簿記3級を独学で合格するには

就職活動やキャリアアップのために、簿記の学習を始めようと思っているけども、なかなか学校に通う時間がない、という方もいらっしゃると思います。

そういった方は、独学で簿記3級の合格にチャレンジされるのではないでしょうか。

この記事では、独学で簿記3級に合格するための方法をお伝えします。

読んでいただければ、これから学習を始めるにあたってのヒントが得られるはずです。

もし、もうすでに学習を始められている方は、こちらの記事も読んでみてくださいね。

簿記の学習を始めるにあたって、まず知っておくべきこと

まずはテキストを買おう!

まず、独学ということで、大前提としてテキストと問題集は最低限必要となります。

こちらのブログでも網羅的に簿記3級の学習内容については解説させていただいていますが、簿記の学習では仕訳や計算問題を繰り返し練習することが重要です。

これまで、簿記に接したことのない方は特に、一度問題を解いただけではなかなか理解しずらい部分があると思います。

ですから、市販の問題集を購入し、繰り返し練習することで少しずつ全体像が見えてくるはずです。

最初は忍耐力がいるかもしれませんが、焦らず、自分のペースで頑張ってください。

おススメのテキストはこちら!

 

簿記のテキストの進め方

市販のテキストでは、簿記3級の試験に出題される可能性のあるすべての内容が記載されています。

ですから、テキストに記載されている内容については、一通り理解する必要があります。

ですが、中には細かい内容であったり、理解しずらいものもあるでしょう。

そういった時は、一度その内容についてはおいておいて次に進まれることをお勧めします。

一度読んだだけで完璧に理解できる人はいませんし、検定試験でも100点をとる必要はありません。

ですから、初めは「わからなくて当たり前」くらいの気持ちで気軽に進めていってください。

二回目、三回目にテキストを読むころには、だいぶ簿記に対する理解が深まっているはずです。

しかし、やみくもにテキストや問題集を進めていてもモチベーションが続かなかったり、力がついている実感が得られないこともあるかもしれません。

そういった時は、こちらのブログでまとめている内容を優先的にテキストと照らし合わせながら学習していただけたらと思います。

試験で重要度の高い部分を、なるべく、初学者の方にもわかりやすく説明したつもりですので、勉強が行き詰った時などにも活用していただけたら幸いです。

まずは仕訳についてしっかり理解しよう!

簿記の学習はまず仕訳からです。

会社が仕訳をするタイミングって?

初めは一つでも多くの勘定科目と仕訳を覚えていくことに力を注いでください。

そうすることで、必ず簿記への理解が深まるはずです。

最初はすぐ答えを見ることを恐れないでください。

テキストを読んだだけでは問題が解けるようになりません。

自分の力で解けないと勉強した気にならないかもしれませんが、解答を見て確認した内容は必ず頭の中に残っていますので、見て、忘れる、を繰り返していけば確実に実力で解けるようになるはずです。

決算の問題について

簿記3級の学習のおそらく後半で学ばれる決算の問題について、少し勉強法や対策について触れておきたいと思います。

決算について知ろう(簿記3級)

決算の問題では、「精算表」「財務諸表」などといったボリュームのある表に記入していかなくてはなりません。

ですから、商品売買や決算整理の仕訳などを一通り理解できてから取り組むのが効率的です。

少しでも自信がなければ、過去の内容に立ち戻って復習してから再挑戦してみてください。

また、これらの問題は計算量が多くなり、最初は一問解くのに一時間以上かかってしまうかもしれません。

そういった場合のおすすめの勉強法として、一つの問題に取り組む時間を決める方法があります。

40分、もしくは50分と自分の力のみで解く時間を決めておいて、もしそれを超えてしまった場合はすぐ解答を確認し、電卓をたたきながら数字を合わせていくという方法です。

しかし、これはそれなりに力がついてきた人に有効な方法ですので、もし初めて取り組む場合は、初めから答えを見るか、長くとも5分から10分問題を眺めてすぐ、解答を見ながら理解していく方法も有効だと思われます。

過去問について

試験前には過去問を必ず解くようにしてください。

最初は、第一問から第五問まで、解答時間を気にせず一問ずつ別々に解くとストレスが少ないと思います。

ですが、最終的に必ず2時間内で全ての問題を解けるようになるまで練習してください。

過去問題集は10回分以上の過去問が載っているものが多いと思いますが、古い問題ですと、出題の傾向が現在と異なっている場合があります。

ですので、なるべく新しい問題で慣れておくことをお勧めします。

本番形式で練習するのにお勧めの本はこちら!

まとめ

今回は、独学で簿記3級に合格するための方法についてご紹介させていただきました。

私は簿記の学習に取り組まれる皆さんを応援しています。

このブログを目にされた全員が無事検定試験に合格され、就職やキャリアアップに役立てていかれることを心から願っています。

ただ、どうしても独学で勉強するのが苦しかったら、資格学校に通うこともありじゃないかと思います。

一緒に学ぶ仲間もできるでしょうし、自宅では集中できないという人も、学校の自習室を利用することで効率的に勉強を進めることができるはずです。

また、簿記の資格を取得後、税理士、公認会計士などのより難易度の高い資格に挑戦するのであれば、独学というのはあまり現実的ではありません。

ですので、その後のことを考えるのであれば、最初から資格学校に慣れておくというのも良いと思います。

簿記が学べる大手のスクールは、TAC、大原などありますが、特に社会人の方にお勧めの学校はLECです。

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通信が充実しているので、自宅で、しかも必要なところだけを学ぶことができます。

途中まで独学で学んでいて、最後の仕上げだけ受講したい、などの目的の方には最適の学校だと思います。

収益、費用の見越し、繰延べについて知ろう(簿記3級、決算)

「収益、費用の見越し、繰延べ」については、簿記3級の決算においても、特に難しく、学習に苦労される方も多いと思います。

整理して理解する必要がありますので、長くなりますが、この記事を読んでいただければ、検定試験でも得点を稼げるようになるはずです。

決算について知ろう(簿記3級)

収益と費用について

これまでに学習した収益、費用

これまで見てきた「収益」「費用」にはどういったものがあったでしょうか。

商品売買編の「売上」「仕入」や、お金の貸し借りによって発生する「受取利息」「支払利息」、そして固定資産の販売によって発生する「固定資産売却益」「固定資産売却損」などについて学習されたと思います。

では、それらの収益や費用が発生するタイミングはどうだったでしょう。

例えば、仕入でしたら商品が手元に届いたときに、売上でしたら商品を発送するときに発生すると言えるでしょう。

また、 固定資産売却益と固定資産売却損 については、固定資産を売却したタイミングで発生します。

仕入や売上などの収益、費用のように、どのタイミングで発生したか明確であるものならば、それらが発生した日に仕訳をすればいいわけですが、一部の収益、費用についてはそうはいきません。

なぜなら、利息や家賃のように、時間の流れとともに発生する収益、費用があるからです。

時間の流れとともに発生する収益、費用

例えば、家賃について考えてみましょう。

通常、部屋を借りるとすると、一ケ月いくら、というように契約をすると思います。

ですから、当然一ケ月住んだなら一か月分の、二か月住んだなら二月分の家賃が発生します。

同じようにお金の貸し借りについても、半年借りたなら半年分の、一年借りたなら一年分の利息が発生します。

つまり、これらの「収益」「費用」は、何かを受け取った日、もしくは何かを渡した日に発生するのではなく、時間の流れとともに、その期間に応じて発生するということです。

収益、費用の決算整理仕訳について

これから見ていく決算整理仕訳は、利息や家賃のように時間の流れとともに発生する収益と費用についてです。

家賃を前払いした場合

例えば、事務所として部屋を新しく借りた場合について考えてみましょう。

契約では毎年一年分を先払いすることになっています。

もし、今年の9月1日に契約を開始したとしたら、12月31日の決算日時点ではその部屋は四か月しか利用していないことになります。

しかし、契約上すでに一年分を支払っていますね?

この場合、支払家賃の金額として損益計算書に計上される金額は四か月分でないといけません。

つまり、一年分を支払っているため「支払家賃」として一年分を計上していますが、実際にその部屋を利用した期間は四か月ですので、八か月分余分に計上してしまっていることになります。

ですから、余分に計上した費用については決算整理で調整しなくてはいけません。

利息が未払いの場合

次に、利息を後払いで支払う契約でお金を借りた場合を考えてみましょう。

10月1日に契約し、一年後に返済とともに利息を支払うことになっているとすると、12月31日の決算日時点で、すでに三か月お金を借りているのに利息の支払いはまだ行われていません。

しかし、お金の支払いはまだでも、すでに三か月の期間お金を借りているので、「支払利息」の金額は三か月分を損益計算書に計上しなくてはなりません。

ですから決算整理にて、計上されていない三か月分の費用を新たに計上する必要があります。

収益、費用の見越し、繰延べ

このように、「時間の流れとともに発生する収益、費用」については、支払うタイミングが「先払い」か「後払い」かによって、決算整理で調整する必要があります。

「先払い」の場合、過ぎた期間に対して多く払って(受け取って)いるため余分に計上した期間について減額しなくてはいけません。

これを「収益、費用の繰延べ」と言います。

一方で、「後払い」の場合、計上すべき期間の分もまだ払って(受け取って)いません。

よって、足りない(計上できていない)分を増額する必要があります。これを「収益、費用の見越し」と言います。

問題を解くうえでまず最初に確認すべきことは、契約してからどれだけの期間が経過したかです。

利息でしたらどれだけの期間お金を借りているか、家賃でしたらどれだけの期間部屋を借りているか、です。

それに対し、その期間分よりも多く払って(受け取って)いるならば「繰延べ」、少なく払って(受け取って)いるならば「見越し」ということになります。

四つの仕訳パターン

今回の仕訳は四つのパターンに分けられます。

  1. 収益の繰延べ
  2. 費用の繰延べ
  3. 収益の見越し
  4. 費用の見越し

それぞれのパターンごとに使用する勘定科目が異なります。

収益の繰延べ

まず、一つ目の収益の繰延べでは「前受(収益)」という勘定科目を使います。

繰延べのパターンは先に受け取っているわけですから「前受」が頭につくということですね。

費用の繰延べ

次に、二つ目の費用の繰延べでは「前払(費用)」という勘定科目を使います。

一つ目と同様に繰延べのパターンは先に払っているので「前払」がつくということになります。

収益の見越し

三つ目の収益の見越しでは「未収(収益)」という勘定科目を使います。

見越しのパターンではまだ受け取っていないので「未収」が頭につきます。

費用の見越し

四つ目の費用の見越しでは「未払(費用)」という勘定科目を使います。

三つ目と同様に見越しのパターンはまだ払っていないので「未払」がつくということですね。

仕訳パターンまとめ

ちなみに簿記の五要素では、「前払(費用)」「未収(収益)」が資産、「前受(収益)」「未払(費用)」 が負債です。

ですから仕訳の仕方をまとめると、

  借方 貸方
1.収益の繰延べ   「前受(収益)」
2.費用の繰延べ 「前払(費用)」  
3.収益の見越し 「未収(収益)」  
4.費用の見越し   「未払(費用)」

このようになります。

いきなり暗記するのは難しいと思いますので、実際の仕訳を見ながら理解していってください。

仕訳例①(収益の繰延べ)

まずは、収益の繰延べの仕訳です。

「当社は9月1日、取引先に現金10,000を貸し付けた。一年分の利息120は契約時に受け取っているため決算日12月31日に際し、必要な決算整理をする。」

まず、契約日から経過した期間は9月1日から12月31日の四か月間です。

しかし、一年分を受け取っているため、八か月分が余分ということになります。よって、

120 ÷ 12(一年分) × 8 = 80

この金額だけ繰延べる決算整理仕訳が必要になります。

借方 貸方
受取利息 80  前受利息 80

取引の八要素で確認しましょう。

簿記の取引について理解しよう!

(借方要素) (貸方要素)
資産の増加 資産の減少
負債の減少 負債の増加
純資産の減少 純資産の増加
費用の発生 収益の発生

前述のとおり、前受利息は負債ですので貸方、と覚えておいてください。

借方は余分に計上した収益が消滅します。

仕訳例②(費用の繰延べ)

次は、費用の繰延べの仕訳です。

「当社は10月1日に事務所用に部屋を借り入れた。なお、一年分の家賃1,200は契約時に前払いしているため決算日12月31日に際し、必要な決算整理をする。」

まず、契約日から経過した期間は10月1日から12月31日の三か月間です。

しかし、一年分を支払っているので、九か月分が余分ということになります。よって、

1,200 ÷ 12 × 9 = 900

この金額だけ繰延べる決算整理仕訳が必要になります。

借方 貸方
前払家賃 900 支払家賃 900

前述のとおり、前払家賃は資産ですので借方、と覚えておいてください。

貸方は余分に計上した費用が消滅します。

仕訳例③(収益の見越し)

次は、収益の見越しの仕訳です。

「当社は9月1日、取引先に現金10,000を貸し付けた。一年分の利息120は契約終了時に受け取る予定である。決算日12月31日に際し、必要な決算整理をする。」

契約日から経過した期間は9月1日から12月31日の四か月間です。

しかし、 まだ利息は受け取っていません。

したがって四か月分の受取利息を計上する必要があります。

120 ÷ 12 × 4 = 40

借方 貸方
未払利息 40 受取利息 40

前述のとおり、未収利息は資産ですので借方、と覚えてください。

貸方は未計上の受取利息が発生します。

仕訳例③(費用の見越し)

最後は、費用の見越しの仕訳です。

「当社は10月1日に事務所用に部屋を借り入れた。なお、一年分の家賃1,200は契約終了時に支払う予定である。決算日12月31日に際し、必要な決算整理をする。」

契約日から経過した期間は10月1日から12月31日の三か月間です。 しかし、まだ家賃は払っていません。したがって三か月分の支払家賃を計上する必要があります。

1,200 ÷ 12 × 3 = 300

借方 貸方
支払家賃 300  未払家賃 300

前述のとおり、未払家賃は負債ですので貸方、と覚えてください。貸方は未計上の支払家賃が発生します。 

まとめ

今回は、収益、費用の見越し、繰延べについて説明させていただきました。

計算がややこしいと思われたかもしれませんが、四つのパターンに分けて理解すれば、決して難しくありません。

しっかり復習して、理解するようにしてくださいね!

簿記3級を独学で合格するには

減価償却費について知ろう(簿記3級、決算)

減価償却費は簿記の学習において、非常に重要です。

ですが、初めて簿記を学ばれる方にとってはイメージしにくいものでもあります。

今回は、減価償却費の計算と仕訳について説明します。

読んでいただければ、減価償却費の計算と仕訳が理解できるようになるはずです!

決算について知ろう(簿記3級)

減価償却とは

減価償却は、「固定資産」について行う手続きです。

ですから、もし固定資産についての理解が不安な方は、そちらを復習してみてくださいね。

固定資産について知ろう(簿記3級)

「減価償却(げんかしょうきゃく)」とは、建物や備品などの使用とともに価値が減少する固定資産について、決算日に減少した価値分を費用として計上する手続きになります。

減価償却の計算に必要なキーワード

減価償却を考えるうえで必要なキーワードがいくつかありますので、先にそちらを確認しておきましょう。

  • 取得原価
  • 帳簿価額
  • 残存価額
  • 耐用年数
  • 既償却額(減価償却累計額)

取得原価

まず、「取得原価」は以前も確認しましたが、その固定資産をいくらで購入したかを意味する金額です。

帳簿価格

次に、帳簿価額とは帳簿上の価値、つまり取得原価からすでに減ってしまった価値を差し引くことによって求めることができます。

残存価格

残存価額とはその固定資産を使い終わったときに残る価値を言います。

残存価額がない場合(ゼロとして計算する)もありますが、問題で出される場合は10%で計算することが多いです。

耐用年数

耐用年数は、その固定資産を何年使用することができるかを意味します。

備品でしたら5年から10年、建物でしたら20年、30年以上の場合もあります。

既償却額(減価償却累計額)

最後に、既償却額(減価償却累計額)とは、すでに減ってしまった固定資産の価値を意味します。これはその固定資産をどの程度の期間使用したかによって決まります。

計算例

例えば、取得原価が5,000の備品について考えてみましょう。

残存価額10%とすると、その備品を使い終わったときに残る価値は、

5,000 × 10% = 500

ですので、使用期間で減価償却する金額の合計は、

5,000 - 500 = 4,500

となります。

この備品の耐用年数が5年とすると、一年分の減価償却費は、

4,500 ÷ 5 = 900

となります。

仮に、すでに2年間使用しているとしたら、 既償却額(減価償却累計額) は、

900 × 2 = 1,800

ですので、帳簿価額は、

5,000 - 1,800 = 3,200

となります。

直接法と間接法

減価償却については、記帳方法が「直接法(ちょくせつほう)」「間接法(かんせつほう)」の二つあります。

決算整理仕訳をした時、どちらも借方には「減価償却費」という費用勘定がくるのですが、「直接法」の場合、貸方にはその固定資産を記入することでその固定資産の残高を直接減額します。

一方で「間接法」の場合は貸方に「減価償却累計額(げんかしょうきゃくるいけいがく)」という資産のマイナス勘定を計上することで、間接的にその固定資産の価値を減らします。

ですので、「減価償却累計額」勘定は間接法の場合しか使用しません。

ちなみに、3級の試験では間接法で出題されることがほとんどです。

仕訳例①(直接法)

では、「直接法」と「間接法」それぞれの仕訳について見ていきましょう。

まずは直接法です。

「決算に際し、5,000で2年前に取得した備品について減価償却費を計上する。なお、残存価額は取得原価の10%、耐用年数は5年で計算する。当店では減価償却について直接法で記帳している。」

5,000 × 90% ÷ 5年 = 900

この90%とは、取得原価から残存価額10%を除いた金額を求めるために使用しています。

借方 貸方
減価償却費 900 備品 100

直接法ですので、貸方は備品となります。

取引の八要素では、資産の減少ですね。

簿記の取引について理解しよう!

仕訳例②(間接法)

次は間接法の仕訳です。

「決算に際し、5,000で2年前に取得した備品について減価償却費を計上する。なお、残存価額は取得原価の10%、耐用年数は5年で計算する。当店では減価償却について間接法で記帳している。」

5,000 × 90% ÷ 5年 = 900

借方 貸方
減価償却費 900 減価償却累計額 100

間接法の場合、貸方が減価償却累計額という資産のマイナス勘定になっていることを確認してください。

仕訳例③(期中取得の固定資産)

では、最後に期中に取得した固定資産の減価償却方法について見ていきましょう。

期中に取得した場合、その期における使用期間は一年未満となります。

したがって、月割計算をする必要があります。

月割計算とは、使用した月数分の減価償却費を求めるための計算方法で、12か月で割り、使用した月数をかけることによって計算します。

例えば、一年分の減価償却費が900で、使用した月数が4か月なら、その期の減価償却費は、

900 ÷ 12か月 × 4か月 = 300

となります。では、実際の仕訳を見ていきましょう。

「決算に際し、5,000で当期の9月1日に取得した備品について減価償却費を計上する。なお、残存価額は取得原価の10%、耐用年数は5年で計算する。決算日は12月31日であり、当店では減価償却について間接法で記帳している。」

当期における使用期間は、9月1日~ 12月31日の4か月ですので、減価償却費は、

5,000 × 90% ÷ 5年 = 900

900 ÷ 12か月 × 4か月 = 300

となります。間接法によっていることに注意しましょう。

借方 貸方
減価償却費 300 減価償却累計額 300

まとめ

今回は、減価償却費について説明させていただきました。

慣れるまでは戸惑うかもしれませんが、計算のイメージがつかめれば、必ず得点できるようになるはずです。

頑張って、繰り返し復習するようにしてくださいね!

簿記3級を独学で合格するには

貸倒引当金について知ろう(簿記3級、決算)

貸倒引当金はあまり聞きなれない言葉なので、学習されていて戸惑うこともあるかもしれません。

ですが、正しく計算することができれば、決して正解することは難しくありません。

今回は、「貸倒れ」と、「貸倒引当金の計算」について解説します。

読んでいただければ、必ず検定試験でも得点できるようになるはずです!

決算について知ろう(簿記3級)

貸倒れとは

「貸倒れ」とは、貸していたお金や支払ってもらうはずの代金などを回収できなくなることを意味します。

以前、商品売買で学習されたと思いますが、会社やお店どうしの取引では「掛け」や「手形」を使って取引を行います。

これは取引の相手方が支払ってくれる、という信用をもとに成り立っています。

売掛金、買掛金について知ろう(簿記3級)

しかし、資金繰りなどの影響や、会社が倒産してしまうなどして代金を支払ってもらうことができなくなることがあります。

この場合、「貸倒損失(かしだおれそんしつ)」という費用勘定を計上することになります。

売掛金や受取手形など、商品の代金を支払ってもらうためのの債権を「売上債権(うりあげさいけん)」と呼びますので覚えておきましょう。

仕訳例①(貸倒れ)

それでは、貸倒れの仕訳を見ていきましょう。

「先日売上げた商品の売掛金100につき、回収不能のため貸倒れ処理した」

借方 貸方
貸倒損失 100 売掛金 100

借方に貸倒損失を計上し、貸方に回収不能となった売掛金を計上します。

取引の八要素では、

簿記の取引について理解しよう!

(借方要素) (貸方要素)
資産の増加 資産の減少
負債の減少 負債の増加
純資産の減少 純資産の増加
費用の発生 収益の発生

借方が費用の発生、貸方は資産の減少です。

貸倒引当金とは

それでは今回の本題である、決算整理仕訳の「貸倒引当金の計上」について説明していきます。

「貸倒引当金」とは、決算日における売上債権の残高に対し、来年一年間でどのくらい貸倒れるか見積もった金額を言います。

この見積りに際し、「貸倒実績率(かしだおれじっせきりつ)」と言って、毎年どのくらいの売上債権が回収できないか計算した割合が与えられるので、それを使います。

例えば、売上債権の残高に対し毎年5%が回収不能になるとしましょう。もし、決算日において売上債権の残高が500であったとしたら、

500 × 5% = 25

ですので、25の貸倒引当金を計上することになります。

この仕訳では、借方に「貸倒引当金繰入(かしだおれひきあてきんくりいれ)」という費用勘定をもってきます。

「貸倒引当金繰入」とは、決算日にしか使わない勘定科目になります。

貸方の「貸倒引当金」とは資産のマイナス勘定であり、売掛金や受取手形などの売上債権から控除する形で貸借対照表では表示されます。

なお、前期の決算で見積もった貸倒引当金の残高がある場合は、当期に見積もった貸倒引当金と前期からの貸倒引当金の差額を貸倒引当金として繰り入れる仕訳をします。

これを「差額補充法(さがくほじゅうほう)」と言います。

仕訳例②(貸倒引当金の繰り入れ)

では決算整理仕訳を見ていきましょう。

「決算に際し、売掛金の残高500に対し貸倒実績率5%で貸倒引当金を差額補充法により見積もった。なお、前期に見積もった貸倒引当金の残高が10ある。」

当期に見積もるべき貸倒引当金の金額は、

500 × 5% = 25

となります。

ただし、前期からの貸倒引当金が10残っていますので、

25 - 10 = 15

当期の決算で繰り入れるべき貸倒引当金は15になります。

借方 貸方
貸倒引当金繰入 15 貸倒引当金 15

仕訳例③(貸倒引当金残高がある場合の貸倒れ)

最後に、貸倒引当金の残高がある場合の貸倒れの仕訳について見ていきたいと思います。

さきほど、貸倒れの仕訳として借方に「貸倒損失」を計上する仕訳を確認しました。

しかし、前期の決算に貸倒引当金を見積もっていた場合、その計上した貸倒引当金を取り崩さなくてはいけません。

ここで、注意しなくてはいけないのは、前期の決算で見積もった貸倒引当金は、前期の決算日に存在している売上債権に対して見積もったものなので、

当期中に販売した商品に対する売上債権が貸倒れたとしても、貸倒引当金を取り崩すことはしないということです。

実際の仕訳で確認しましょう。

「売掛金250が貸倒れた。このうち150は前期に販売した商品に対するものであり、残りは当期中に販売した商品に対するものである。なお、貸倒引当金の残高が200ある。」

前期に販売した商品に対する売掛金の貸倒れについては、貸倒引当金を取り崩します。

当期中に販売した商品に対する売掛金の貸倒れについては、最初の仕訳(仕訳例①)で見た、貸倒引当金の残高がないケースと同様に貸倒損失を計上します。

借方 貸方
貸倒引当金 150 売掛金 250
貸倒損失 100  

まとめ

今回は、貸倒損失と貸倒引当金の繰り入れについて説明しました。

これも他の決算整理仕訳と同様、期中の処理と分けて理解する必要があります。

慣れれば決して難しくはないはずなので、何度も復習して自分のものにしてくださいね!

簿記3級を独学で合格するには

売上原価の計算について知ろう(簿記3級、決算)

売上原価の計算は、決算整理の中でも特にややこしく、戸惑われる方も多いかもしれません。

今回は、売上原価の計算について解説します!

読んでいただければ、精算表など決算整理の問題を解くうえでの売上原価に対する理解が深まるはずです。

決算について知ろう(簿記3級)

売上原価とは

「売上原価(うりあげげんか)」とは、売上に対する原価を意味します

ここで重要なのは、一年間で仕入れた商品のうち、販売したものについての金額を売上原価として計算する、ということです。

つまり、一個10円の商品を一年間で二十個仕入れたとすると合計金額は200円となりますが、もしそのうち十五個販売したとすると、売上原価は150円になります。

そして、残った50円の商品を「繰越商品(くりこししょうひん)」という勘定科目に振替えます。

「繰越商品」の繰越とは、次期(次の一年間)に繰越すということを意味します。

今年中に販売できなかったものは来年売る、ということですね。

このように、「仕入」「売上」「繰越商品」という三つの勘定科目を使って商品売買について記帳するやり方を「三分法(さんぶんぽう)」と呼びます。

売上原価の計算について(決算整理仕訳)

さて、一年間に仕入れた商品のうち、販売したものは売上原価に、売れ残った在庫は繰越商品に振替える、ということを説明しましたが、そのための「決算整理仕訳」について見ていきたいと思います。

まず、一年分の仕入れた商品について、全額「仕入」として計上しているわけですから、売れ残った分について「繰越商品」に振替える必要があります。

次に考えないといけないのは、去年の決算において売れ残っていた商品についてです。

これについては、去年の決算で仕入から繰越商品に振替えているはずなので、今度は繰越商品から仕入に戻す必要があります。

なぜなら、去年の売れ残りは今年中に販売してしまっているはずだからです。

これを仕訳としてまとめると、

借方 貸方
仕入 ○○ 繰越商品 ○○
繰越商品 △△ 仕入 △△

このようになります。

上段の○○に入るのが「期首商品(去年の売れ残り)」で、下段の△△に入るのが「期末商品(今年の売れ残り)」です。

ちなみに覚え方としては、上段の左から仕入→繰越商品、そして下段の左から繰越商品→仕入、と覚えるために繰越商品を繰商と短く約して「しいれ、くりしょう、くりしょう、しいれ」と言いながら覚えるやりかたがあります。

仕訳例

それでは、実際の仕訳を見ていきましょう。

「決算整理に際し、売上原価の計算をする。当期中の仕入の合計金額は1,200であり、前期に繰越した商品の金額は200当期末における在庫の金額は150であった。なお、当店では三分法によって記帳している。」

当期中の仕入の合計金額について与えられていますが、これについては決算整理仕訳では使いません。

使用するのは、期首商品200期末商品150です。

借方 貸方
仕入 200 繰越商品 200
繰越商品 150 仕入 150

まとめ

今回は、決算整理仕訳の「売上原価の計算」について説明しました。

この単元では覚える仕訳は一つだけなので、楽だったかもしれません。

ただ、どの金額をどこに記入するか、混乱しやすいので、しっかり繰り返し復習するようにしてくださいね!

簿記3級を独学で合格するには

消耗品の整理とは(簿記3級、決算)

消耗品の整理は、精算表など決算整理の問題を解いていて毎回、目にされると思います。

しかし、正しく理解していないと数字が間違っていたり、借方貸方を間違えてしまったりということもあるでしょう。

今回は、点数を取りこぼしてしまいがちな「消耗品の整理」について解説します!

決算について知ろう(簿記3級)

消耗品とは

「消耗品」とは、鉛筆やコピー用紙などの事務用品やトイレットペーパーなど、言葉通りオフィスなどで日々消耗する品のことをいいます。

ではなぜ、それが決算整理仕訳として必要なのでしょうか。

それは、決算日において、期中に購入した消耗品のうち、未使用のものどれだけあるか調べ、

使用済みのものは「消耗品費(しょうもうひんひ)」という費用勘定として、

未使用のものは「消耗品(しょうもうひん)」という資産勘定として整理しなくてはいけないからです。

消耗品の整理をする際に、注意が必要なのは、「期中」において、購入時に「消耗品」勘定で処理しているか、「消耗品費」勘定で処理しているかによって、決算整理仕訳が変わってくるということです。

期中の処理

ではまず、期中の仕訳を見てみましょう。

仕訳例①(資産計上)

まずは、「消耗品」勘定を使う場合です。

「コピー用紙を200、消耗品として現金で購入した。なお、当店では消耗品について、購入時に資産計上している。」

借方 貸方
消耗品 200 現金 200

仕訳例②(費用処理)

続いて、「消耗品費」勘定を使う場合です。

「コピー用紙を200、消耗品として現金で購入した。なお、当店では消耗品について、購入時に費用処理している。」

借方 貸方
消耗品費 200 現金 200

消耗品の整理(決算整理仕訳)について

それでは、決算整理について見ていきましょう。

まずは、なぜ期中の処理によって決算整理仕訳が変わるのかについて説明します。

もし、購入時に資産計上している場合、決算整理では使用済みのものを資産から費用に振替える必要があり、購入時に費用処理しているならば、未使用のものを費用から資産に振替える必要があるからです。

なぜなら、消耗品のルールは前述のとおり、 使用済みのものは「消耗品費」未使用のものは「消耗品」として整理する、ということだからです。

つまり、期中(購入時)に資産として処理しているなら「資産→費用」、期中(購入時)に費用として処理しているなら「費用→資産」の振替えをしなくてはならないということです。

仕訳例③(期中資産計上)

それでは、決算整理仕訳を見ていきましょう。まずは、購入時に「消耗品」勘定を使っている場合です。

「決算に際し、当期中に購入した消耗品200のうち、50が未使用であったため必要な整理をした。なお、当店では消耗品について、購入時に資産計上している。」

まず、結論としては消耗品を200買ってきて50余ったわけですから、150が「消耗品費」、50は「消耗品」としなくてはなりません。

しかし、全て資産計上(消耗品として計上)しているわけですから、使用済み(100)のものを資産から費用に振替える必要があります。

借方 貸方
消耗品費 100 消耗品 100

取引の八要素で考えると、借方が費用の発生、貸方が資産の減少になります。

簿記の取引について理解しよう!

(借方要素) (貸方要素)
資産の増加 資産の減少
負債の減少 負債の増加
純資産の減少 純資産の増加
費用の発生 収益の発生

仕訳例④(期中費用処理)

最後は、購入時に「消耗品費」勘定を使っている場合です。

「決算に際し、当期中に購入した消耗品200のうち、50が未使用であったため必要な整理をした。なお、当店では消耗品について、購入時に費用処理している。」

この場合も、仕訳例③と前提は同じですので、 150が「消耗品費」、50は「消耗品」となるように調整します。

ここでは、全て費用処理(消耗品費として計上)しているわけですから、未使用(50)のものを費用から資産に振替える必要があります。

借方 貸方
消耗品 50 消耗品費 50

取引の八要素では、借方は資産の増加、貸方は八要素にはありませんが費用の消滅です。

まとめ

今回は、「消耗品の整理」について説明させていただきました。

決して難しくはないので、期中の処理が資産計上か費用処理なのか、二つのパターンできっちり押さえられるように復習してくださいね!

簿記3級を独学で合格するには

現金過不足の整理とは(簿記3級、決算)

簿記3級決算整理仕訳のうち、「現金過不足の整理」はおそらく最初に学ばれると思います。

期中の処理によって、するべき決算整理仕訳が異なってくるので、戸惑われる方は少なくないかもしれません。

今回は、「現金過不足の整理」について説明します。

決算について知ろう(簿記3級)

現金過不足の整理とは

「現金過不足」とは、その名の通り、現金が多い、少ない、ことを意味します。

日々現金のやり取りをしていると、帳簿と実際の金額が合わないことがあります。

私もよく、財布の中のお金が思ってたより少なかったなんてことがあるのですが、帳簿上、「現金過不足」があった場合、現金の残高を訂正するための仕訳をする必要があります。

その際に「現金過不足」勘定を使うのですが、注意しないといけないのは、「期中(きちゅう)」と「期末(きまつ)」で処理が異なる、ということです。

「期中」とは、一年間の全ての日を指します。つまり、「決算日以外」ということになります。

それに対して、「期末」とは一年間の終わり、つまり「決算日」ということです。

ですから、決算整理仕訳として「現金過不足」の整理を行うのか、期中に行うのかで仕訳が違う、ということになります。

期中の仕訳

実際の仕訳で見ていきましょう。まずは、「期中」の処理です。

仕訳例①(現金過不足の発生)

「4月3日、金庫を整理していると帳簿より現金50が不足していることが判明した。当店における決算日は12月31日である。」

4月3日にこの処理を行っているので、決算日以外、つまり「期中」ということになります。

期中に現金の過不足が判明した場合「現金過不足」勘定を使って仕訳をします。

その場合、不足している場合は借方超過している場合は貸方に「現金過不足」勘定を記入します。ここでは、不足している、とありますので、借方ですね。

借方 貸方
現金過不足 50 現金 50

さて、貸方ですが、現金50とあります。

これは、現金は資産ですので、取引の八要素では資産の減少を意味します。

簿記の取引について理解しよう!

(借方要素) (貸方要素)
資産の増加 資産の減少
負債の減少 負債の増加
純資産の減少 純資産の増加
費用の発生 収益の発生

つまり、実際の残高が帳簿の残高より50少なかったわけですから、帳簿の現金残高を50減らして調整する必要があります。

ですから、貸方に現金50を記入するということですね。

仕訳例②(原因の判明)

次に、現金過不足の原因が判明した場合の仕訳を見ていきましょう。

「5月2日、先日判明した現金過不足50の原因が、交際費の支払いの記帳漏れであることが判明した」

現金が50足りなかった原因が交際費を記帳していなかったことだと判明したので、新たに交際費50を計上する必要があります。

借方 貸方
交際費 50 現金過不足 50

交際費は費用ですので、取引の八要素では借方は費用の発生となります。

貸方は、4月3日の仕訳で借方に計上した現金過不足50を相殺するために、逆側の貸方に現金過不足50を計上しています。

ちなみに、「現金過不足」勘定は、資産でも負債でもなく、一時的に判明した現金残高のズレを記録しておくためのものですので、もし原因が分かったなら、相殺してなかったことにしてしまいます。

以上が、「期中」の現金過不足の処理となります。

期末の処理

続いて、「期末」の処理について見ていきます。

先ほどのように、現金残高のズレの原因が分かったなら良いのですが、決算日になっても原因が判明しない場合もあります。

そのような場合、「現金過不足」勘定のままにしておくことができませんので、不足していた場合は「雑損(ざっそん)」という費用勘定超過していた場合は「雑益(ざつえき)」という収益勘定に振り替える決算整理仕訳をしなくてはなりません。

仕訳例③(雑損に振り替え)

では、実際の仕訳を見ていきましょう。

「決算に際し、期中に発生した現金不足額100について、雑損に振り替えた

借方 貸方
雑損 100 現金過不足 100

期中に発生した現金不足額100とありますので、実際の金額が帳簿よりも100足りなかったことを意味しています。

つまり、「現金不足額」勘定は借方にあったはずです。

ですから、それを逆の貸方に持ってくることで相殺し、代わりに借方に雑損100を計上する、ということです。

仕訳例④(雑益に振り替え)

最後に、期中に「現金過不足」勘定を計上していなかった場合についての仕訳を見ていきましょう。

少しだけ複雑になりますが、頑張ってください。

「決算に際し、現金超過額120があることが判明し、原因を調査したところ、利息の受取額100の記帳漏れが判明したが、残額については不明だったため適切な勘定に振替えた。」

まず、現金超過額120、とありますが、期中に「現金過不足」を計上していませんので、この場合は直接「現金」を120増加させる処理をします。

続いて、 利息の受取額100の記帳漏れ、とありますので、新たに受取利息120を計上する必要がありますが、残りの20については原因不明なので、雑益として処理することになります。

借方 貸方
現金 120 受取利息 100
  雑益 20

取引の八要素では、借方が資産の増加、貸方は受取利息100、雑益20共に収益の発生です。

まとめ

今回は、決算整理仕訳の「現金過不足の整理」について説明させていただきました。

期中にどのような仕訳をしているか、パターンに分けてしっかり押さえるようにしてくださいね!

簿記3級を独学で合格するには

決算について知ろう(簿記3級)

簿記3級の検定試験対策で、やはり一番苦労されるのが「決算」についての学習だと思います。

検定試験でも配点が大きいので、取りこぼしのないようにしたいところです。

ですが、聞きなれない言葉や、馴染みのない処理が多いので、なかなかスムーズに理解が進まないかもしれません。

この記事では、簿記3級における決算の全体像について解説します。

読んでいただければ、決算の学習がやりやすくなるはずです!

決算とは?

これまで学習されてきたのは、商品売買など「日常の取引」についてだったと思います。

日常の取引とは、日々、会社やお店を営業していく上で必要な記帳のことです。

「決算」の仕訳はそれらとは違い、日常的にはあまり目にしないものになります。

「決算」とは、通常一年である「会計期間(かいけいきかん)」の締めくくりとして、経営成績や財政状態を知るために、帳簿を締め切ることを言います。

その一年間で、どのくらいのもうけが得られたのか、現在どのくらいの財産を持っているのか、などを知るために様々な処理をする必要があります。

これまで見てきた「日常の取引」の仕訳と違い、決算に際して「決算整理(けっさんせいり)」を行う必要があるのですが、そのために行う仕訳を「決算整理仕訳(けっさんせいりしわけ)」と呼びます。

簿記3級の決算整理仕訳について

3級で出題される「決算整理仕訳」は以下の6つです。

現金過不足の整理

現金過不足の整理とは(簿記3級、決算)

「現金過不足」とは、その名の通り、現金が多い、少ない、ことを意味します。

決算日において、帳簿上「現金過不足」があった場合、現金の残高を訂正するための仕訳をする必要があります。

消耗品の整理

消耗品の整理とは(簿記3級、決算)

「消耗品」とは、鉛筆やコピー用紙などの事務用品やトイレットペーパーなど、言葉通りオフィスなどで日々消耗する品のことをいいます。

決算日において、期中に購入した消耗品のうち、未使用のものどれだけあるか調べ、使用済みのものは「消耗品費(しょうもうひんひ)」という費用勘定として、未使用のものは「消耗品(しょうもうひん)」という資産勘定として整理しなくてはいけません。

売上原価の計算

売上原価の計算について知ろう(簿記3級、決算)

「売上原価(うりあげげんか)」とは、売上に対する原価を意味します

つまり、販売したものについての金額を売上原価として計算する必要があります。

ですから、決算整理仕訳として、一年間に仕入れた商品のうち、販売したものは売上原価に、売れ残った在庫は繰越商品に振替えなくてはいけません

貸倒引当金の計上

貸倒引当金について知ろう(簿記3級、決算)

「貸倒れ」とは、貸していたお金や支払ってもらうはずの代金などを回収できなくなることを意味します。

そして、「貸倒引当金」とは、決算日における売上債権の残高に対し、来年一年間でどのくらい貸倒れるか見積もった金額を言います。

ですから決算整理仕訳では、見積もった貸倒引当金を計上する必要があります。

減価償却費の計上

減価償却費について知ろう(簿記3級、決算)

「減価償却(げんかしょうきゃく)」とは、建物や備品などの使用とともに価値が減少する固定資産について、決算日に減少した価値分を費用として計上する手続きになります。

決算整理仕訳として、一年間に減少した固定資産の価値を減価償却費として計上する必要があります。

収益、費用の見越し、繰延べ

収益、費用の見越し、繰延べについて知ろう(簿記3級、決算)

収益、費用の中には、「支払家賃」や「支払利息」など、○○か月でいくら、と時間の経過によって発生するものがあります。

このように、「時間の流れとともに発生する収益、費用」については、支払うタイミングが「先払い」か「後払い」かによって、決算整理で調整する必要があります。

これを「収益、費用の見越し」と言います。

まとめ

今回は、簿記3級で学習する「決算」の内容について説明しました。

あまり、見慣れないものばかりかもしれません。

これらの仕訳は、商品の仕入れや売上げのように、日常的に行うには適さないものばかりですので、一年間の締めくくりとして、一年分の処理を行うことになります。

「決算整理仕訳」に関しては、3級の試験でほぼすべてが出題されますので、検定試験までには必ずすべての仕訳について理解する必要があります。

ただ、覚えることは6つしかありませんので、時間をかけて学んでいただければ、必ず点数を稼げるはずです!

簿記3級を独学で合格するには

資本金、引出金について知ろう(簿記3級)

これまで、資産や負債などについては理解できたけども、資本金ってよくわからない、そもそも純資産ってなに?と思われる方は多いと思います。

資本金はこれまで学習されてきた勘定科目とは少し違うのですが、正しく理解すれば決して難しくはありません。

今回は、「資本金」とそのマイナス勘定である「引出金」について説明します!

純資産とは

今回は、純資産について学習します。

簿記3級で学習する純資産とは「資本金(しほんきん)」勘定のみになりますが、それ以外に、「資本のマイナス勘定」として、「引出金(ひきだしきん)」という勘定科目がありますので、そちらもあわせて見ていきます。

簿記の五要素における純資産

さて、純資産について説明する前に、簿記の五要素について復習しておきましょう。

勘定科目を知るうえで大切な簿記の五要素とは?

簿記の五要素は、「資産」「負債」「純資産」「収益」「費用」の五つです。

それぞれの勘定科目の例としては、以下のようなものがあります。

資産: 現金 商品 土地 備品

負債: 借入金

純資産:資本金

収益: 売上 受取利息

費用: 仕入 支払家賃

このうち、資産、負債、純資産の三つを一つのグループ、収益、費用をもう一つのグループと考えます。

なぜかというと、一年が終わり決算日には、資産、負債、純資産の三つについては「貸借対照表」と呼ばれる報告書に、そして収益、費用については「損益計算書」と呼ばれる報告書にまとめられるからです。

この、「貸借対照表」や「損益計算書」等の報告書を合わせて「財務諸表」と呼びます。

負債と純資産の違い

さて、「貸借対照表」に計上される資産、負債、純資産のうち、資産(現金、売掛金、受取手形など)と負債(借入金、買掛金、支払手形など)については学習されたと思います。

純資産とは、イメージしにくいかもしれませんが、ざっくり言うと「負債と似てるんだけど返さなくていいお金」となります。

お店や会社が営業をしていくには、資金が必要になります。

そのお金を調達する方法として、様々あるのですが、大きく分けて「いずれ返さなくてはいけない」お金か、「返さなくていい」お金かのいずれかになります。

「いずれ返さなくてはいけない」お金は負債、「返さなくていい」お金は純資産ということです。

簿記3級では「個人商店」を前提とした記帳を学習しますので、この場合の「純資産」とは、店主がもともと持っていたお金のことを言います。

つまり、ある人が商売を始めようとしたとき、もともと財産として持っていたお金と、銀行などで借りてきたお金を合わせてお店をしたとします。

すると、もともと持っていたお金は「資本金」銀行などで借りてきたお金は「借入金」となります。

そして、簿記の問題で出される場合、店主がもともと持っていたお金をお店の資金にあてることを「元入れ(もといれ)」と言いますので、覚えておきましょう。

仕訳例①(元入れ)

では、実際の仕訳で見ていきましょう。

「店主は現金100を元入れし、商売を開始した」

借方 貸方
現金 100 資本金 100

お店の資金として使える現金が増えたとともに、資本金が増えたことを意味しています。

取引の八要素では、

簿記の取引について理解しよう!

(借方要素) (貸方要素)
資産の増加 資産の減少
負債の減少 負債の増加
純資産の減少 純資産の増加
費用の発生 収益の発生

借方が資産の増加、貸方は純資産の増加です。

仕訳例②(現金の引出し)

続いて、「資本のマイナス勘定」である、「引出金」について見ていきます。

個人商店を経営している場合、お店のお金で個人的な買い物をしたり、お店の商品を自分用に持って帰って使う、といったことがあります。

この場合、お店の資本を引出した、として「引出金」勘定を使うことになります。

いくつか具体例を見ていきましょう。

「店主はお店から現金100を引出し、昼食を食べた」

この場合、お店の現金が減るとともに、引出金を計上します。

借方 貸方
引出金 100 現金 100

取引の八要素では、借方が資本のマイナス、貸方が資産の減少です。

ここで、別解として引出金勘定を使わず、直接、資本金を減額する仕訳をすることもあります。

借方 貸方
資本金 100 現金 100

この場合、借方は純資産の減少、貸方は資産の減少となります。

仕訳例③(商品の家事消費)

「店主は100で仕入れたお店のダイコンを持って帰り、家族で食べた」

本問のように、お店の商品を個人的に消費することを「家事消費(かじしょうひ)」といいます。

この場合も引出金を計上するのですが、仕入れた商品を家族で食べてしまったので、「仕入」を減少させることになります。

借方 貸方
引出金 100 仕入 100

取引の八要素では、借方が資本のマイナス、貸方がは費用の消滅です。

この仕訳についても、別解があります。

借方 貸方
資本金 100 仕入 100

こちらについても、必ず問題文に指示がありますので注意しましょう。

仕訳例④(引出金の振替え)

さて、この「引出金」勘定についてですが、決算日においてもし残高が残っていた場合、その残高分だけ資本金を減少させなくてはいけません。

「決算日につき、引出金残高200について、資本金と相殺した」

借方 貸方
資本金 200 引出金 200

少しややこしいですが、一応取引の八要素で確認しておくと、借方が純資産のマイナス、貸方は「資本のマイナス」の減少ということになります。

もし、引出金勘定を使わず、別解の直接、資本金を減少させる仕訳をしていたら、この決算日の仕訳はしなくていいということですね。

まとめ

今回は、資本金と引出金の仕訳について説明しました。

問題文の指示をしっかり読まないとミスをしやすいので、何度も繰り返し復習するようにしてくださいね!

簿記の学習を始めるにあたって、まず知っておくべきこと

有価証券について知ろう(簿記3級)

有価証券は固定資産と同様に、商品売買とは違った仕訳になります。

固定資産について知ろう(簿記3級)

正確に理解するのが難しく、ミスをしてしまう方も多いのではないでしょうか。

今回は、有価証券の仕訳について説明します!

有価証券とは

「有価証券」とは、株式、公債、社債などを指します。

株式とは、会社が新しく株主になってもらうために発行する証券です。株主とは会社の所有者(オーナー)のことですね。

公債とは、国債、地方債など、国や地方公共団体がお金を集めるための証券で、社債は会社がお金が必要な時に発行する証券となります。

いずれにしても、「有価証券」そのものに価値があり、また持っているだけでも、株式なら配当公債や社債なら利息といったお金を受け取ることができます。

現金を持っていてもそれが増えることはありませんが、有価証券として運用することで、リスクはありますがもうけを得ることができる、ということです。

有価証券の取得

今回は、「有価証券」を取得した場合と、売却した場合の仕訳を見ていきます。

有価証券の取得原価の計算

まずは、取得時の仕訳ですが、「取得原価」を計算する際、株式であれば一株当たり○○円というように指示が与えられますが、公社債の場合、一口100円当たり○○円というように指示が与えられます。

さらに、固定資産の取得と同じように「不随費用(取得に際してかかる費用)」も取得原価に含めます。

ですから、株式の場合は、一株当たりの金額×株式数+不随費用、で取得原価を求め、公社債の場合は、額面金額×一口当たりの金額÷100円+不随費用、というように求めます。

公社債の割引発行

ちなみに、公社債の場合は、額面金額が100円としても、実際発行する価額は98円というように、額面金額よりも安く発行することが多いです。

これを「割引発行(わりびきはっこう)」といいます。

なぜそうするかというと、公債、社債などは通常長い期間をかけて運用するのですが、額面よりも安くで発行していたとしても、数年間待って満期になると額面金額を受け取ることができます。

つまり、運用する側としては、発行価額と額面金額の差額分は得したことになります。

ですから、発行する側としては、「安くで発行して上げるから、満期までお金を返すのは待っててね」という意味も込めて「割引発行」をすることが多いのです。

ですから、一口100円当たり95円で額面金額50,000円の社債を発行したとしたら、50,000×95÷100で、発行価額は47,500円となります。

仕訳例①(株式の取得)

では、実際の仕訳で見ていきましょう。まずは、株式の取得です。

「一株当たり200の株式を20株、現金で取得し、証券会社に手数料300を現金で支払った」

手数料300を加えるのを忘れないようにしましょう。

取得原価は、200×20+300で、4,300となります

借方 貸方
有価証券 4,300 現金4,300

「有価証券」勘定は資産になりますので、取引の八要素では、

簿記の取引について理解しよう!

(借方要素) (貸方要素)
資産の増加 資産の減少
負債の減少 負債の増加
純資産の減少 純資産の増加
費用の発生 収益の発生

借方が資産の増加、貸方は資産の減少となります。

仕訳例②(社債の取得)

次に、社債の取得について見ていきましょう。

「 一口100円当たり95円で額面金額50,000円の社債 を現金で取得し、 証券会社に手数料300を現金で支払った 」

ここでも、手数料300を加えるのを忘れないでください。

取得原価は、 50,000×95÷100+300で、47,800となります。

借方 貸方
有価証券 47,800 現金 47,800

 

有価証券の売却

続いて、「有価証券」の売却について見ていきます。

前回の固定資産の仕訳でも、「帳簿価額」と「売却価額」を比較し、売却価額のほうが高ければ「固定資産売却益」、安ければ「固定資産売却損」を使いました。

今回は「有価証券売却益」という収益勘定と、「有価証券売却損」という費用勘定を使います。

仕訳例③(売却益が発生)

まずは、「帳簿価額」よりも「売却価額」が高い場合の仕訳を見ていきましょう。

「帳簿価額4,300の株式を5,000で売却し、代金は現金で受け取った」

取得したよりも、700円高く売れていますので、有価証券売却益が700発生します。

借方 貸方
現金 5,000 有価証券 4,300
  有価証券売却益 700

取引の八要素では、借方が資産の増加、貸方は、有価証券4,300が資産の減少、有価証券売却益700が収益の発生です。

仕訳例④(売却損が発生)

続いて、 「帳簿価額」よりも「売却価額」が安い場合の仕訳を見ていきましょう。

「帳簿価額47,800の社債を47,000で売却し、代金は現金で受け取った」

取得したよりも、800円安く売っていますので、有価証券売却損が800発生します。

借方 貸方
現金 47,000 有価証券 47,800
有価証券売却損 800  

取引の八要素では、借方は、現金47,800が資産の増加、有価証券売却損800が費用の発生、貸方は資産の減少です。

固定資産の場合と同様に「有価証券売却益」は収益なので貸方、「有価証券売却損」は費用なので借方と覚えておきましょう

ですので、仕訳問題で、借方、貸方、どちらに記入すればいいかわからなくなったら、まず、高く売れたか安く売れたかを確認し、高く売れたなら収益なので貸方安く売れたなら費用なので借方と覚えるようにしましょう

まとめ

今回は、有価証券の取得と売却の仕訳について説明しました。

これもミスの多い仕訳となりますので、固定資産と合わせて何度も復習するようにしてくださいね!

簿記の学習を始めるにあたって、まず知っておくべきこと