固定資産について知ろう(簿記3級)

固定資産については、簿記3級の学習の山場と言ってもいいかもしれません。

これまで学習してきた、商品の仕入れ売上げとは違った勘定科目を使うため、戸惑う方も多いでしょう。

今回は、固定資産に関する基本的な仕訳について説明します!

固定資産とは

「固定資産」とは、土地や建物のように、会社が長期間にわたって使用することを目的として取得する資産のことです。

3級の試験ででてくる「固定資産」は、土地、建物、備品の三つですので、それだけ覚えていただけたら大丈夫です。

それ以外の、現金や商品のように日々会社に入ってきたり出ていったりを繰り返す資産のことは「流動資産」と言います。

「固定資産」は決算において「減価償却」と呼ばれる処理をする必要がありますが、それについては、決算で学習することになります。

今回は、「固定資産の取得」と「固定資産の売却」について見ていきます。

減価償却費について知ろう(簿記3級、決算)

固定資産の取得について

まず、固定資産の取得についてです。

固定資産を取得する際も商品売買と同じように「不随費用」を支払う場合があります。

固定資産を取得する際の「不随費用」とは、固定資産の取得に付随して発生する手数料などのことを言います。

商品売買における発送費とは(簿記3級)

商品売買における仕入の場合、発送費などの「不随費用」を支払ったなら、仕入の金額に含める、ということを学習しました。

「固定資産」の取得においても、「不随費用」を支払った場合、その取得した固定資産の「取得原価」に含めるという処理をします。

つまり、もし50,000の土地を購入し、100の不随費用を支払ったなら、その土地の「取得原価」は50,100ということになります。

イメージとしては、50,000円のパソコン機器を買うために往復1,000円かかる電気屋さんに行ったとしたら、そのパソコン機器は51,000円で購入したと考える、といった感じです。

仕訳例①(固定資産の取得)

それでは仕訳を見ていきましょう。

「500,000の土地を購入し、代金は後日支払うこととし、その際、不動産屋に仲介手数料1,000を現金で支払った」

この場合、土地の購入にかかる「不随費用」は仲介手数料1,000となります。

ここで、注意しないといけないのは、代金が未払いですので、その場合「未払金」という負債勘定を使います。

「未払金」によく似た勘定科目で、「買掛金」というものがありますが、これについては商品売買のみで用いますので間違えないようにしましょう。

売掛金、買掛金について知ろう(簿記3級)

借方 貸方
土地 501,000 未払金 500,000
  現金 1,000

取引の八要素で確認しておくと、

(借方要素) (貸方要素)
資産の増加 資産の減少
負債の減少 負債の増加
純資産の減少 純資産の増加
費用の発生 収益の発生

借方が資産の増加、貸方は、未払金500,000が負債の増加、現金1,000が資産の減少ですね。

固定資産の売却について

続いて、固定資産の売却について見ていきます。

固定資産を売却する場合、「帳簿価額(ちょうぼかかく)」よりも高く売れる場合と、安く売れる場合があります。

「帳簿価額」とは、会社の帳簿で売ろうとしている固定資産がいくらで記録されているか、という金額です。

例えば、先ほどの土地でしたら501,000で取得していますから、会社の帳簿では、「土地 501,000」で記録されているはずです。

ですから、それが「帳簿価格」ということになります。

3級の学習では、「帳簿価額」とは、いくらで買ってきたか?を意味すると考えていただいて結構です。

さて、そのいくらで買ってきたか?よりも、高く売れた場合は得をしますし、安く売れた場合は損をします。

ですので、「帳簿価格」よりも「売却価額(ばいきゃくかかく)」が高い場合は「固定資産売却益」という収益勘定を使い、「帳簿価格」よりも「売却価額」が安い場合は「固定資産売却損」という費用勘定を使うことになります。

仕訳例②(売却益が発生)

それでは、まずは買ってきた金額よりも高く売れた場合の仕訳を見ていきましょう。

「帳簿価格200,000の土地を201,000で売却し、代金は後日受け取ることとした」

「売却価額」は201,000です。

ここで注意しないといけないのは、代金は後日受け取ることとした、とありますので、「未収入金」という資産勘定を使います。

よく似た勘定科目で「売掛金」がありますが、これも「買掛金」と同様、商品売買のみでしか用いませんので気を付けてください。

借方 貸方
未収入金 201,000 土地 200,000
  固定資産売却益 1,000

取引の八要素では、借方が資産の増加、売却した土地は手元からなくなるわけですから、貸方は土地200,000が資産の減少、そして、帳簿価額と売却価額の差額、固定資産売却益1,000が収益の発生ですね。

仕訳例③(売却損が発生)

続いて、買ってきた金額よりも安く売れた場合の仕訳を見ていきましょう。

「帳簿価格200,000の土地を198,000で売却し、代金は後日受け取ることとした」

この場合は、「売却価額」が198,000ですので、帳簿価額200,000との差額は固定資産売却損となります。

借方 貸方
未収入金 198,000 土地 200,000
固定資産売却損 2,000  

取引の八要素では、借方は、未収入金198,000が資産の増加、固定資産売却損2,000が費用の発生、借方は資産の減少ですね。

仕訳例②と仕訳例③を見比べてみてください。

「固定資産売却益」は収益ですので貸方に、「固定資産売却損」は費用ですので借方にあります。

仕訳問題で、借方、貸方、どちらに記入すればいいかわからなくなったら、まず、高く売れたか安く売れたかを確認し、高く売れたなら収益なので貸方安く売れたなら費用なので借方と覚えるようにしましょう。

まとめ

今回は、固定資産の取得と売却の仕訳について説明させていただきました。

売却損、売却益についてはミスが発生しやすいので、何度も復習して身に付けるようにしてくださいね!

簿記の学習を始めるにあたって、まず知っておくべきこと

給料の支払いの仕訳について知ろう(簿記3級)

給料の支払いの仕訳は、それほどややこしくないのですが、その際に登場する、預り金や保険料などの勘定科目でミスをしてしまう方もいらっしゃいます。

今回は、お店で働いている従業員に支払われる給料の仕訳について説明します!

給料の支払いについて

これまで、どこかでお仕事をされてお給料を受け取ったことがある方は、「給料」というとお金をもらえるイメージがあるかもしれませんが、簿記では「給料」は雇う側が支払うものなので、費用勘定となります。

そして、「所得税」や「社会保険料」など、従業員の代わりに雇う側が給料から天引きして、国に納めてくれる仕組みがあります。

お仕事をされている方は、毎月の給与明細からいくら引かれているか目にしたことがあると思いますが、これは従業員の支払い漏れや、手間をなくすために、雇う側がまとめて国に納めることになっています。

これについては、「預り金(あずかりきん)」という負債勘定を使って仕訳をします。

なぜ負債なのかというと、これは会社のお金ではなく、あくまで従業員から預かっていて、いずれ国に納めないといけないお金だから、ということですね。

仕訳例①(給料の支払い)

「A社は従業員の給料400,000につき、所得税20,000と社会保険料15,000を差し引いた残額を現金で支払った」

この、所得税や社会保険料について、別々の勘定科目を使う場合がありますので注意しましょう。

もし、両方とも一つにまとめるとすると、

借方 貸方
給料 400,000 預り金 35,000
  現金 365,000

給料として支給される400,000から預り金35,000を差し引いた365,000だけ現金が減少しています。

取引の八要素で確認しておくと、

簿記の取引について理解しよう!

(借方要素) (貸方要素)
資産の増加 資産の減少
負債の減少 負債の増加
純資産の減少 純資産の増加
費用の発生 収益の発生

借方は費用の発生、貸方は、預り金35,000が負債の増加、現金365,000が資産の減少です。

仕訳例②(給料の支払い)

もし、所得税や社会保険料について、別々の勘定科目を使ったとすると、

借方 貸方
給料 400,000 所得税預り金 20,000
  社会保険料預り金 15,000
  現金 365,000

となります。これも問題文に指示がありますので、注意しましょう。

仕訳例③(所得税の納付)

では次に、従業員から預かったお金について、納めた際の仕訳について見ていきましょう。

「A社は従業員から預かった所得税20,000について、納期につき税務署に現金で納付した」

ここでは、所得税や社会保険料について、別々の勘定科目を使った場合で見ていきます。

借方 貸方
所得税預り金 20,000 現金 20,000

借方が負債の減少、貸方は資産の減少です。

仕訳例④(社会保険料の支払い)

社会保険料の支払いについて、注意しなくてはならないのは、社会保険料については従業員と会社で半分ずつ負担するので、会社負担分については、「法定福利費」という費用勘定で処理する、ということです。

つまり、Aさんが納めないといけない社会保険料が30,000あったとして、そのうち半分の15,000は給料から預かっておいたお金で、もう半分については会社のお金で納めますよ、ということですね。

では、仕訳を見ていきましょう。

「従業員の社会保険料30,000につき、給料から控除した15,000に会社負担額15,000を加え、現金で支払った」

借方 貸方
社会保険料預り金 15,000 現金 30,000
法定福利費 15,000  

支払った社会保険料は30,000なので、現金30,000が減少しますが、会社が負担する金額は15,000なので、法定福利費の金額は15,000となります。

取引の八要素では、借方は、社会保険料15,000が負債の減少、法定福利費15,000が費用の発生、貸方は資産の減少ですね。

まとめ

今回は、給料の支払いの仕訳について説明しました。

問題文の指示を読んでいないと、使うべき勘定科目を使わないなどのミスをしてしまうことがありますので、繰り返し復習して慣れるようにしてくださいね!

簿記の学習を始めるにあたって、まず知っておくべきこと

貸付金、借入金の仕訳について知ろう(簿記3級)

簿記の学習をしていく上で、お金の貸し借りの仕訳について学ばれると思います。

決して複雑ではないのですが、簿記の五要素(資産、負債、純資産、収益、費用)について理解していなければミスをしてしまうこともあります。

勘定科目を知るうえで大切な簿記の五要素とは?

今回は、「貸付金」「借入金」の仕訳について説明します!

お金の貸し借りと利息について

今回は、お店が営業を行っていく上で必要な「お金の貸し借り」について学習します。

お金を貸す場合は「貸付金(かしつけきん)」という資産勘定を、借りる場合は「借入金(かりいれきん)」という負債勘定を使います。

そして、お金を貸し借りする場合は通常「利息」が発生します。

利息を支払う側は「支払利息」という費用勘定を、受け取る側は「受取利息」という収益勘定を使います。

仕訳例①(貸し付け)

まずは、貸し付けに関する仕訳を見ていきましょう!

「A社はB商店に現金100を貸し付けた」

借方 貸方
貸付金 100 現金 100

現金を貸し付けたA社は貸付金(資産)が増加する代わり、手元から現金が失われます。

ですので、取引の八要素では、

簿記の取引について理解しよう!

(借方要素) (貸方要素)
資産の増加 資産の減少
負債の減少 負債の増加
純資産の減少 純資産の増加
費用の発生 収益の発生

借方が資産の増加、貸方は資産の減少です。

仕訳例②(貸付金の返済)

次は、貸付けた現金の返済を受けた場合の仕訳です。

「A社はB商店から貸付金100の返済につき、利息5とともに支払いを受けた」

借方 貸方
現金 105 貸付金 100
  受取利息 5

貸したお金の返済を受けたので、貸付金という「債権」(お金を請求する権利)が消滅します。

取引の八要素では、借方が資産の増加、貸方は、貸付金100が資産の減少、受取利息5が収益の発生となります。

仕訳例③(借入れ)

続いて、お金を借りた側の仕訳を見ていきましょう。

「B社は銀行から現金100を借り入れた」

借方 貸方
現金 100 借入金 100

現金を借り入れることで、手元の現金が増加するとともに借入金(負債)も増加します。

取引の八要素では、借方が資産の増加、貸方は負債の増加です。

仕訳例④(借入金の返済)

最後は、借りたお金を返済する際の仕訳です。

「B社は、借入金100の返済に際し、利息5とともに銀行に支払った」

借方 貸方
借入金 100 現金 105
支払利息 5  

借りたお金を返したので、借入金という「債務」(お金を支払う義務)が消滅します。

取引の八要素では、借方は、借入金100が負債の減少、支払利息5は費用の発生、貸方は資産の減少ですね。

利息の計算について

さて、検定試験では、利息の計算をしなくてはいけない場合もあります。

通常、利息は「日割計算」で行います。

つまり、一年間の利息(年利)が○○%と決まっていて、それを365日で割り、借りた日数をかけて支払う利息を計算するということですね。

例えば、年利7.3%で100,000円を50日借り入れた場合、支払う利息は、

100,000 × 7.3/100 × 50/365 = 1,000円

となります。

もし、月割計算で出題された場合、12か月で割り、借りた月数を掛けます。

例えば、年利5%で100,000を3か月借りたならば、支払う利息は、

100,000 × 5/100 × 3/12 = 1,250円

利息の金額が与えられることもありますが、計算させる場合もありますので、ぜひ覚えておいてください!!

まとめ

今回は、貸付金、借入金の仕訳について説明しました。

利息の計算も出題されたらミスなく解答できるよう、しっかり復習しておいてくださいね!

簿記の学習を始めるにあたって、まず知っておくべきこと

商品売買における発送費とは(簿記3級)

簿記3級における商品売買で、おそらく最後に学習されるであろう「発送費」についてですが、どの勘定科目を使えばいいのか迷ってしまうことも少なくないかもしれません。

それほどややこしくないのですが、いざ仕訳をしてみたらミスをしてしまうこともあるでしょう。

今回は、商品売買における「発送費」について解説します!

発送費とは

「発送費」とは、商品を発送するにあたってかかる運賃や人件費などのことです。

こういった出費を「不随費用(ふずいひよう)」と呼びます。(商品売買に付随して発生する費用)

この、「発送費」に関しても、商品を仕入れる側と販売する側で、扱いが異なるので注意しましょう。

また、「発送費」を自分が負担するのか、それとも取引の相手方が負担するのかでも仕訳の処理が変わってきます。

仕訳例①(仕入れる側、当店負担)

ではまず、商品を仕入れる側の仕訳から見ていきましょう。

「A商店はB商店から商品100を掛けで仕入れ、その際、運賃10を現金で支払った」

この場合、掛けで仕入れていますから、買掛金が100発生します。そして、運賃10については、仕入に含めて仕訳します。また、支払った現金10が減少するということで、

借方 貸方
仕入 110 買掛金 100
  現金 10

商品の代金は100ですが、運賃10を仕入に含めますので、仕入の金額は110で仕訳をしています。

取引の八要素で確認しておくと、

(借方要素) (貸方要素)
資産の増加 資産の減少
負債の減少 負債の増加
純資産の減少 純資産の増加
費用の発生 収益の発生

借方が費用の発生、貸方は、買掛金100が負債の増加で、現金10が資産の減少ですね。

仕訳例②(販売する側、当店負担)

続いて、商品を販売する側の仕訳を見ていきましょう。

「B商店は、A商店に商品100を掛けで販売し、その際、運賃10を現金で支払った」

掛けで販売ということで、売掛金100が発生します。

ここでは、運賃10について、「発送費」という費用の勘定で仕訳をします。

販売する側のみ、「発送費」勘定を使うので、注意しましょう。

借方 貸方
売掛金 100 売上 100
発送費 10 現金 10

販売する側は、商品を販売する(お金を受け取る)取引と、運賃を支払う(お金を払う)取引で別々に考えるのに対し、

仕入れる側は、商品を仕入れる取引も、運賃を支払う取引も、両方ともお金を払う側ですので一緒に考える、とイメージすると覚えやすいかもしれません。

取引の八要素では、借方は、売掛金100が資産の増加、発送費10が費用の発生、そして貸方は、売上100が収益の発生、現金10は資産の減少ですね。

仕訳例③(仕入れる側、他者負担)

これまで見た二つの仕訳は、自分が運賃を負担する側の取引でしたが、契約の内容によっては、そうでない場合もあります。

次は、「取引の相手方」が運賃を負担する場合について見ていきましょう。

まずは、商品を仕入れる側の仕訳です。

「A商店は、B商店から商品100を掛けで仕入れ、発送費用10を立替えて現金で支払った

この場合、相手が負担すべき費用を立替えたわけですから、「立替金」という資産勘定を使って仕訳をします。

借方 貸方
仕入 100 買掛金 100
立替金 10 現金 10

取引の八要素では、借方は、仕入100が費用の発生、立替金10は資産の増加、貸方は、買掛金100が負債の増加、現金10が資産の減少ですね。

ちなみに、この仕訳について、次のようにする場合があります。

借方 貸方
仕入 100 買掛金 90
  現金 10

買掛金は相手に支払う義務、立替金は相手からお金を受け取る権利、ということで相殺し、買掛金90として処理しているということですね。どちらの仕訳をするかは、必ず問題文に指示がありますので注意してください。

仕訳例④(販売する側、他者負担)

次は、商品を販売する側の仕訳を見ていきましょう。

「B商店は、A商店に商品100を掛けで販売し、発送費用10を立替えて現金で支払った

やはりこの場合も、「立替金」勘定を使って仕訳をしていきます。

借方 貸方
売掛金 100 売上 100
立替金 10 現金 10

取引の八要素では、借方は、売掛金100が資産の増加、立替金10も資産の増加、貸方は、売上100が収益の発生、現金10は資産の減少です。

ちなみに、この仕訳についても別解があります。

借方 貸方
売掛金 110 売上 100
  現金 10

売掛金も立替金を相手からお金を受け取ることを意味しますから、合計して売掛金110で処理してしまおう、ということですね。

この場合も、どちらの仕訳をするか問題文に指示があるので注意しましょう。

まとめ

今回は、商品売買における「発送費」について説明させていただきました。

それほどややこしくないと思いますので、試験で出題されたらミスなく得点できるよう、しっかり復習してくださいね!

簿記の学習を始めるにあたって、まず知っておくべきこと

約束手形の割引きと裏書きについて知ろう(簿記3級)

約束手形の振り出しや受け取りについては理解できたけれど、「割引き」や「裏書き」はややこしくてわからない!という方は多いと思います。

今回は、手形取引の中でも少しややこしい、約束手形の割引きと裏書きについて説明いたします。

この記事を読んでいただければ、正確な仕訳ができるようになるはずです。

約束手形に関する基本的な理解がまだの方は、こちらから読んでみてくださいね。

約束手形について知ろう(簿記3級)

約束手形の割引きと裏書きとは?

通常、受け取った手形は支払期日に決済され、代金が銀行口座に振り込まれます。

しかし、今回は受け取った手形を決済するのではなく、「割引(わりびき)」「裏書(うらがき)」する場合について説明していきます。

約束手形の割引き

前述のとおり、手形を受け取った場合、決済の期日まで待てば、額面金額(その手形に書かれた金額)が銀行の預金口座に振り込まれます。

例えば、4月1日に支払期日が一ケ月後の5月1日で、額面金額100円の約束手形を受け取ったならば、一ケ月待てば、100円が預金口座に振り込まれるということです。

しかし、資金繰りなどの関係から、一ケ月待たず、すぐにお金が必要ということもあります。そんな場合は、受け取った手形を銀行で「割引く」ことで、現金に換えることができます。

しかし、注意しなくてはならないのは、銀行で手形を割引く場合、銀行に手数料を支払わなくてはなりません。

ですから、先ほどの4月1日に受け取った手形を4月8日に銀行で割引いたとして、手数料が20円だったとすると、額面金額100円から20円を差し引いた80円が預金口座に振り込まれるということになります。

この、銀行に支払われる手数料は、「手形売却損(てがたばいきゃくそん)」という費用の勘定を使って処理します。

約束手形の裏書き

次は、約束手形の「裏書き」について説明します。

手形の裏書とは、割引と同じように、手形を受け取った側が手形の決済の期日まで待たず、受け取った手形を他の取引の支払いに充てる、という取引です。

例えば、AさんがBさんに手形を振り出します、次に、BさんがCさんに対する支払いに際して、「Aさんから受け取った手形を裏書き」することができます。

ババ抜きのジョーカーのように、Aさんの手元から、Bさん→Cさんと手形が渡っていくわけですね。

ですから、決済の期日には、Aさんが最後に手形を持っていたCさんに対して、手形の額面金額を支払うということになります。

手形の割引きの仕訳

では、実際の仕訳を見ていきましょう。

仕訳例①

「当店は、4月1日に受け取った額面金額100の約束手形を取引銀行で割引き、手数料20を差し引かれた残額が当座預金口座に振り込まれた」

割引いた分の受取手形が減少し、手形売却損(費用)20が発生し、当座預金残高が80増加します。

借方 貸方
当座預金 80 受取手形 100
手形売却損 20  

取引の八要素で確認しておくと、

簿記の取引について理解しよう!

(借方要素) (貸方要素)
資産の増加 資産の減少
負債の減少 負債の増加
純資産の減少 純資産の増加
費用の発生 収益の発生

借方は、当座預金80が資産の増加、手形売却損20が費用の発生ですね。貸方は、資産の減少です。

約束手形の裏書きの仕訳

続いて、裏書きの仕訳を見ていきます。

Aさんが振出した約束手形が、Bさんに渡り、さらにその約束手形をBさんがCさんに裏書きした場合についてです。

仕訳例②(復習)

まずは、復習になりますが、Aさん→Bさんの間の取引です。

A商店はB商店に対する買掛金100の支払いのため、約束手形を振り出した」

借方 貸方
買掛金 100 支払手形 100

B商店は売掛金100の支払いとして、A商店から約束手形を受け取った」

借方 貸方
受取手形 100 売掛金 100

主語に注意するようにしてください。

A商店側から見ると、支払手形100が増加し、B商店側から見ると、受取手形100が増加しています。

仕訳例③(裏書きした側)

続いて、Bさん→Cさんの間の取引です。

受け取った約束手形を、他人に裏書きした場合の仕訳となります。

B商店はC商店に対する買掛金100につき、A商店から受け取った約束手形を裏書して支払った」

支払った分の買掛金が減少し、「約束手形を裏書きして」ということは、手元にあった手形がなくなるわけですから、受取手形が減少します。

借方 貸方
買掛金 100 受取手形 100

取引の八要素で確認しておくと、

(借方要素) (貸方要素)
資産の増加 資産の減少
負債の減少 負債の増加
純資産の減少 純資産の増加
費用の発生 収益の発生

借方が負債の減少で、貸方は資産の減少となります。

仕訳例④(裏書きされた側)

最後に、約束手形の裏書きを受けた場合の仕訳を見ていきましょう。

C商店はB商店から売掛金100の支払いのため、A商店が振出した約束手形の裏書きを受けた」

今度はCさん側の仕訳になります。

支払いを受けた売掛金が減少し、新たにAさん振出の手形を受け取ったわけですから、

借方 貸方
受取手形 100 売掛金 100

となります。

仕訳例②のB商店の仕訳と同じです。

つまり、「手形の振出しを受けた側」と、「手形の裏書を受けた側」の仕訳は同じになります。

注意すべきは、「手形を振出した側」と「手形を裏書した側」の貸方です。

「振出した側」の貸方が「支払手形」になるのに対し、「裏書した側」の貸方は「受取手形」となります。

これについては、仕訳例②のA商店の仕訳と、仕訳例③のB商店の仕訳を比較し、確認してみて下さい。

まとめ

今回は、手形の「割引」と「裏書」について見てきました。

両方とも、前回の内容がしっかり理解できていることが前提となるので、もし分かりづらかった方は、ぜひ前回の手形取引から復習してみてくださいね!

簿記の学習を始めるにあたって、まず知っておくべきこと

約束手形について知ろう(簿記3級)

手形取引において扱われる「約束手形」とは、商品売買の勉強において山場ともいえます。

これまで順調に学習が進んできた人も、手形については少しややこしいと感じるかもしれません。

今回は、「受取手形」「支払手形」などの勘定科目を使う「手形取引」について説明していきます!

手形取引は、「掛け取引」と関係が深いものですので、自信がないなという方は、ぜひ復習しておいてくださいね。

売掛金、買掛金について知ろう(簿記3級)

約束手形とは?

「手形取引」とは、「約束手形」と呼ばれるものを振出すことによって行われます。

「約束手形」とは、当座取引で学習した「小切手」と混同しやすいので注意しましょう。

後ほど、この二つの比較については確認しておきたいと思います。

「約束手形」とは、商品などの代金を支払う際に振出す、「いつ」までに「いくら」払うかなどを記載した証券です。

「掛け取引」を普段行っていて、支払いが遅れてしまったり、払ってもらえるはずの代金を受け取れない、などのことが起こる場合があります。

そういったリスクを軽減するために、「約束手形」を振出すことによって、文字通り支払いを約束してもらう、ということです。

「約束手形」も小切手と同じように、「振り出した側」、「受け取った側」で、違う勘定科目を用います。

手形を振り出す側が「支払手形(しはらいてがた)」受け取る側が「受取手形(うけとりてがた)」という勘定科目を使います。

そして、「支払手形」勘定を「債権(さいけん)」、「受取手形」勘定を「債務(さいむ)」と呼びます。

「債権」と「債務」の関係についてここで詳しくは触れませんが、「債権」が、「お金を払ってくださいよ」と言える権利、「債務」は、「お金を支払う」義務のことを言います。

これまで見てきた、「売掛金」と「買掛金」も「債権」と「債務」の関係にあります。

まとめると、

債権 債務
売掛金(資産) 買掛金(負債)
受取手形(資産) 支払手形(負債)

小切手との比較では、用いる勘定科目が、

  (振り出した側) (受け取った側)
「約束手形」 支払手形(負債) 受取手形(資産)
「小切手」 当座預金(資産) 現金(資産)

このようになります。必ず仕訳で確認しておいてください。

仕訳例①(振り出す側)

では、約束手形を使った仕訳を見ていきましょう。

まずは、振り出す側です。

「A商店はB商店に対する買掛金100の支払いのため、約束手形を振り出した」

買掛金100が減り、約束手形を振り出しているので、支払手形100が発生します。

借方 貸方
買掛金 100 支払手形 100

取引の八要素で確認しておくと、

簿記の取引について理解しよう!

(借方要素) (貸方要素)
資産の増加 資産の減少
負債の減少 負債の増加
純資産の減少 純資産の増加
費用の発生 収益の発生

借方が負債の減少で、貸方が負債の増加です。

「買掛金」という債務が、「支払手形」という債務に置き換わった、というイメージです。

なぜそんなことをするかと言うと、先ほども少し触れましたが、買掛金が支払ってもらえないリスクがある場合などに、「約束手形」を発行してもらい、支払手形として「期日」や「金額」を紙で約束してもらう、ということです。

仕訳例②(受け取った側)

では、約束手形を受け取った側の仕訳を見ていきましょう。

「B商店は売掛金100の支払いとして、A商店から約束手形を受け取った」

売掛金100が減り、受取手形100が発生します。

借方 貸方
受取手形 100 売掛金 100

取引の八要素では、借方が資産の増加で、貸方が資産の減少ですね。

「売掛金」という債権が、「受取手形」という債権に置き換わったことを意味しています

仕訳例③(支払手形の決済)

では次は、「手形の決済」について見ていきましょう。

「手形の決済」とは、受け取った手形の代金を支払期日に自分の預金口座に振り込んでもらうことです。

この仕訳も、振出した側と、受け取った側、それぞれ確認していきます。

まずは、手形を振り出した側の仕訳です。

「A商店は、先日振出した手形の代金100につき、支払期日が到来したため、B商店から当座預金口座を通じて決済された」

支払手形100が減り、当座預金を通じて決済されていますので、当座預金の残高が減少します。

借方 貸方
支払手形 100 当座預金 100

取引の八要素で確認しておくと、

(借方要素) (貸方要素)
資産の増加 資産の減少
負債の減少 負債の増加
純資産の減少 純資産の増加
費用の発生 収益の発生

借方が負債の減少で、貸方は資産の減少です。

仕訳例④(受取手形の決済)

続いて、手形を受け取った側の仕訳です。

「B商店は、先日受け取った手形の代金100につき、支払期日が到来したため、A商店から当座預金口座を通じて決済された」

受取手形100が減り、当座預金を通じて決済されていますので、当座預金の残高が増加します。

借方 貸方
当座預金 100 受取手形 100

取引の八要素では、借方が資産の増加で、貸方は資産の減少となります。

まとめ

今回は、手形の振出しと決済の仕訳について説明させていただきました。

これまで学習された、「現金取引」や「掛け取引」に加えてまた覚えることが多くなったと思われるかもしれませんが、馴染むまでしっかり復習するようにしてください。

約束手形に関しては、他にも、「割引き」と「裏書き」がありますが、それについてはこちらの記事を読んでくださいね!

約束手形の割引きと裏書きについて知ろう(簿記3級)

簿記の学習を始めるにあたって、まず知っておくべきこと

当座借越ってなに?(簿記3級)

小切手を使った当座取引について勉強していて、たまに問題に出てくる「当座借越」という言葉がよくわからない方もいらっしゃるのではないでしょうか。

今回は、当座預金残高がなくなってしまった場合に用いる「当座借越」という勘定科目について説明いたします!

当座預金についての勉強がまだの方は、こちらからご覧ください。

当座預金について知ろう(簿記3級)

当座借越契約とは?

そもそも、当座取引とは、当座預金にお金を預け入れておくことで、小切手を受け取った側が、支払われた代金分だけ当座預金残高から引き出すことができる取引です。

いちいち、取引のたびにお金を持ち歩くのは手間ですし、お金を落としたりというリスクもありますので、小切手に金額を記入するだけで、取引の相手に、「あとはその金額を銀行で引き出してね」と言うことができるわけです。

ですから、当座預金にお金が入っていなければ、小切手を受け取った側はその分の金額を引き出すことができませんし、そもそも取引は成り立ちません。

しかし、日々多くの取引を行っていると、自分の当座預金残高がいくらか常に確認しているわけではないですし、相手も信用して取引を行っているので、いちいち当座預金残高を確認しないはずです。

ですから、当座預金にお金が入っていなければ、小切手を受け取った側はその分の金額を引き出すことができませんし、そもそも取引は成り立ちません。

しかし、日々多くの取引を行っていると、自分の当座預金残高がいくらか常に確認しているわけではないですし、相手も信用して取引を行っているので、いちいち当座預金残高を確認しないはずです。

ですから、当座預金の残高がなくなってしまった時に備えて、銀行と「当座借越契約」というものを結ぶことができます。

これは、当座預金の残高がゼロになったときに、限度内で銀行から借り入れをすることができるというものです。

例えば、当店の当座預金残高が50しかなかった時に、100の支払いをしてしまいました。

その場合、「当座借越契約」を結んでいたなら、50は当店の当座預金残高から支払われ、残りの50は銀行から借り入れて支払われる、ということですね。

仕訳例①

では、仕訳を見ていきましょう。

まずは、基本の当座預金の預入れの仕訳からです。

「取引銀行に預金口座を開設し、当座預金に現金100を預け入れた」

銀行に現金を預け入れた場合、手元の現金が減り、当座預金の残高が増えることとなりますので、

借方 貸方
当座預金 100 現金 100

となります。取引の八要素で確認しておくと、

簿記の取引について理解しよう!

(借方要素) (貸方要素)
資産の増加 資産の減少
負債の減少 負債の増加
純資産の減少 純資産の増加
費用の発生 収益の発生

当座預金は資産ですから、借方が資産の増加で、貸方も現金が資産なので、資産の減少ですね。

ここで、当店の当座預金残高が100であることを確認してください。

仕訳例②

次に、ここから150の支払いを行った場合を見ていきましょう。100しか残高がありませんので、50足りませんね。

「当店は、買掛金150の支払いとして仕入先に小切手を振出した。ただし、当店は銀行との間で、借越限度額を1,000とする当座借越契約を結んでいる。」

この場合、100は当店の当座預金残高から支払われますが、足りない50は銀行から借り入れて支払われることとなります。

この際、借り入れた50については、「当座借越」という負債の勘定を使います。

借方 貸方
買掛金 150 当座預金 100
  当座借越 50

まず、借方は支払った分の買掛金が減少します。

次に、貸方の当座預金100は、当店の当座預金残高がゼロになったことを意味し、当座借越50は銀行からの借り入れが発生したことを示しています。

取引の八要素で確認しておきましょう。

(借方要素) (貸方要素)
資産の増加 資産の減少
負債の減少 負債の増加
純資産の減少 純資産の増加
費用の発生 収益の発生

借方は、買掛金150が減っていますので、負債の減少です。

次に借方の当座預金100は、当店の当座預金残高がなくなったことを意味しますから、資産の減少です。

同じく貸方の当座借越50は、銀行からの借り入れが発生したことを示していますので、負債の増加となります。

仕訳例③

最後に、当座預金残高がマイナス(借り入れが発生している)の時に、銀行にお金を預け入れたらどうなるか見ていきましょう。

「当店は、得意先から売掛金100の支払いを受け、代金は直ちに当座預金に預け入れた

まず、支払いを受けた売掛金が減少します。

そして、受け取った代金は、直ちに当座預金に預け入れたわけですから、当座預金を増加させることになります。

しかし、ここでは、当座預金残高が50のマイナスとなっていることを忘れないでください。

借方 貸方
当座借越 50 売掛金 100
当座預金 50  

銀行に100のお金が振り込まれたのですが、そのうち50は銀行からの借り入れを返済するのに使われ、残りの50が当店の当座預金の残高となるわけです。

取引の八要素で見ておきましょう。

(借方要素) (貸方要素)
資産の増加 資産の減少
負債の減少 負債の増加
純資産の減少 純資産の増加
費用の発生 収益の発生

まず、貸方は売掛金の支払いを受けたので、資産の減少です。

続いて、借方の当座借越50は銀行からの借り入れを返済したわけですから、負債の減少ですね。

当座預金50は残りを当座預金に預け入れたことを意味していますから、資産の増加です。

まとめ

今回は、当座借越について説明させていただきました。

それほど重要ではありませんが、検定試験にたまに出題される勘定科目となります。

当座取引が理解できていることが前提となりますので、そちらもしっかり復習するようにしてくださいね!

簿記の学習を始めるにあたって、まず知っておくべきこと

当座預金について知ろう(簿記3級)

簿記3級の学習において重要なものに、「預金」があります。

しかし、慣れないうちは仕訳でミスしてしまうことも多いのではないでしょうか。

今回は、簿記3級で登場する預金、特に「当座預金」について説明していきます。

簿記3級で学習する「預金」とは?

簿記3級で学習する預金は「普通預金(ふつうよきん)」と「当座預金(とうざよきん)」の二つです。

主に出てくるのは「当座預金」の方ですが、あまり耳にしたことがない方も多いと思います。

「当座預金」とは、商売をされる人が使う預金で、無利息であることが特徴です。

皆さんが日常的に利用される預金と同じで、「預入れ」や「引き出し」をすることができますが、それ以外に「小切手」を使うことによって、便利に取引を行うことができます。

「小切手」を使って取引を行う時は、商品を購入する側が小切手に金額を記入して相手に「振出し」ます。

「小切手」を受け取った側は、それを取引銀行に持っていくことで現金に換えることができるという仕組みですね。

仕訳例①(代金を支払う側)

では、実際の仕訳を見ていきましょう。

まずは、小切手を「振出し」た側の仕訳です。

「A商店は、商品100の仕入れに際し、B商店に全額を小切手を振出して支払った

A商店が小切手を振出した側で、B商店が受け取った側です。

ここで、この問題の主語が「A商店」となっていますからA商店の視点で仕訳を行うこととなります。

まず、商品を仕入れていますから、借方が仕入ですね。

そして、小切手を振出して支払った、ということは、その代金分だけA商店の当座預金残高から引き出されることとなりますので、A商店の当座預金が減額されます。

借方 貸方
仕入 100 当座預金 100

取引の八要素で確認していきましょう。

簿記の取引について理解しよう!

(借方要素) (貸方要素)
資産の増加 資産の減少
負債の減少 負債の増加
純資産の減少 純資産の増加
費用の発生 収益の発生

借方は、商品売買の仕訳では毎回使う仕入ですから費用の発生ですね。

貸方は、と言いますと「当座預金」勘定は現金や売掛金と同じ「資産」です。

ですから貸方にあることで、資産の減少となります。

仕訳例②(代金を受け取る側)

続いて、小切手を受け取った側の仕訳を見ていきましょう。

「B商店は、商品100を販売し、A商店から小切手の振出しを受けた

今度は、「B商店」が主語となっていますので、小切手を受け取った側の視点から仕訳をしていくことになります。

商品を販売しているので、貸方は売上となります。

ここで注意していただきたいのは、他人(B商店から見たA商店)が振出した小切手は、簿記上では「現金」として取り扱われるということです。

これを「通貨代用証券(つうかだいしょうしょうけん)」と呼びます。

考え方としては、受け取った小切手は銀行に持っていきさえすれば、いつでも現金に換えることができるので、わざわざ別の勘定科目を使う必要はありません、ということです。

もう一度確認しておきますが、小切手を振出した側(仕入側)は当座預金を減額して、小切手を受け取った側(売上側)は現金を増加させることになりますので、間違えないようにしましょう。

ですから仕訳は、

借方 貸方
現金 100 売上 100

皆さんが最初に学習する、現金売上の仕訳と同じですね。

商品売買について知ろう(簿記3級)

取引の八要素で確認しておきます。

(借方要素) (貸方要素)
資産の増加 資産の減少
負債の減少 負債の増加
純資産の減少 純資産の増加
費用の発生 収益の発生

貸方は売上ですから、収益の発生、借方がは現金なので、資産の増加となります。

仕訳例③(代金を受け取る側の例外)

最後に、もう一つだけ仕訳を見ておきます。

それは、小切手を受け取った側の仕訳なのですが、簿記では次のような問題が出ることがあります。

「B商店は、商品100を販売し、A商店から小切手の振出しを受け、それを直ちに当座預金に預け入れた

一見、先ほどと同じ取引ですが、最後の部分だけが違います。

「直ちに当座預金に預け入れた」とありますので、この場合、当座預金を増加させる仕訳をします。

借方 貸方
当座預金 100 売上 100

借方が現金ではなく、当座預金となっています。取引の八要素で確認しておくと、

(借方要素) (貸方要素)
資産の増加 資産の減少
負債の減少 負債の増加
純資産の減少 純資産の増加
費用の発生 収益の発生

貸方が売上ですので、収益の発生、借方は当座預金ですから、資産の増加になります。

ここで、借方がなぜ現金ではなく当座預金となるか、不思議に思われるかもしれません。

本来であれば、一度、現金を増額する仕訳を行い、そして、次に現金を当座預金に預け入れる仕訳をするべきなのです。

しかし、「直ちに」とありますので、一つにまとめられる仕訳を二つに分けるのは手間ですから、この場合現金ではなく、直接当座預金を増加させる仕訳をします。

このように、簿記では一見同じような問題でも、一言加わることによって答えが異なる場合があります。

そこでミスをしないためには、しっかり理解することと、問題をじっくり読むことです。焦らず、一つ一つ、問題と向き合っていきましょう。

まとめ

今回は、簿記3級で学習する「預金」について説明させていただきました。

決して難しくはありませんが、商品売買の仕訳の基本となりますので、しっかり復習するようにしてくださいね!

簿記の学習を始めるにあたって、まず知っておくべきこと

商品売買における、返品と値引きについて知ろう(簿記3級)

返品と値引きは、簿記3級の商品売買の仕訳において、初めて「逆仕訳」が登場します。

最初は戸惑うかもしれませんが、決してむづかしくはないので、しっかり押さえていきましょう。

商品売買、売掛金、買掛金について学習がまだの方はこちらから読んでみてくださいね。

商品売買について知ろう(簿記3級)

売掛金、買掛金について知ろう(簿記3級)

商品売買における、返品と値引きって?

返品、値引きについて学習する内容はそれほど多くありませんので、安心してください。

ですが、これまでの内容が理解できていることが前提となります。それでは、「返品」と「値引き」について見ていきましょう。

皆さんも、これまで買った商品に問題があったなどで、お店に返品しに行ったことがあると思います。

また、買った商品にキズがあり、値引いてもらった経験もあるのではないでしょうか。

これから学習する「返品」と「値引き」も、同じように考えていただいたら結構です。

「返品」とは、購入した商品が注文したものと違ったなどの理由から、その商品そのものを返すことで代金を返してもらうことを言い、「値引き」とは、購入した商品にキズがあったり、注文した数と違うなどの理由から、当初の値段より安く売ってもらうことを言います。

逆仕訳とは?

これから仕訳について見ていきますが、少し特徴的な仕訳をします。

これまで学習した、仕入れ、売上げの際の仕訳を取り消す、という意味で、これまでと逆の仕訳をすることになります。

これを「逆仕訳」と言いますが、今後もこの言葉を目にする機会がありますので、覚えておくと良いでしょう。

また、これまでと同じように「商品売買」ですので、「売る側」「買う側」両方の立場から考えるのを忘れないようにしましょう。

販売する側の仕訳

仕訳例①

では、売る側の仕訳を確認していきます。まずは、復習から。

「商品100を掛けで売り上げた」

借方 貸方
売掛金 100 売上 100

次に、返品の仕訳を見てきます。

「売上げた商品100のうち、50について品違いのため返品を受けた」

ここで、先ほどの仕訳の「逆仕訳」をすることになります。金額は50ですね。

借方 貸方
売上 50 売掛金 50

では、取引の八要素で確認しておきましょう。

(借方要素) (貸方要素)
資産の増加 資産の減少
負債の減少 負債の増加
純資産の減少 純資産の増加
費用の発生 収益の発生

簿記の取引について理解しよう!

貸方は、売掛金が減る(受け取ることができる代金が減る)ので、資産の減少ですね。

次に借方ですが、「あれ?ないぞ??」と思われた方がいらっしゃるでしょうか。

そうです、売上げは収益ですが、収益が借方側にくることはほとんどありません。

ですので、取引の八要素には含まれていないんです。

ですが、今回の「返品」「値引き」のように、まれに収益が借方側にくることがあります。

これを「収益の消滅」と言います。(あまり出てこないので重要ではありません)

仕訳例②

続いて、値引きの仕訳も見ていきましょう。

「売上げた商品100について、汚損があり20値引きをすることとした」

これについても「逆仕訳」をしていきます。金額は20です。

借方 貸方
売上 20 売掛金 20

さきほどの「返品」と同じ仕訳ですね。

ですが、繰り返しになりますが、「返品」は商品を返すこと、「値引き」は返すまでもないけど、正規の金額は払えないよ、ということで違いますので、そこは覚えておいてください。

仕入側の仕訳

仕訳例③

では、買う側の仕訳を見ていきます。まずは復習から。

「商品100を掛けで仕入れた」

借方 貸方
仕入 100 買掛金 100

次に返品の仕訳を見ていきましょう。

「仕入れた商品100のうち、50について品違いのため返品した」

ここで「逆仕訳」でしたね。金額は50です。

借方 貸方
買掛金 50 仕入 50

同様に、取引の八要素で確認しておきます

(借方要素) (貸方要素)
資産の増加 資産の減少
負債の減少 負債の増加
純資産の減少 純資産の増加
費用の発生 収益の発生

借方は、買掛金が減る(支払う金額が減る)ため負債の減少です。

しかし、先ほどと同じように貸方がありませんね?

ここでは、貸方は計上した仕入を取り消しているので、「費用の消滅」となります。(これも特に覚える必要はありません)

仕訳例④

最後に、値引きの仕訳を見ていきましょう。

「仕入れた商品100について、汚損のため20値引きを受けた」

ここでもまた「逆仕訳」をします。金額は20ですね。

借方 貸方
買掛金 20 仕入 20

やはり返品と同じ仕訳になります。

まとめ

今回は、「返品」と「値引き」の仕訳について説明しました。。

逆をするだけですので、覚えてしまえば簡単ですね!

前受金、前払金について知ろう(簿記3級)

前受金、前払金という勘定科目は、商品売買を行う際に、先に代金を支払う、もしくは受け取る際に使います。

売掛金や買掛金といったこれまで勉強してきた科目と、少し扱いが違うので、わかりにくいと思われる方もいらっしゃるかもしれません。

この記事では、前受金と前払金について理解し、正しく仕訳ができるようご説明いたします!

売掛金、買掛金についてまだ勉強されていない方はこちらから読んでみてくださいね。

売掛金、買掛金について知ろう(簿記3級)

前払、前受取り引きとは?

これまで学習してきた商品売買のパターンとは、現金で商品を売ったり買ったりする場合、もしくは第二回目はお金の支払いを後でまとめてする場合、つまり「掛け」での取引でした。

今回は、商品の代金を先にする場合について見ていきたいと思います。

お金の支払いが後だとか、先だとか言われてもあまりピンとこないかもしれませんが、イメージとしては飲食店で食券を買ってから食事する場合は前払い、食事してからお会計する場合は後払い、といった感じです。

さて、これまでに学習した、お金の支払いが後になる取引では、「売掛金」と「買掛金」という勘定科目が登場しました。

「売掛金」が資産で、「買掛金」が負債です。

今回は、お金の支払いを先にする、ということで、「前受金(まえうけきん)」と「前払金(まえばらいきん)」という勘定科目を使います。

商品を販売する側がお金を受け取るので「前受金」仕入れる側はお金を支払うので「前払金」を使います。

そして、少し覚えにくいかもしれないのですが、「前受金」は先にお金を受け取ったので、商品をお客さんに渡す義務があるので「負債」、「前払金」はお金を支払ったので、商品を受け取る権利があるので「資産」となります。

ちなみに、簿記の問題で、「内金(うちきん)」だとか「手付金(てつけきん)」といった言葉が出てきます。

例えば、「手付金として〇〇円を支払った」というように出題されますが、これらの言葉は両方とも商品の代金を先に支払ったことを意味します。

この言葉はここでしか使わないので、ぜひ覚えてしまってください。

仕訳パターン①

先に代金を「受け取る」場合の仕訳例

まずは、先に代金を受け取る場合(販売する側)の仕訳例を見ていきましょう。

「商品100の注文を受け、内金50を現金で受け取った」

ここで、「商品100」に騙されないようにしましょう。あくまで、受け取った金額は内金の50ですから、仕訳は、

借方 貸方
現金 50 前受金 50

となります。この仕訳を取引の八要素で確認しておくと、

(借方要素) (貸方要素)
資産の増加 資産の減少
負債の減少 負債の増加
純資産の減少 純資産の増加
費用の発生 収益の発生

借方は現金50を受け取っていますから、資産の増加、貸方は前受金50が増えていますから、負債の増加、ですね。

簿記の取引について理解しよう!

先に代金を「支払う」場合の仕訳例

続いて、先に代金を支払う場合(仕入れる側)の仕訳も見ていきましょう。

「商品100を注文し、内金50を現金で支払った」

先ほどと同様に、「商品100」に騙されないでくださいね。支払ったのは内金の50なので、

借方 貸方
前受金 50 現金 50

となります。同じく取引の八要素で確認しておくと、

(借方要素) (貸方要素)
資産の増加 資産の減少
負債の減少 負債の増加
純資産の減少 純資産の増加
費用の発生 収益の発生

貸方は現金50を支払っているので、資産の減少、借方は前払金50が増えていますから、資産の増加、となります。

その後の取引は?

さて、商品の代金を先に支払う(受け取る)場合の仕訳について見てきましたが、あれ?残りの代金はいつ払うの?と思われるかもしれません。

確かに、商品100を注文しているのに、50しか払っていません。

それでは、残りの金額はどうするのか?について説明していきたいと思います。

これまで確認した仕訳は、

「商品100の注文を受け、内金50を現金で受け取った」

借方 貸方
現金 50 前受金 50

これと、

「商品100を注文し、内金50を現金で支払った」

借方 貸方
前受金 50 現金 50

この二つです。

見ていただいたらわかる通り、いずれの仕訳も商品100を注文しているのに、まだ代金は50しか支払っていません。

残りの代金についてですが、これは商品の「引き渡し時」(もしくはそれ以降)に行うことになります。

「商品の引き渡し」というのは、「お客さんに商品が届いた時」と考えてもらえたら良いのですが、この時に初めて「仕入」や「売上」を計上することになります。

前回確認した仕訳では代金の一部を支払っただけで、まだ商品がお客さんの手元に届いたわけではありません。

ですから、まだ「仕入」、「売上」といった勘定科目は使っていません。

この、「商品の引き渡し」があってから「仕入」「売上」を計上する、という考え方は非常に大事ですので、ぜひ頭の片隅に置いておいてくださいね。

普段コンビニなどで買い物される際は、クレジットカードなどで支払わない限り、「商品の引き渡し」と「代金の支払い」は同時であることがほとんどですが、土地などの不動産や車のように「大きな買い物」を想像してみてください。

「商品の引き渡し」と「代金の支払い」が同時でないことが多いですし、「代金の支払い」が一度とは限りませんよね?

そんな場合、「いつ」仕入、売上を計上するかですが、これは基本的にお客さんにその商品が届いたとき、となります。(土地であれば、そこに自由に建物を建てたりすることができるようになった時、ですね)

難しく考える必要はないのですが、簿記を勉強していく上で、「商品の引き渡し」と「代金の支払い」が同時でないことがある、ということを知っておくと学習がスムーズになると思いますので、ぜひ理解をしておいてください。

仕訳パターン②

商品を「引き渡す」際の仕訳例

では、実際の仕訳を見ていきましょう。

「注文を受けていた商品100を得意先に引き渡し、先日受け取った内金50と相殺した残額を現金で受け取った」

「引き渡し」とありますので、ここで売上を貸方に計上することとなります。

そして、「内金50と相殺」ですので前受金が減少し、残額50は現金で受け取っていますので、

借方 貸方
前受金 50 売上 100
現金 50

借方が二行になっていますが、借方の合計金額と貸方の金額が同じになっているのを確認してください。

このように、簿記の仕訳は一行ずつ、二行ずつとは限りませんが、必ず借方と貸方の合計金額は同じになります。

では、取引の八要素で確認しておきましょう。

(借方要素) (貸方要素)
資産の増加 資産の減少
負債の減少 負債の増加
純資産の減少 純資産の増加
費用の発生 収益の発生

まず、「商品100を得意先に引き渡しですから、貸方は売上100で収益の発生です。

続いて、前受金50が減っていますので、借方が負債の減少と、現金50を受け取ったので、資産の増加、となります。

同じ借方要素でも、一つの仕訳に「資産の増加」「負債の減少」のように別々のものがあることがあります。

その場合は、簿記の五要素を確認する必要があります。

この仕訳では「前受金」が負債で、「現金」が資産でしたね。

商品を「受け取る」際の仕訳例

続いて、仕入れる側の仕訳も見ていきましょう。

「注文していた商品100を受け取り、先日支払った内金50と相殺した残額は後日支払うこととした

「商品を受け取った」ので、借方に仕入を計上し、「内金50と相殺」ですので、前払金が減少し、残額50は「後日支払うこととした」とありますので、ここでは「買掛金」が増加することとなります。

借方 貸方
仕入 100 前払金 50
買掛金 50

先ほどの仕訳と違い、代金はまだ現金で支払っていないことに注意してください。取引の八要素で確認しておくと、

(借方要素) (貸方要素)
資産の増加 資産の減少
負債の減少 負債の増加
純資産の減少 純資産の増加
費用の発生 収益の発生

借方は「商品100を受け取り」ですので、仕入100で費用の発生です。

そして、貸方は前払金50が減りますので、資産の減少と、買掛金50が増えていますから、負債の増加です。

先ほどの仕訳と同じ「内金」であっても、受け取る側であれば「前受金」、支払う側であれば「前払金」であることに注意してください。

まとめ

今回は、代金の一部を先に支払う取引で用いる「前払金」「前受金」という二つの勘定科目について説明しました。

これまで学習した内容に比べて、少しだけ仕訳が複雑になったと感じられたかもしれません。

「商品売買」は簿記3級の学習において非常に大切な内容となりますので、今回理解が思うようにできなかった方は、ぜひ「簿記の五要素」「取引の八要素」から繰り返し確認し、自分のものにしていってくださいね!

簿記の学習を始めるにあたって、まず知っておくべきこと