結合に関する会計基準」との関係:

「企業結合に関する会計基準」において示されている「投資の継続・非継続」という考え方によって統一的に行われる

分離先企業の会計処理と分離元企業の会計処理の関係:

分離先企業の会計処理が移転する事業に係る資産及び負債の移転直前の適正な帳簿価額を引き継ぐ場合・・・分離元企業の会計処理においては原則として、移転損益は生じない

分離先企業において、パーチェス法により会計処理する場合・・・移転損益を認識するとは限らない

事業分離における分離元企業の会計処理と、100%子会社を被結合企業とする企業結合における当該被結合企業の株主(親会社)の会計処理は整合する。

分離元企業の会計処理

移転(分離)した事業に関する投資が清算されたとみる場合:

あらためて当該受取対価の時価にて投資を行ったものとする

→現金など、移転した事業と明らかに異なる場合には、投資が清算されたとみなされる

移転(分離)した事業に関する投資がそのまま継続しているとみる場合

受け取る資産の取得原価は、移転した事業に係る株主資本相当額に基づいて算定する

→子会社株式や関連会社株式となる分離先企業の株式のみを対価として受け取る場合には、当該株式を通じて、移転した事業に関する事業投資を引き続き行っていると考えられることから、当該事業に関する投資が継続しているとみなされる

事業分離に要した支出額: 発生時の事業年度の費用として処理

受取対価となる財の時価の測定日: 事業分離日の株価を基礎にして算定

受取対価が現金等の財産のみである場合: 

→個別財務諸表上、いずれの場合も移転損益を認識する

分離先企業が子会社・・・共通支配下の取引に該当し、受け取った現金等の財産は移転前に付された適正な帳簿価額により計上する。

分離先企業が関連会社・・・共通支配下の取引に該当せず、投資が清算されたとみなされる。受け取った現金等の財産は、原則として、時価により計上する。

分離先企業が子会社・関連会社以外・・・投資が清算されたとみなされる。受け取った現金等の財産は、原則として、時価により計上する。

→分離元企業の連結財務諸表上、子会社や関連会社を分離先企業として行った事業分離により認識された移転損益は、内部取引から生じた消去すべき損益である。

受取対価が分離先企業の株式のみである場合:

個別財務諸表上の会計処理

分離先企業が子会社となる場合

投資が継続しているとみなされ移転損益を認識しない

事業分離前に分離先企業の株式保有なし・・・受け取った分離先企業の株式(子会社株式)の取得原価は、移転した事業に係る株主資本相当額に基づいて算定

事業分離前に分離先企業の株式保有あり(売買目的、その他、関連会社)・・・追加的に受け取った分離先企業の株式の取得原価は、移転した事業に係る株主資本相当額に基づいて算定

事業分離前に分離先企業の株式保有あり(子会社株式)・・・追加取得した分離先企業の株式(子会社株式)の取得原価は、移転した事業に係る株主資本相当額に基づいて算定

分離先企業が関連会社となる場合(共同支配企業の形成の場合を除く)も上記に同じ

→支配の喪失を投資の清算とは考えない

連結財務諸表上の会計処理

分離先企業が子会社となる場合

事業分離前に分離先企業の株式保有なし・・・ パーチェス法を適用し、分離元企業(親会社)の事業が移転されたとみなされる額と、移転した事業に係る分離元企業(親会社)の持分の減少額との間に生じる差額については、資本剰余金とする。

事業分離前に分離先企業の株式保有あり(売買目的、その他、関連会社)・・・パーチェス法を適用する際、分離先企業に対して投資したとみなされる額は、追加的に受け取った株式の取得原価と事業分離前に有していた株式の支配獲得時(事業分離日)の時価の合計額とし、 当該時価と、その適正な帳簿価額又はその持分法評価額との差額は、当期の段階取得に係る損益として処理する。

当該投資したとみなされる額と、これに対応する分離先企業の事業分離直前の資本との差額をのれん(又は負ののれん)とする

連結財務諸表上、分離元企業(親会社)の事業が移転されたとみなされる額と、移転した事業に係る分離元企業(親会社)の持分の減少額との間に生じる差額については、資本剰余金とする

事業分離前に分離先企業の株式保有あり(子会社株式)・・・ 追加取得により、子会社に係る分離元企業(親会社)の持分の増加額(追加取得持分)と、移転した事業に係る分離元企業(親会社)の持分の減少額との間に生じる差額については、資本剰余金とする

財務諸表論⑲(企業結合に関する会計基準)

(このブログは公認会計士試験の受験を目指されている方たちへ向けて、僕が学習した内容をノート形式で公開することを目的としています。)

企業結合に該当する取引の分類:

企業結合に該当する取引・・・

共通支配下の取引

独立企業間の取引 ‐ 共同支配企業の形成、取得

企業結合に該当しない取引・・・

非支配株主との取引

共通支配下の取引に準じる取引(株式移転による持株会社の設立、新設分割による子会社の設立)

企業結合の会計処理:

・結合当時企業に対する株主の観点

持分が継続・・・投資の清算と再投資は行われておらず、これまでの投資は継続している

持分が非継続・・・投資家はいったん投資を清算し、改めて当該資産及び負債に対して投資を行い、それを取得企業に現物で出資したと考えられる

・資産及び負債の評価(投資原価)→投資原価の回収計算(損益計算の観点)

持分が継続・・・企業結合前の帳簿価額(投資原価=従前の投資額)

→当該投資原価を超えて回収できれば、その超過額が企業にとっての利益である

持分が非継続・・・企業結合時点での時価(新たな投資原価=再投資額)

→当該投資原価を超えて回収できれば、その超過額が企業にとっての利益である

パーチェス法の場合の増加資本の処理:

増加資本は払込資本として処理する→取得企業に限って利益剰余金が引き継がれる

パーチェス法の場合の企業結合前の損益の引継ぎ:

取得企業に限って引き継ぐ

取得企業の決定:

「連結財務諸表に関する会計基準」に従う(原則)

「連結財務諸表に関する会計基準」の考え方によっても取得企業が明確でない場合:

①対価の種類が資産の引き渡し又は負債の引き受けの場合

通常、現金若しくは他の資産の引き渡す又は負債を引き受ける企業(結合企業)が取得企業となる

②対価の種類が株式の場合

通常、当該株式を交付する企業(結合企業)が取得企業となる

ただし、以下の要素を総合的に勘案

・総体としての株主が占める相対的な議決権比率の大きさ

・最も大きな議決権比率を有する株主の存在

・取締役等を選解任できる株主の存在

・取締役会等の構成

・株式の交換条件(株式の時価を超えるプレミアムを支払う場合、通常、当該プレミアムを支払った結合当時企業が取得企業となる)

株式の交換による取得の場合における交付した株式の測定日: 企業結合日

・株式以外の対価は企業結合日に測定される

・承継する資産及び負債とその対価である株式の測定日は、銅市であることが整合的

・合意公表日後において条件が見直される可能性もあり、合意公表日では未だ取得原価は確定していない

→取得の対価となる財の時価は、被取得企業の株主が結合後企業に対する実際の議決権比率と同じ比率を保有するのに必要な数の取得企業株式を、取得企業が交付したものとみなして算定する。

被取得企業が取得企業の関連会社であった場合の会計処理:

連結上、支配を獲得した日における時価で取得原価を算定

→支配を獲得するに至った個々の取引ごとの減価の合計額(持分法適用関連会社と企業結合した場合には、持分法による評価額)との差額は、当期の段階取得に係る損益として処理する

取得に要した支出額の会計処理:

取得原価に含めず、発生時の費用として処理

企業結合に係る特別勘定:

企業結合の条件交渉の過程で、被取得企業に関連して発生する可能性のある将来の費用又は損失が取得の対価に反映されている場合には、企業結合に係る特別勘定として負債計上する

仕掛研究開発の取り扱い:

企業結合日における時価に基づいて資産として計上

→取得した研究開発は、たとえ当該資産が将来の収益に結びつく蓋然性が低くても、取引価格はその蓋然性を織り込んで決められていると考えられる

逆取得における個別財務諸表上の会計処理:

消滅会社が取得企業となる吸収合併・・・存続会社の個別財務諸表上、当該取得企業(消滅会社)の資産及び負債を合併直前の適正な帳簿価額により計上する

現物出資会社又は吸収分割会社が取得企業となる現物出資又は吸収分割(現物出資又は吸収分割による子会社化)・・・移転された事業に対する投資は企業結合の前後で継続している→取得企業の個別財務諸表では、移転した事業に係る株主資本相当額に基づいて、被取得企業株式(子会社株式)の取得原価を算定する

完全子会社が取得企業となる株式交換・・・完全親会社の個別財務諸表では、株式交換直前における株主資本の額に基づいて、取得企業株式(完全子会社株式)の取得原価を算定する

株式移転による共同持株会社の設立が取得となる場合・・・完全親会社の個別財務諸表においては、他の被取得企業株式と同様に被取得企業株式も完全子会社株式として扱われるが、完全親会社の連結財務諸表では、企業結合日においていずれかの完全子会社が取得企業となり、当該取得企業(完全子会社)の資産及び負債が企業結合直前の帳簿価額で受け入れられることになる→完全親会社の個別財務諸表上においても、株式移転直前における取得企業(完全子会社)の適正な帳簿価額による株主資本の額に基づいて、取得企業株式(完全子会社株式)の取得原価を算定する

共同支配企業の形成:

共同支配・・・複数の独立した企業が契約等に基づき、ある企業を共同で支配すること

共同支配企業・・・複数の独立した企業により共同で支配される企業

共同支配投資企業・・・共同支配企業を共同で支配する企業

共同支配企業の形成・・・複数の独立した企業が契約等に基づき、共同支配企業を形成する企業結合

共同支配企業の会計処理:

いずれの企業の株主も他の企業を他の企業を支配したとは認められず、持分の結合にあたる→共同支配企業は、共同支配投資企業から移転する資産及び負債を、移転直前に共同支配投資企業において付されていた適正な帳簿価額により計上する

共同支配投資企業の会計処理:

個別財務諸表上・・・共同支配投資企業が受け取った共同支配企業に対する投資の取得原価は、移転した事業に係る株主資本相当額に基づいて算定する

連結財務諸表上・・・共同支配企業に対する投資について持分法を適用する

共通支配下の取引: 結合当時企業の全てが、企業結合の前後で同一の株主により最終的に支配され、かつ、その支配が一時的ではない場合の企業結合

親会社と子会社の合併及び子会社同士の合併は、共通支配下の取引に含まれる

→企業集団内における企業結合である共通支配下の取引は、親会社の立場からは企業集団内における純資産等の移転取引として内部取引と考えられる

個別F/S上の処理:

共通支配下の取引により企業集団内を移転する資産及び負債・・・原則として、移転直前に付されていた適正な帳簿価額により計上する

→親会社と子会社が企業結合する場合において、子会社の資産及び負債の帳簿価額を連結上修正しているときは、親会社が作成する個別財務諸表においては、連結財務諸表上の金額である修正後の帳簿価額(のれんを含む)により計上する

移転された資産及び負債の差額・・・純資産として処理する

移転された資産及び負債 の対価として交付された株式の取得原価・・・移転された資産及び負債の適正な帳簿価額に基づいて算定する

連結F/S上の処理:

内部取引としてすべて消去する

非支配株主との取引:

連結財務諸表上、「連結財務諸表に関する会計基準」における子会社株式の追加取得及び一部売却等の取り扱いに準じて処理する

財務諸表論⑱(連結キャッシュ・フロー等の作成基準)

(このブログは公認会計士試験の受験を目指されている方たちへ向けて、僕が学習した内容をノート形式で公開することを目的としています。)

資金の範囲:

・現金

・現金同等物・・・容易に換金可能であり、価値の変動について僅少なリスクしか追わない短期投資 (現金同等物として具体的に何を含めるかについては、経営者の判断に委ねられているため、資金の範囲に含めた現金及び現金同等物の内容を会計方針として注記)

キャッシュ・フロー計算書に記載されない取引: 非資金取引及び、現金及び現金同等物相互間の取引

非資金取引・・・

・社債の償還と引き換えによる新株予約権付社債に付された新株予約権の行使

・ファイナンス・リース取引による資産の取得

・株式の発行等による資産の取得又は合併

・現物出資による株式の取得又は資産の交換

現金及び現金同等物相互間の取引 ・・・

・当座預金から普通預金への預け替え

・現金の当座預金への預け入れ

リース取引に係るリース料の表示区分:

借手側の支払いリース料・・・

ファイナンスリース取引、元本返済部分 ‐「財部活動によるキャッシュ・フロー」

ファイナンス・リース取引、利息相当額部分 ‐ 企業が採用した支払利息の表示区分

オペレーティング・リース取引 ‐ 「営業活動によるキャッシュ・フロー」

貸手側の受取リース料・・・

営業損益計算の対象となるリース取引 ‐ 「営業活動によるキャッシュ・フロー」

営業損益計算の対象とならないリース取引、元本返済部分 ‐ 「投資活動によるキャッシュ・フロー」

営業損益計算の対象とならないリース取引、利息相当額部分 ‐ 企業が採用した受取利息の表示区分

デリバティブ取引に係るキャッシュ・フローの表示区分:

特定のリスクを減殺する目的で利用している場合 ‐ 対象となった取引に係るキャッシュ・フローと同一表示区分の同一項目

特定のリスクを減殺する目的以外で利用している場合 ‐ 「投資活動によるキャッシュ・フロー」

資産除去債務のキャッシュ・フロー計算書上の取り扱い:

資産除去債務の履行に係る支出額は「投資活動によるキャッシュ・フロー」に含める(固定資産の取得による支出と同様)

法人税等に係るキャッシュ・フローの表示区分:

「営業活動によるキャッシュ・フロー」の区分に「法人税等の支払額」として一括して記載

利息及び配当金に係るキャッシュ・フローの表示区分:

・受取利息、受取配当金及び支払利息を「営業活動によるキャッシュ・フロー」の区分に表示し、支払配当金は「財務活動によるキャッシュ・フロー」の区分に表示する方法

・受取利息及び受取配当金は「投資活動によるキャッシュ・フロー」の区分に表示し、支払利息及び支払配当金は「財務活動によるキャッシュ・フロー」の区分に表示する方法

連結範囲の変更等に係るキャッシュ・フロー:

・子会社株式の取得または売却による連結範囲の変更

新たに連結子会社とした場合→取得に伴い支出した現金及び現金同等物の額から、連結開始時に当該子会社が保有していた現金及び現金同等物の額を控除した額をもって「投資活動によるキャッシュ・フロー」の区分に記載

連結から除外した場合→譲渡により取得した現金及び現金同等物の額から、連結除外時点の当該子会社の現金及び現金同等物の残高を控除した額をもって「投資活動によるキャッシュ・フロー」の区分に記載

・子会社株式の追加取得または一部売却

連結範囲の変動を伴わない子会社株式の取得または売却に係るキャッシュ・フローについては、非支配株主との取引として「財務活動によるキャッシュ・フロー」の区分に記載

間接法の「営業活動によるキャッシュ・フロー」における「為替差損益」:

間接法を採用した場合における税金等調整前当期純利益の調整項目として加減算される「為替差損益」は、原則として、「営業活動によるキャッシュ・フロー」の小計欄以下の各項目又は「営業活動によるキャッシュ・フロー」以外の各表示区分に記載される取引に係る為替差損益である。

「投資活動によるキャッシュ・フロー」及び「財務活動によるキャッシュ・フロー」の表示方法

原則・・・総額表示

容認・・・期間が短く、かつ回転が速い項目に係るキャッシュ・フロー ‐ 純額表示(総額表示すると、キャッシュ・フローの金額が大きくなり、かえって利用者の判断を誤らせるおそれがある)

例外・・・社債や新株の発行等による資金調達に係るキャッシュ・フロー ‐ 純額表示(発行価額から社債発行費や株式交付費を控除した実質手取額によって表示)

外貨建の現金及び現金同等物に係る為替差損益:

「現金及び現金同等物に係る換算差額」として表示